[Election2016]トランプを当選させたのは誰?もうひとつのアメリカとは? Who Voted For Donald Trump?

大統領選の投票から一夜明けて、ニューヨーカーは落ち込んでいます。

熱烈なヒラリー支持者はもちろん、マンハッタンに住むニューヨーカーの9割近くがヒラリーに投票したわけで、
それもヒラリーは好きじゃないけどトランプはもっと嫌という理由でヒラリーに一票を投じた人もいたはずです。そしてトランプに投票した人さえも、勝つのはヒラリーと予測していました。私も投票日夕方のTokyo FMのレポートでそう伝えました。

でもそのニューヨーカーの予想は完全に覆されました。
ニューヨーカーだけではありません、メディアにとっても完全な不意打ちでした。

その最大の理由は、トランプを当選させた牽引力になったのが、これまで声を持たなかった、メディアもノーマークだった有権者。ニューヨーカーにとっては最もなじみのない、「特に地方に住む高卒の白人」だったからです。彼らの多くがこれまで投票したことさえなかった。そんな彼らがトランプ氏のメッセージに共鳴し投票所に押し寄せたというのです。

ニューヨークタイムスの出口調査を見るとよくわかります。

彼らについて説明する前にお断りしておきたいのは、トランプは本当に僅差でヒラリーを破っていることです。一般投票の数だけで見るとヒラリーの方がわずかに多いくらいなのです。つまり多くの人はヒラリーを支持した、または消去法で安全と思われるヒラリーを選んだ。ところがトランプを支持した人がわずかに上回ったというわけです。

では「地方に住む高卒の白人」とはどういう人たちかというと、主に自動車など製造業に携わるブルーカラーの組合労働者です。勤勉で家族を大切にし信心深い保守的なアメリカ人と言っていいと思います。
かつてアメリカの産業の根幹だった製造業は、グローバル化で工場が次々と海外に移転するなどして空洞化、多くの人が職を失ったり、収入が減り続けいます。でもトランプを支持したのは必ずしも貧困層ではありません。年収500万〜2000万円のミドルクラスです。今はまだなんとかなっているけれど、将来、子供たちの時代には一体どうなるの?という不安。特にリーマンショック後、自分たちの経済状態は改善されず、政治にも大企業にも見捨てられたと怒りを感じている人たちです。ちなみにアメリカ全体で4大卒のアメリカ人は全体の3割(日本は5割弱)つまり7割は高学歴でない多くがブルーカラーで圧倒的多数派なのです。

そんな彼らにトランプ氏の「Make America Great Again」のスローガンが強く響いだのです。
トランプ氏が掲げる厳しい移民政策や貿易協定の破棄は、自分たちの仕事がなくなったのは流入する移民のせい、輸入が産業を破壊している、という彼らの疑念にピタッとマッチしたのは間違いありません。そして政治もシステムも大企業も何もしれくれない、メディアも信じられないという怒りが、キャリアが長く権益とつるんでいるイメージの強いヒラリーの全面否定につながり、政治畑出身ではなく共和党のポリシーにも沿わない「反逆児トランプ」を前面に押し上げました。

こうした反抗的な気持ちは持っているものの、彼らはキリスト教保守ですから、リベラル民主党が進めるプログレッシブな銃規制も妊娠中絶も同性婚にも賛成できない。この8年間はデジタル化や多様化でアメリカ文化がどんどん先に進んでしまった。ということはついて行けない人だっているわけで、そういう人たちが「いやちょっと待って」と言うチャンスもなかった。特に同性婚などは実際の人の気持ちでなく、政治的な駆け引き優先で決められてしまっている一面もありますから。おそらく「女性大統領」に対しもハッキリ言わないけれど違和感があるのだと思います。

そんなことより職を、生活を先になんとかしてください、という切実な思い、リアルな叫びをトランプ氏がすくい上げたのです。

そしてもう一つ、ニューヨークという移民社会に当たり前に生きる私たちが見逃しがちなポイントがあります。今アメリカはますます多様化し、2044年には白人が過半数を割ると言われています。地方の白人だけの街に住む彼らはそれを聞いて不安にならないわけはありません。自分たちが作り出した国が見知らぬ外国人に踏みにじられるような気持ちになってもそれを攻められないのではないでしょうか。(日本に外国人がどんどん入ってくるシチュエーションを想像してみてください。)今のうちになんとかしなければという力が働くのは当然だと思います。

ともあれそれが「隠れトランプ」でした。素朴でシンプルなメッセージを繰り返すことで、誰も気づかなかった政治的潜在需要を掘り起こしたという見方をすれば、これはまさにビジネスというかマーケティングの天才と言っていいかもしれません。

ともあれ、私たちニューヨーカーそして大都市を中心に動いているメディアも、彼らの存在をハッキリ認識していなかったというのが、予測が完全に外れた理由です。
多人種、多民族、全体的に高学歴のニューヨーカーが知らない「もう一つのアメリカ」があり、彼らの力がトランプ氏を当選させたことにショックを感じています。

「海外に流出した職を呼び戻せば過去のように豊かな生活が戻ってくると思うこと自体無知すぎる」と感じている私たちは、彼らのようなニーズを持ったアメリカ人がいることを知らなかった自分たちの無知も攻めた方がいいかもしれません。

同じアメリカ人なのに全く理解できない、つまりそれほど分断されてしまっているということも、今回の選挙でハッキリと明るみに出ました。

話は変わりますが、彼のメッセージは「Make America Great Again」アゲインですから過去に戻るという意味合いも含まれています。アメリカの国内産業が反映して豊かだった時代・・・・1950年代あたりをイメージする人が多いと思います。でもその時代は公民権法もなく私たち有色人種は2流市民で、もちろんフェミニズムもありませんでした。(だから私たち移民はトランプ大統領に対しアレルギーを起こしてしまうのだと思います。)

彼らが求めているチェンジは、8年前にオバマ大統領が掲げたチェンジとはかなり違います。つまり未来ではなく過去に向かうベクトルのチェンジだと思います。

あらゆるものがものすごいスピードで先に進んでいる今、これは振り子が降り戻っている状態だと思います。バランスを取ろうとしている、ある意味人間のサバイバル本能なのかもしれません。ただそれがどこまで降り戻るのか? その結果がどうなるかは今の所誰にも予測できないのですが。

 

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