(JFNのラジオ番組Day By Dayでレポートした内容を再構成しています)
昨日国土安全保障省が発表した、これまでにない厳しい不法移民の取り締まり。基本的に全ての不法移民は拘束・強制送還の対象になり、その数は全米でおよそ1100万人にのぼります。
不法滞在だから仕方がないと思われるかもしれませんが、問題はやりかたです。不法とはいえアメリカに長く住んで働いて税金も払っている人も多い。アメリカ人が嫌がる重労働を最低賃金以下でやってくれている。すでにアメリカ経済の一部になっているため、重犯罪者は別として、無理に強制送還するより、徐々にアメリカ人として取り込んで行く方が建設的というのがオバマ政権のスタンスでした。
ところがトランプ政権の 取り締まりはもうそれも関係ない。一斉手入れや検問で拘束して、取りあえず早く強制送還する。そのために家族が離散したり、職場から同僚が消えたり、街の雰囲気も悪くなり、 ヘイトクライムが増える恐れも。
そんな中、日系アメリカ人がメッセージを出しました。実は日系アメリカ人は、今から75年前に出された大統領令のために、コミュニティが崩壊した歴史を持っているからです。
1941年12月8日日本によるハワイ真珠湾の攻撃で日米間の戦争が始まりました。それからおよそ2ヶ月後の1942年2月19日、ルーズベルト大統領が出した大統領令により、12万人の日系アメリカ人が拘束され、権利を剥奪され財産も没収されて、強制収容所に収容されました。
そのほとんどは日系2世から4世のアメリカ国籍を持つアメリカ人。敵性国日本の血を引く者は、たとえアメリカ人であっても危険とされたのです。それまで母国を攻撃されたことは一度もなかったアメリカ人にとって真珠湾攻撃は大変なショックでしたから、当時としては致し方なかったのかもしれません。
でもこれで西海岸の日系コミュニティは崩壊、およそ4年間にわたり、10箇所のキャンプに隔離されて劣悪な環境の中での生活を余儀なくされました。その経験をした人は、当時の日系アメリカ人に対する偏見と、今のイスラム教徒や移民に対する偏見や敵対心の高まりはよく似ているといいます。
そんな中、この大統領令を記念した集会が今年も全米各地で開かれ、このようなご時世を反映し、例年になく注目を集めました。
二度とこのような体験を誰にもしてほしくないという日系人の思いを発信した集会に、私もニューヨークで参加しました。

教会での集まりには収容所の経験者らに混じって、イスラム教のリーダーも参加し、肌の色や外見だけで相手を判断したり差別する風潮が高まっていること。またテロ対策や不法移民の取り締まりという名の下に、移民や外国人はもちろん、アメリカ人の人権もが制限されていく危険を訴えました。

そもそも冷静に考えると、イスラム教徒の入国を制限すればテロがなくなるのか、不法滞在者がいなくなれば安全になってアメリカ人に職が戻ってくるのか、誰にもわかりません。
むしろ入国制限はテロリストを刺激し、各国のアメリカへの反感を高めるだけ、アメリカへ旅行する人も減っているという数字もあります。また移民なしでアメリカの経済は成り立たないというのは定説。だいたい1100万人を乗せる飛行機代一体いくら?

でも今アメリカ人はそこまで考えている余裕がないのかもしれません。オバマケアの問題から次から次へと・・・もう追いつかない
そして、トランプ政権が警告するテロへの恐怖と有色人種への偏見と自分の仕事を奪われるのではという恐れがないまぜになって、思考停止している人も。
そんな中トランプ政権は今週中に、また新たな入国制限の大統領令を出すとしています。
そして実は今回の取り締まり、日本に住む皆さんにも関係があります。アメリカに旅行する時、空港でスマートフォンのパスワードを要求されたり、フェースブックの投稿を見せろと言われる可能性があります。こうした外国人のプライバシーはもう保証されないんです。
The New York Day Of Remembrance Committee
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