週が明けたアメリカでは、激戦州ウィスコンシンでの票の数え直しが月曜日の時点でほぼ決定*、さらにミシガン、ペンシルバニア両州でも数え直しの可能性が出てきています。投票システムがハッキングされていた可能性があるというのが理由ですが、実際に数え直しが行われることになった背景には、ヒラリー候補の得票数が伸び続け、現時点でトランプ次期大統領を200万票以上リードしているという現状があります。It’s a new week and time for recount in Wisconsin. In the meantime, Hillary’s lead to Trump by popular vote is surpassing 2 million. What now? (English readers, please read the reference articles below)
なぜ負けたヒラリーの得票数が伸びているのか、200万票というのはどういう意味を持つのか? そして数え直しは果たして選挙結果に影響を与えるのでしょうか?
– ヒラリーの得票数が伸び続けている理由:
皆さんもかなり詳しくなったと思いますが、アメリカの大統領選は各州の得票数で勝った候補者が、その州に割り当てられた選挙人を総取りして、その数が過半数を超えると当選します。その結果トータルの得票数で勝っても選挙人の数では負けるという事態が派生します。投票数では当初からヒラリーが勝っていました。そして主にカリフォルニアなどの民主党の大票田で、郵送による票などが徐々に開票されるにつれて、ヒラリーの得票数が伸び続けているというわけです。この得票差は最終的には250万票に達するという予測もあります。
– 200万票という数字は大きいのか小さいのか?:
負けた候補者がこれだけの差をつけて票を集めているというのは、20世紀以降の大統領選の歴史では初めてです。
非常に後味が悪かった2000年のブッシュ対ゴアの時でさえ、負けたゴアのリードは54万票でした。
これを比率にすると、
ヒラリーの得票率は全体の48%、トランプは46.5%と、1・5%もの差がついています。
また雑誌THE NATIONでは、「投票した人の53.5%はトランプを拒否したことになり、これは2012年前回の敗者ミット・ロムニーを拒否した人52.8%より多いことになる」と、選挙結果の不合理さを強調しています。
– なぜウィスコンシン、ミシガン、ペンシルバニアで数え直しするのか?
この3州は二人の得票の差が最も小さかったからです。
ウィスコンシンではトータル300万票のうち、トランプ氏のリードは2万7千票で1%以下です。ミシガンでは480万票のうちわずか9500票です。
– 数え直しで選挙結果はひっくり返る?
もし上の3州でヒラリーの得票数が多かったということになれば選挙人の過半数を獲得することになりますが、その可能性はほとんど無いとみられています。
しかし選挙前から多くのメールがハッキングされ、投票日にも投票機へのハッキングが警戒されていたというのは事実ですから、きちんと数え直して双方納得の上新政権を迎えたいという声もあれば、お金と時間の無駄という声も。
– 最終的な結果はいつわかる?
選挙人は12月19日に集まって、自分が割り当てられた候補者に投票し、正式に次期大統領が決定します。
数え直しのデッドラインは12月13日です。
-実はトランプ候補も選挙結果に不満
面白いのはこれに対しトランプ次期大統領はツイッターで「数え直しは馬鹿げている。移民による違法な投票さえなければ、自分が一般投票でも勝っていたはずだ」とつぶやいていることです。これまた全く根拠がないトランプ流言ったもん勝ちコメントですが、要するに勝った方にも負けた方にも納得のいかない選挙だったということになり、今後の選挙制度の見直し論争につながっていくことは間違いないと思います。
最後に・・・この選挙実はとても高い投票率だったことがわかってきています。詳しくはまた書きます。
*訂正・数え直しの発起人である緑の党の党首ジル・スタインがその費用を負担するという条件つきで決まっています
参考資料
http://cookpolitical.com/story/10174
https://www.thenation.com/article/republicans-cannot-claim-a-mandate-when-hillary-clinton-has-a-two-million-vote-lead/
http://thehill.com/homenews/campaign/307623-here-is-how-a-wisconsin-recount-will-work