(JFNのラジオ番組Day By Dayにレポートした内容を再構成しています)
この1週間、ロシアスキャンダルが緊迫したかと思ったら、突然、議会で健康保険法撤廃のための投票が始まり、かと思えば北朝鮮の核が、突然来年にはアメリカに届くかもという分析が発表され・・・
もう色々ありすぎて誰もついていけない、かなり異常な状態。
トランプ政権誕生から6ヶ月、その影響はアメリカ文化にも出てきています。
やたら元気なのは、CNNやFOX NEWSなどケーブル・ニュース。フェイクニュースと言われながら視聴率は1年前に比べて2倍近い番組もあるほど。
お笑いバラエティ番組の視聴率も絶好調。トランプをネタにしたジョークを連発する番組やコメディアンが大人気。政治家など偉い人をネタに笑って憂さを晴らすのは、もともとアメリカ人は大得意ですが、これがこの半年間でエスカレート。
一方で、アメリカの暗くて怖い未来を描いたドラマが大ヒット中。今日はこの半年間に最大のヒットになった2つのテレビ番組を紹介します。
エミー賞といえばアメリカの最も優れたテレビ番組に与えられる賞。そのノミネートが先日発表されましたが、最多22部門でのノミネートは「Saturday Night Live」というお笑いバラエティ番組。
42年の歴史の中で、常に鋭い政治ジョークで知られてきましたが、俳優のアレック・ボールドウィン扮するトランプ大統領があまりにリアルで、大統領自身が何度も怒りのツイートをしたほど。
とにかく胸がすくジョークやコント満載で、アンチトランプのアメリカ人は、この番組に救われたと言ってもいいほど。
続いて13部門ノミネートは、正反対にぞーっとする怖いドラマ。
「The Handmaid’s Tale」
原作は80年代に書かれた「侍女の物語」近未来のアメリカはキリスト教原理主義者の国になっていて、環境汚染や原発事故などの影響で、子供が産める女性は少数派になっている。彼女たちは拘束され、侍女として支配層の男性に支え、彼らの子供を産むための道具にされている・・・・
まさにディストピア。これは極端な設定ではあるけれど、トランプ政権になってからアメリカでは様々な権利が少しずつ縮小して、以前より自由が失われている感覚がある。大きいのは70年代に自由になった女性の中絶を再び制限する動き。そして厳しい移民の取り締まり、 LGBTQの権利の制限など。今日もトランプ大統領がツイートで、「トランスジェンダーを軍隊から締め出す」と発言して大騒ぎになりました。
1年前に謳歌していた自由が、ほんの少しずつ取り上げられていく感覚。こういう不安は多くのアメリカ人にとって初めてかもしれない。だからこのドラマが強く響いているのだと思う。
でも人権が保障されていない国は世界中にいくらでもあるし、「治安や宗教的な理由」を優先するために、権利や自由を簡単に取り上げられてしまう危険があることを、アメリカの、特に若者が実感するきっかけにはなっているかもしれません。
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