<updated 11/8アップデート>
先日「ヒラリー・クリントンはなぜ嫌われる?」というコラムを書きましたが、ご存知のようにここに来て大統領選にまた新たな動きが出ているので補足します。
メディアは「オクトーバー・サプライズ」と呼びましたが
FBI長官が議会のに送った手紙によって、一度収束したはずのメール事件(ヒラリーが国務長官時代に私的なメールサーバーで機密情報をやり取りしていた疑い)に、再び捜査のメスが入るかも? ということで大騒ぎになリました。なぜ今こんな時期に? というのと、あまりにも曖昧で中途半端な情報に、アメリカ人もこれが一体どんな意味を持つのか全然理解できず、選挙を1週間後に控えて混乱が生じました。この一件よかったらご一緒に整理してみましょう。
そもそもこの手紙を送った当のFBIは、ヒラリーのメール事件を調査していたわけではありません。
日本にいる方はほとんど知らないかもしれませんが、アンソニー・ウィーナーという元国会議員の「セクスティング事件」です。ウィーナー元議員はこれまで、複数の女性に卑猥なテキストメッセージや自分の裸の写真などを送ってスキャンダルとなり、ニューヨーク市長選から脱落、国会議員の地位も失いました。さらに今年9月、15歳の少女に同様のテキストを送っていた疑いが浮上。未成年者が相手なので犯罪の可能性も出てきました。問題はこのウィーナーの別居中のワイフが、ヒラリー・クリントンの片腕フーマ・アベディンだということです。彼女はヒラリーがファーストレディ時代のホワイトハウスのインターンからスタートし、ヒラリーが上院議員時代からこれまで一貫して側近として誰よりも近い位置にいました。娘のチェルシー・クリントンとも年が近く、ヒラリー自身が「もう一人の娘」と呼ぶほどの関係と言われています。
メディアは「FBIが押収したウィーナーの携帯電話はアベディンと共有していて、その中にはヒラリーとの通信記録があるようだ、しかしそのメールがヒラリーの私的なサーバーから送られたものかどうかはまだわからない。」としています。既にトランプ陣営は「もし本当に私的サーバーから送られた高度な機密内容が出てきたら、ヒラリーは大統領どころか犯罪者として裁かれることになる」と煽っていますが、あくまで憶測に過ぎません。
そもそも長官の手紙には「別件の捜査で抑えた証拠物件の中に、ヒラリーのメール案件に関係した内容があるようだ。それが捜査すべき内容かどうかを調べる必要がある」とあるだけ。ちなみにウィーナーのウィの字も出てきていません。http://www.nytimes.com/interactive/2016/10/28/us/politics/fbi-letter.html
じゃあそれが「捜査すべき内容かどうかまだわからないのに、なぜ今こんな時期にこんな曖昧な手紙を送って有権者を混乱させるのか?という批判が噴出しています。司法省はこのような時期に選挙に影響する文書を出すのはプロトコルに反すると警告しています。一方手紙を書いたFBI長官も受け取った上院議員も共和党(トランプ候補)でもあるため、意図的なものではと憶測する声もあります。しかしFBIには一度出した捜査結果を覆すかもしれない情報を得た場合にはすぐに報告の義務があるという報道もあり、メディアの情報は錯綜しています。
ヒラリー陣営は「早く全ての事実を公表してください」とFBIを攻撃しています。
現在FBIと司法当局は全力をあげてフーマ・アベディンのメールを調べていますが、あと1週間に迫った大統領選までにすべてが終わるかどうかは疑問と関係者はコメントしています。
でもこれだけでヒラリー嫌いの有権者にとっては「やっぱりヒラリーは信用できない」と思わせる十分な要素です。31日火曜日現在世論調査はヒラリーとトランプの僅差はさらに縮まりつつあります。ヒラリー票がトランプに流れる可能性は低いとはいえ、もうホントに二人とも嫌、という有権者が第三第四政党の候補者に投票、または全く投票しなかった場合、投票率が下がってトランプ有利になるのは以前から述べている通りです。
トランプ候補は集会で「サンキュー、アンソニー・ウィーナー」と言っていましたが、その通りになる可能性もまだ残っているのです。
ところが投票の前日になってFBI長官は、巷の予測をまたまた裏切り「メール全部調べたところシロでした」と発表。おかげで「ヒラリー当選」の可能性は高まり株価は上昇しましたが、ヒラリー&民主党へのイメージダウンなどダメージは大きかったと見られています。この1週間でかなりの数の人が期日前投票したことも選挙結果に影響していると考えられます。
それにしてもヒラリーのナンバーワンの側近の夫がセクスティング男ウィーナーだったというのも皮肉な話です。トランプのセクハラ騒動にしても、今回の大統領選はセックスやスキャンダルまみれで、特に若者が政治に嫌気がさすのも無理もありません。でも選挙の鍵と言われる若いミレニアルズの浮動層は、このところかなりヒラリーに歩み寄っていました。ここで投票権を行使しなければもっとひどい状況に陥るというギリギリのところに追い詰められた彼らが、何が何でもトランプだけは当選させないためにヒラリーに入れる、というのが私の予想です。
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