[911]ジュリアーニ元市長、911を忘れていませんか? Mr. Giulliani, Do You Remember 911?

今年の911 アメリカ同時多発テロから15周年でした。
ワールドトレードセンターでは犠牲者全員の名前を呼ぶ追悼式が今年もしめやかに行われました。
そんな中で痛感したのは、当事国アメリカでも「忘却・風化が始まったアニバーサリー」だったこと。
ワールドトレードセンターは、グラウンドゼロと呼ばれていましたが、そんな風に呼ぶ人ももうほとんどいない・・・というのもほぼ完全に復興。ツインタワーの土台の上に作られた追悼碑とメモリアル・ミュージアムが残るのみです。

その追悼碑を9月11日の夕方に 訪れると、たくさんの観光客が盛んに写真を撮っている・・・セルフィースティック(自撮り棒)とか使って、普通の観光地と変わらない賑わい・・・・ニューヨークで911を体験した私としては ちょっと複雑でした。特にニューヨーク以外の場所では風化が始まっているんだろうな、と感じたのです。

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オープンしたばかりの地下交通ハブの印象的な屋根とOne Wolrd Trade Center

でも風化していくからこそ、きちんと語り継がなければいけない、というのも今私たちが生きているのは「ポスト911の世界」であり、日本も含め世界中のみんなが911の影響を受けているからです。

アメリカ人の5人に一人は911の後に生まれた世代、911を体験していない世代です。
それでもアメリカは当事国ですから、 911の事を親や先生から教えられる。だから実感はないけど歴史としてある程度はインプットはされている。でも日本の場合はもっと忘れられているのではないかと思います。

今ここで911に何が起きたのかを振り返ってみると・・・
2001年9月11日火曜日、よく晴れた爽やかな朝でしたが、
イスラム過激派のアルケイダのメンバーにハイジャックされた二機の旅客機が、
ニューヨーク・ワールドトレードセンターの二つの超高層ビルに次々に突っ込み、ビルは完全に崩落。
そしてもう一機はワシントンのアメリカ国防総省に突っ込み、最後の一機は墜落、2996人が亡くなるという衝撃的なテロ事件でした。

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御影石に刻まれた犠牲sなの名前に、遺族が手向けた花と星条旗

これにより「テロ」の恐怖はアメリカ人の骨の髄まで浸透。
空港はもちろんNYのオフィスビルのセキュリティも非常に厳しくなり、
地下鉄の中に残された荷物は爆弾と疑われ、
「テロとの戦い」は日常になりました。これがポスト911と呼ばれる今の世界です。

一方報復のためにアフガニスタンに派兵して以来15年間、アメリカはずっと派兵を続けている、つまり戦争状態にあり、亡くなった兵士の数は7000人以上になります。

ところが、これがあまりに日常になりすぎて、マヒしてしまっているというか、
一体なぜこうなったのか忘れてしまいつつあるような気がします。始まりは911だったということを、どう子供たちに教えていくのかも、今年の911の大きな課題の一つでした。

そんな中驚いたのは、911直後の混乱の中でリーダーシップを発揮して、世界の市長とまで言われたジュリアーニ元市長の発言です。ジュリアーニさんは今共和党トランプ候補を支持し、対抗馬のヒラリーやオバマ大統領を攻撃する発言を繰り返していますがちょうど1ヶ月ほど前、「オバマ以前の8年間には大規模なテロは起こっていない」と発言して大騒ぎになりました。なぜなら911はオバマ以前の8年間、8年続いたブッシュ政権の最初の年に起こったからです。まさか自分を世界的に有名にしたテロ事件を忘れたわけではないでしょう? それに対しジュリアーニ氏は「省略した言い方をしただけ」と意味不明な釈明をしていますが、省略したにしろ、間違えたにしろ、本当に忘れたにしろ、911がリアルでなくなりつつある、風化しつつあるからこういうことが起こるんだと思います。

ポスト911ワールド自体が曖昧になっている今、日本への影響も見えづらくなってきています。つまり・・・15年間戦争しているアメリカの最大の同盟国である日本が影響を受けないわけはないんです。今問題になっている軍事的な様々な事・・・これにも911が大きく関係しているのは間違いありません。

最後に、今激しい大統領選が行われていますが、
トランプ候補が「イスラム難民は受け入れない」「メキシコ国境に壁を作れ」と、イスラム恐怖症、外国人嫌悪に油を注ぐような発言を繰り返しています。
非難されながらも大統領候補になっているのは、賛同する人が少なからずいるからですが、これも911を考えると納得できます。

一方一番犠牲を出したニューヨークは、これ以上悲しむ人を増やしたくないと、イスラム教徒への差別に反対したり、反戦運動を率先してやってきました。そしてあの時、いつ攻撃されるかわからない恐怖と、多くの市民を失った深い悲しみの中で、皆が助けあって危機を乗り越えた事。人と人とが力を合わせれば何かができるという実感、そういう事も忘れずに伝えていきたい・・・いろいろな意味で、私たちニューヨーカーは911を語り継ぐ使命みたいなものを感じています。

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