(JFNのラジオ番組Day By Dayにレポートした内容を再構成しています。メインパーソナリティは桑原りささんです。)
今興行成績ナンバーワンの映画を見てきました。「Blade Runner 2049」です。
Blade Runnerといえば、1982年公開のSF ノワール、35年たった今でもカルト的人気の映画。その続編が35年たって作られた。
どれくらいカルトかというと、おそらくアメリカ人も日本人も、映画を見たことがない人でも全員見ているはず。
つまり、この映画に影響されていないSF映画やアニメはまずないと言っていいから。
例えば攻殻機動隊の押井守監督は、「自分が作品を作る時、どうしてもBlade Runnerの事を考えてしまう。」
例えば、オリジナル1982年のBlade Runnerは近未来、
2019年のロサンゼルスが舞台。もうさ来年ですね。そのディストピアぶりがすごい。
環境破壊で退廃感漂う大都市、高層ビルの間には車が空を飛んでいるが、なぜかビルの壁にはなぜか巨大な芸者の映像から小唄のような歌が流れ、地上は混沌とした場末のチャイナタウンのような街が広がり、屋台では主人公のハリソン・フォードが大盛りのうどんを食べている。
そして常に雨が降り続けている。
ダークな未来なのに懐かしい、プラス、アジアっぽいという、このイメージがあまりに衝撃的すぎて、「近未来」というのはこういうものだ、というイメージが決定的に作られた。
これに多くのクリエーターが影響され、たくさんの作品に引き継がれている。
攻殻機動隊のアニメ映画Ghost In The Shellの舞台のアジアの街にもBlade Runnerの匂いが強くする。
そういう作品を通じて一般人の脳裏にも、近未来のイメージとなって焼き付いているというわけ。
例えばこのあいだ日本にいる時、アメリカ人を連れて歌舞伎町に行ったけど、あのネオンが並ぶ靖国通りあたりに、とっても近未来なイメージを感じていた様子。東京湾のレインボーブリッジよりむしろ未来を感じていたよう。
でもこの映画をカルトにしている理由はそれだけではありません。
ストーリーの原作は、これまたカルト的な人気があるアメリカのSF作家、フィリップ K ディック。トータル・リコール、マイノリティ・レポートなども映画化されています。
退廃した近未来の世界では、宇宙開発のために、過酷な環境にも耐えられるアンドロイド、「レプリカント」が作られ、奴隷として使役されている。
しかし彼らが人間に逆らえないように、寿命が短く設定されている。それに反抗し反乱を起こした彼らを、狩る役目なのがブレード・ランナー。
このブレード・ランナーを、オリジナルではハリソン・フォード、新作ではライアン・ゴズリングが演じている。
ところが狩る方も狩られる方も、実は同じ敵に直面している。それは「限られた命」という敵。
映画では、奴隷制や貧富の差、環境破壊や倫理の退廃という社会の問題を鋭く風刺しながら、
命とは何か、生きるとは何なのかという哲学的な疑問を強烈に突きつけてくる。
このテーマも今たくさんの映画やドラマに受け継がれているけれど、1982年当時、アンドロイドの人権を訴えた初めての映画だったと思う。
さて今回はエイリアンで世界的に知られるリドリー・スコット監督が作った傑作のオリジナルを、今年のアカデミー賞候補にもなったArrivalのドゥニ・ヴィルヌーブ監督が続編にリメイク。
さて、実はこの映画、興行成績1位ですが、レビューでは絶賛されているのに思ったほど売り上げが伸びず期待外れだったと言われています。でも実はオリジナルは公開当時は全く売り上げが伸びず、それから何年もかけてじりじりと人気を上げて、今のようなカルト映画になっていったんです。スターウォーズみたいなSFとは全然違うタイプの映画なんですね。原作者のディックも生前はあまり作品が売れなかった、つまり時代のずっと先を行っているために、後になって評価される、そんな作品だと思います。
私はオリジナルをビデオで何十回と見ているので、比べるのが難しいのですが、新作の方はもっと美しくてもっと悲しいかもしれません。
どちらも是非見てもらいたいのですが、どちらを先に見てもいいかも。順番通りみれば、ああこういう風に繋がったんだ、逆なら、ああこういうことだったんだ、という謎解きが楽しめます。
「Blade Runner 2049」日本では10月27日から公開
Day By Day(JFN系全国19局ネット)青森・岩手・秋田・山形・栃木・長野・福井・岐阜・滋賀・山陰・岡山・山口・徳島・高知・香川・大分・佐賀・長崎・鹿児島
http://park.gsj.mobi/program/show/27306