(JFN系全国ネット ON THE PLANETで月〜木で放送しているNYレポートを再構成しています、木曜日のメインパーソナリティはトム・リーさんです。)
12日火曜日ある地方選挙が全米の異常な注目を集めました。
アラバマ州の上院議員の補欠選挙だったのですが、去年の大統領選のデジャブかと思うほど、全米が開票速報に注目。たかが地方の補欠選挙にこれほどの注目が集まった理由は、この選挙がトランプ大統領とトランピズムへの信任投票の色を帯びていたからです。
それにしても異常な選挙でした。
トランプ大統領が大プッシュしていた、共和党のロイ・ムーア候補にはセクハラ疑惑があって8人もの女性が名乗り出ていた。その中には10代の少女の頃に性的な虐待を受けたという女性も。また彼はこれまで、アラバマ州最高裁の首席判事を2回も解任されている。さらにこれまでの発言や態度から、人種差別主義者とも言われてきました。
そもそもなぜこんな人が候補に?
アラバマ州は南部の非常に保守的な土地で、過去25年間保守の共和党が勝ち続けている。候補者が誰であれ、保守にしか投票しないという人も多い。トランプ氏も去年の大統領選で大差をつけて勝っている。そんな場所でもともと非常に保守的なムーア候補は、ミニ・トランプと呼びたくなるほどトランピズムを体現するようなやり方で戦った。(そのバックにいたのは元トランプ大統領の首席補佐官だったスティーブ・バノン)だから最初はムーア候補が優勢と思われた。
ところがそこに起こったのが先週もお伝えした全米を揺るがすセクハラスキャンダル。ムーア候補のセクハラ問題も大きくクローズアップされ、優勢が危うくなってきた。
そこにテコ入りしてきたのがトランプ大統領、自分が応援すれば勝てると思ったのだが・・・
ところがそうはならなかった。結局ムーア候補は僅差で負けた。そしてアラバマ州では25年ぶりに民主党候補ダグ・ジョーンズ氏が勝利。
なぜトランプ&ムーア氏は負けたのか?
トランプ氏のテコ入れが、むしろ対抗馬のダグ・ジョーンズ氏やアンチトランプ派に火をつけてしまい、票が大幅に伸びた。ダグ・ジョーンズ氏が良識ある大人の態度を保ったのもよかった。
トランピズム自体もマイナスに働いた。
アメリカを分断した極端に右寄りの政策、
そして例えばセクハラ疑惑があっても、人種差別的な発言をしても、「フェイクニュース」と言えば通ってしまうような。
これに反感を持つ女性、そして普段はあまり票が伸びない黒人、若者が対抗馬に投票、
逆に中道に近い保守派にもムーア離れが起きた。
ムーア候補にセクハラ疑惑があったことを差し引いても、民主党が勝てたのは快挙。
ここで大きいのは、トランピズムへの反動がかなり来ていること。
そしてもっと大きいのは、それを全米のアメリカ人が目撃したこと。これまでは「このくらいならまだ」「他の人がいいと思っているなら」という部分があったのが、これで一気に崩れ落ちる可能性が出てきた。
そして 無視できないのは、 雪崩のような反セクハラの勢いはこれからも増していくこと。当然女性パワーが強まっていく。それはLGBTや有色人種、若者が自信とやる気を取り戻す動きにもつながっていく。
そして、来年の中間選挙の行方にも影響する。
反トランピズム と反セクハラの動きがますます盛り上がれば、リベラル民主党が巻き返す。
それでも保守共和党がそのままトランピズムを踏襲すると、反動がますます大きくなり中間選挙でリベラル共和党が少なくとも上院の多数派を取り返す。
そうすると、トランプ政権と共和党は今のような強引な政策決定はできなくなる。トランプ大統領自身への攻撃ももっと激しくなる。
そして、トランプ大統領が弾劾に追い込まれる可能性もゼロではなくなる・・・さて?
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