(JFN系全国ネット ON THE PLANETで月〜木で放送している「今日のトランプ大統領」を再構成しています、)
6月6日(火)放送
トランプ大統領、先週のパリ環境協定からの離脱宣言、さらにロンドンでのテロを受けて、ロンドン市長に対する一方的な批判のツイートなどで炎上しています。
そんな中、先週アメリカで非常に深刻な事件が起きていました。ちょうど1週間前の26日オレゴン州ポートランドで、電車の中で白人男性が、イスラム教徒の女性に絡んでいた、それを止めようとした3人をナイフで刺し、二人が亡くなるという事件。35歳の犯人は、地元では白人至上主義者として知られていたそうです。
こういう事件、アメリカでは実は頻繁に起こっている。今年2月には、カンサス州で白人男性が二人のヒンズー教徒を射殺する事件、3月にはニューヨークで白人男性が路上で黒人男性を刺殺(しかも、一人でも黒人を多く殺すためにニューヨークに来たと証言)2015年、サウスカロライナの教会で、白人男性が9人の黒人を射殺。2012、ウィスコンシンで白人男性が6人のシーク教徒を射殺。
ほとんどが、精神に異常をきたしている犯人の犯行とされていますが、実際にはほとんどが極右の白人至上主義者によるヘイトクライム。
巷ではラジカルなイスラム・ジハディストによるテロが大きなニュースになっていますが、アメリカではむしろ、こうした白人至上主義者による暴力の方が数的には多い。
データによれば、2001年の911以降、イスラム教も白人至上主義者も含めた過激派による暴力事件は、85件起きていて、そのうち62件(約7割)は極右の白人至上主義者によるもの。残り23件(約3割)がイスラム教徒によるもので、犠牲者の数を比べるとほぼ同じ。
ところが、アメリカではイスラム過激派による暴力はテロと呼んでも、白人至上主義者による暴力をテロと呼ばないのはおかしい、という批判もあります。
一方警察をはじめとした司法当局が、白人至上主義者による暴力を非常に深刻に捉えているにもかかわらず、トランプ政権は発足直後に、「テロ対策はイスラム過激派に集中したい」と発表。
つまり、白人過激派による暴力対策を骨抜きにする意向として、極右の団体から喝采を浴びました。トランプ大統領自身は、こうした極右団体のグループからのサポートを受けています。白人至上主義の代表として知られるKKKも、選挙戦ではトランプ大統領への支持を表明していました。
一方で昨日、こんな報道がありました。ハーバード大学で、ソーシャルメディアに人種に関する不適切な投稿をした10人の生徒が入学取り消しになった。アメリカ社会のモラルと平和を守るために大学も必死ということだと思います。
アメリカではこうした人種偏見やそれに根ざした暴力との戦いが、トランプ政権になって、明るみに出てきたということでもあります。
最近はちょっと影が薄くなりましたが、トランプ大統領の補佐官の筆頭であるスティーブ・バノン氏は、「イスラム教徒はキリスト教の白人社会を破壊しようとしている」というような極端な発言をしていますから、それに影響される若者も多いと思います。それがヨーロッパでは度重なるイスラム過激派のテロとなり、アメリカでは白人至上主義者のヘイトクライムとして具現化していると言ってもいいかもしれません。
こうした「ヘイト」の火種は、見つけたら即座に消していかなければなりません。人を肌の色や宗教で差別したり憎んだりしてはいけないということを、言い続けていかなければならない。すべての人を愛する必要はないけれど「あなたの嫌いなあの人にも生きる権利がある」ということを肝に銘じなければならない。それが高度に多様化・グローバル化した私たちの世界の生き方の基本だと思います。
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