(JFN系全国ネット ON THE PLANETで月〜木で放送している「アメリカジャーナル」を再構成しています、毎週水曜日は極地建築家の村上祐資さんです)
5月10日(水)放送
ニューヨーク時間の昨日9日トランプ大統領、FBI(連邦捜査局)長官をクビに。
アメリカ中に衝撃が走っています。
なぜなら、これがトランプ大統領の足元を揺るがしかねないだけでなく、アメリカという国を根幹から揺るがす危険な動きとも考えられるから。
まずよほどのことがなければFBI長官はクビになりません。長官は大統領が指名しますが、基本10年の任期で政権が変わっても関係ない。これまでクビになった長官は一人だけ。ビル・クリントン時代の長官が汚職で解任されました。
そもそもまずジェームス・コーミーFBI長官ってどんな人?
一般的に有名になったのは、2016年のヒラリー・クリントンのeメール流出事件のため。ヒラリーが選挙運動中、政府のメルアドではなく個人メールを使っていた。もしかして機密事項もメールしていたのでは?もしハックされでもして国の機密情報流出していたらどうする?と大騒ぎに。
これを捜査していたのがFBIでした。そして一旦は「機密情報は含まれていないから、犯罪には当たらない」としていたのに、選挙の11日前になってこの同じ長官が 、「新たな捜査でヒラリーに不利な新しいメールが見つかったかもしれない」と衝撃の発言、
結局は不利になるものは何も見つからなかったわけですが、これがヒラリーの敗北、トランプの勝利につながったと信じられています。
それに対し、トランプ大統領自身は当時からこれまで一貫して、このコーミー長官の動きをあらゆる機会に大絶賛していた。(そのおかげで当選できたんだから当たり前?)
だから今回彼を解任した理由が全くわからない。というのも、クビの理由は「コーミー長官のヒラリーのメール事件の扱いが間違っていたから」ずっと褒めちぎっていたことと、全く矛盾する。
大きく譲っても半年も前のことをなぜこのタイミングで持ち出してクビにしたのか?
ここで考えざるをえないのはトランプ政権から消えないロシア疑惑です。
以前この番組でこうお伝えしました。
「去年の大統領選でロシアが、トランプが有利になるようにハッキングや情報流出などの操作を行っていたが、その行為にトランプ陣営が協力していた可能性があり、FBIが捜査を行っている。」
この調査の先頭に立っていたのがFBIであり、コーミー長官だった。だからFBIに対する捜査妨害では? と自然に考えざるをえない。
そしてトランプ大統領は、この解任を自筆の手紙で通達しています。
その手紙の中のフレーズがまた謎。「コーミーさん、私が捜査対象ではないと3回も言ってくれてありがとう。でも、あなたが長官として相応しくないという司法長官の判断に同意せざるをえない から解任します。」
“While I greatly appreciate you informing me, on three separate occasions, that I am not under investigation, I nevertheless concur with the judgment of the Department of Justice that you are not able to effectively lead the bureau,”
「捜査対象」というのは「ロシア疑惑の捜査対象」としか読めないし、なぜわざわざ手紙に、解任とロシア疑惑を結びつけるようなことを書いたのかも理解できない。
これに対し、解任に意を唱える側は、この動きは、やはりトランプ側にやましいところがあるのでは?という疑惑に火に油を注ぐ結果になったと考えている。というのもここ数日、上院の特別小委員会でトランプ政権のロシア疑惑に関する公聴会が開かれて、重要な証人が証言し再び疑惑が膨らみ始めたところだったのです。
さらに、はっきりとした理由もなく、国の警察機構の頂点に立つ人間をクビにするのは、自分と意見を異にする人間をどんどん切っていく独裁者と同じで権力の濫用。アメリカというのはそういう国ではなかったはず」と強く批判。
逆に解任賛成派は、一連の事件が表沙汰になりすぎてFBIのイメージが悪くなったから、それを一掃するための交代はアリ。
ではコーミー長官がいなくなった後、ロシア疑惑の調査はどうなる?
ワシントンの議会では「自分に非がないなら、さっさと捜査させてクリーンになった方がいい。」という意見が強く、特別検察官を立てて捜査を開始すべきかどうか、賛成・反対の間で大論争中。
そんな中、まさに今日、ロシアの外務大臣がホワイトハウスを訪問しました、何か関係があったのでしょうか、それともただの偶然?
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