(JFNの午後のワイドDay By Dayのレポートで話した内容を再構成しています)
ニューヨークで生活している人は私と同じ感想を持っているかもしれませんが、
トランプ就任から1週間も経っていないのに、
8割がトランプ支持ではないニューヨーカーにとっては、数時間ごとにこれまでの全てがひっくり返るのにただただ驚愕。
初日から大統領命令で オバマケアを骨抜きにしたり、TPPからの脱退を宣言・・・
そして象徴的なのはホワイトハウスのウェブサイトの激変。
環境保護が、アメリカファーストのエネルギー対策に、
人権の保護が、公安機関へのサポートに変わり、
多くの人が自分たちが次第に声を失っていく不安に駆られています。
そんな中で一筋の光となったのが、就任式翌日にあった女性のマーチ。
全米だけで300もの都市で320万人が参加したと推定されています。
先週お伝えした予想をはるかに上回り、ニューヨークの動員40万人!
何しろあの5番街が42丁目からトランプタワーのある56丁目まで歩道まで人でギッシリ、ギッシリすぎて行進できないくらい。
2003年のイラク戦争反対のデモもこんなじゃなかった。私も含め参加者自身が驚いていました。
女性だけでなく男性も、あらゆる年齢層が参加、何より「自分だけじゃなかったという思いが」マーチを希望に溢れたものにしてくれました。
このマーチ、事実上アンチトランプだったという以外には特に統一テーマがなく、
実に様々なスローガンのプラカードが溢れたわけなんですが、
女性や LGBTQの権利、環境保護、医療保険法撤廃反対など様々なプラカード、
中でも目立っていたのは、「妊娠中絶を違法にするな」というメッセージ。
日本では考えられないと思いますが、この妊娠中絶問題、実はアメリカでは 大変大きな政治マターなんです。
妊娠中絶は44年前の1973年、かなり強引な方法で合法化されたため、
その後も反対運動が続いているだけでなくリベラルの民主党は、中絶合法化に賛成のプロチョイス。逆に保守派の共和党は反対するプロライフ、というふうに政治的な争点とされて、選挙のたびに論争が蒸し返されてきました。
ここ数年、保守の勢いが強まっている南部や中西部の州では、じわじわと妊娠中絶を制限する動きが出てきていましたが、トランプ新大統領も絶対反対の立場です。
ここでお伝えしておきたいのは、賛成派と言っても中絶を奨励しているわけではなく、「 自分の体のことは、自分が決める権利がある、だから合法であるべき」という人権が論点です。一方反対派は「胎児も人間なのだから、中絶は違法であるべき」というやはりこれも人権ですね。
ただし賛成派も「妊娠後期の中絶は制限すべき」と考える人、逆に反対派は「 レイプなどで必要な場合もある。」と互いに歩み寄る意見も。そして「中絶を減らすためにもっと効果的な避妊対策を広めることが重要」という部分では、両者の意見は一致しています。
ちなみにこんなに政治問題になるのは、アメリカがキリスト教国だからという説明もされていますが、そうでもないという意見もあります。例えば宗教的に妊娠中絶を禁じるカトリックが多いお隣のカナダ、メキシコでは、もっとずっとゆっくりと丁寧に合法化を進めてきたために、アメリカのようなドラスティックな政治マターにはならずに済んだと言われています。
実際多くの女性たちは穏健な妥協策を求めているのにもかかわらず政治マターになってしまっているために、
何かあるたびに争わなければならない、ここから逃れることはできないというのが現状で、これが女性が一枚岩になるのを妨げている、一つの要因にもなっています。
もちろん重要な問題ですが、トランプ政権に立ち向かうためには、この問題は棚上げにしてでも、
もっと他に山積みの重要な政治課題にシフトしなければ、勝ち目はないという厳しい意見もあります。
女性のマーチに話を戻すと、
ここで見せた本当に素晴らしいエネルギーと結集力を、
どうやって2年後の中間選挙に結びつけていくのか、これからが正念場です
JFN – Day By Day
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