(JFN- Day By Day でレポートした内容を再構成しています)
今週も毎日がトランプデーなアメリカ。一昨日から今日にかけてもトランプ政権の重要な閣僚が辞任し、ロシア疑惑が再び大きくクローズアップされ、かと思えば今日はニューヨーク沖にロシアのスパイ船が現れたり、もう何が何だかわからなくなっています。
そんな中先週は安倍首相と会談しましたが、安倍首相の顔があれだけテレビに出ることはこれまでなかった。
別に安倍首相が特に人気がないわけではなく、これまでほとんどのアメリカ人は、プーチン大統領は別として、他の国の首長には全く興味がなかった。
ところが今回のトランプ大統領とのあの長〜い握手、見ましたよね?、トランプ大統領が安倍さんの手を握りしめて10秒たっても15秒たっても離さない。この後どうなったかというと・・・
19秒後、やっと手を離してもらった安倍首相がほうほうのていで目をぐるりんとやったあの顔が評判になり、ニュースから夜のお笑い番組からソーシャルメディアまでバイラル化、もう何度見たかわかりません。
こういう話題が今、アメリカではお笑いネタとなりウケまくっています。
トランプ大統領の支持率現在40%で下降を続けていますが、逆に上がっているのが、テレビのお笑い番組の視聴率。
そもそもアメリカのお笑いネタのかなりの部分は、政治ネタと言っていいくらい、それがアメリカのお笑い、コメディの伝統です。
特に大統領は最高のいじりネタ, クリントンもブッシュもオバマも毎日やられていた。
権力をいじりたおし、タブーもポリティカリー・コレクトも笑いでぶち破る、こういう番組を毎晩やっていて、我々庶民は大笑いしてうっぷんを晴らしてからベッドに入る。これも表現の自由、民主主義の一部でもあるし、単純にガス抜きとも言えます。
こうしたポリティカル・ユーモアは大学での研究の対象にもなっています。
その第一人者でもあるジョージ・メーソン大学によれば、トランプ大統領のネタは、去年の選挙運動中だけですでに1817回、就任以来そのペースはますます上がっていますから、歴代大統領の中ではダントツだったクリントン大統領の4600回を軽く超えそうです。
そんなトランプ大統領のパロディは選挙運動中から俳優のアレック・ボールドウィンがやっています。
もうびっくりするくらい似ている。顔も表情も声も話し方も。
あまりに似ているので、ドミニカの新聞が間違えてトランプ大統領の代わりに彼の写真を掲載してしまったくらい。
ところで安倍首相の訪問時、握手以外にネタになったのは、フロリダのトランプ大統領の大豪邸での食事会です。
この食事会にはトランプ・ゴルフクラブの会員など一般客も招待されていました。ちょうどその時北朝鮮がミサイルの発射事件をしたという報告が飛び込んできました。安倍首相とトランプ大統領が食事のテーブルの上で書類を見ながら話し合う場面を、なんと一般客が写真に取ってフェースブックに投稿したのです。
これがニュースになり、「国家の安全保障を話し合うのにこんなにゆるくていいのか」と大論争になりました。
コメディアンのスティーブン・コルベールは、
「二人は誰かが照らす携帯の明かりで書類を覗き込んでいた。でも大丈夫、極秘書類は流出していないようだ。照らしている携帯で撮影していない限りはね。」とグサリ。
またトレバー・ノアは
「でもあの場に安倍首相がいてくれてよかった。なぜって聞くところによれば、トランプ大統領がコメントを避けようとしたら、安倍首相に、“いや我々はリーダーなんだから発言しなければならない”とたしなめられたらしい。それで安倍首相が書いたスピーチのメモを見てこう言ったんだ。
“君ってなんて最高なんだ、ママ〜、安倍くんうちに泊まっていっていい〜?」
・・・これあくまでジョークですからね。
そしてトランプ大統領の他にも新たな登場人物が出現しています。
ホワイトハウスのスパイサー報道官です。
いつも昼帯の、あまり誰もテレビを見ない時間に毎日の会見を行いますが、
これが大ヒット、裏でやっているソープオペラをしのぐ視聴率を稼いでいます。
このスパイサー報道官、とにかく傲慢で押しが強い。
連日勃発する疑惑や問題に対して全く遠慮ない質問を浴びせる記者との間で、パンチの効いた言葉の応酬はほとんどプロレス感覚。
そしてこのスパイサー報道官の人気が出てしまった理由もお笑いです。スパイサー報道官のパロディをコメディ女優のメリッサ・マッカーシーがやって抱腹絶倒、大ヒットに。
放送したのは、アレック・ボールドウィンのトランプ大統領を「発明した」長寿のお笑い番組
「Saturday Night Live」
おかげで22年ぶりの最高の視聴率を記録したほど。
内容はこんな風です。メリッサ・マッカーシーのスパイサーは開口一番「今日は謝罪から始めよう。お前らメディアの失礼な態度を、お前らの代わりに俺が俺に謝ってやるんだこの野郎!」とぶちかまし、
都合の悪い質問をする記者に水鉄砲で水を浴びせ、しまいには演台を抱えたまま記者を追い回すという具合。
さて最後にすごいのを一つ。
トランプ大統領ネタに欠かせないのはプーチン大統領で、二人がおホモだちな感じのジョークが巷にあふれています。
昨夜バレンタインデーのニューヨークの街の建物にこんな映像が投影されました。
妊娠したトxxプとプーチン大統領!
アップルストアのビルの外壁でしたが、決行したのはデートアプリのHater
ユーザーが「キライ」なものでカップルをマッチングするという面白いアプリで、
今回ユーザーの8割がトランプが「キライ」ということで、この画像に決まったそうです。
「憎しみも笑いでラブに変えられる」というメッセージだそう。
(business Insider記事へはこちらから)
権力が強ければ強いほどコメディが面白くなる、そして、大変な毎日を生きるためのサバイバルツールでもあります。
毎日毎日ギョッとするニュースで溜まっているストレスを、こういうコメディで大笑いして何とかバランスを取っているのが今のニューヨーカーなんです。