061218(JFN全国ネットのON THE PLANETの原稿を再構成しました、昨日の続きなので昨日のポストも読んでいただくとわかりやすいと思います。)
*歴史的な瞬間をアメリカメディアの論調を中心にお届けします。
アメリカ人は今朝目が覚めて、あの映像・・・アメリカ星条旗と北朝鮮の国旗が交互に並べられた背景を前に、硬く握手する二人のリーダーの姿を見て、衝撃というか、ほとんどめまいのような感覚を覚えたと言っていいと思う。
というのも、ついこの間まで二人は激しい言葉の応酬で、一触即発?というところまで行っていただけでなく、独裁国北朝鮮はアメリカにとって最大の敵であり続けたから。
だからこんなに二人が仲良さそうにしている姿はほとんどシュールレアリズム。一体何が起こったのか、消化できていない人がほとんど。
トランプxキムが、二つの国のリーダーとしては歴史上初めて会い、共同声明の文書が作られた。そして、その文書に二人がサインした。
その文書に書いてあったのは、「北朝鮮は朝鮮半島を完全に非核化する」
「アメリカはその見返りとして北朝鮮の安全を保障する」
そして今後平和に向けての動きを進めて行きましょうということになった。
友好的な雰囲気の演出もあり、ついに平和が?と希望を感じた人も多いはず。
確かに外交での解決に一歩踏み出した成果は大きい。そこは評価されていい。
しかしアメリカ国内では、この結果に大きな批判がわきおこっている。
通常はトランプ支持の共和党議員でさえ酷評する人が。
その理由はまず、共同声明が非常に抽象的、具体的には何も言っていないこと。
これだと 2005年に作られたものとほとんど変わらない。(その結果何も起こらなかった。)
そして、それよりも多くの人が仰天したのがトランプ大統領のこの発言。
「韓国との共同軍事演習は 北朝鮮への脅威になるからやめる方向。お金もかかるし。」
お金が・・・というのはトランプらしいが、「北朝鮮への脅威になるから」という言い方はキムジョンウン側の立場に立っているとしか思えない 。では韓国や日本に対する安全保障は一体どうする?聞けばこの発言に関しては韓国は寝耳に水だったらしい。
そしてトランプ大統領は「キムジョンウンを信じている」と発言。
それに対しメディアが「でもキム政権は多くの政治犯や家族までを殺害する独裁者、そんな人が信用できるんですか?」というツッコミに対し、自分が正しかったか間違っていたかどうかは半年後にわかる、という言い方でかわしている。
でも今回は首脳同士で会ったからこれまでと違うのでは?という意見もある。
いやむしろ、これこそ最大の批判ポイント。
アメリカの大統領がこれまで北朝鮮のリーダーと合わなかったのは、国民の人権を踏みにじる独裁者の国は相手にしないというポリシーだった。しかし今回はただ会っただけでなく、「会えて大変光栄だ」と言い、2つの国が全く対等な立場のような演出をしている。
もうこれだけで北朝鮮は世界の中でその地位を確立したことになる。
そして人権に関する内容は共同声明には含まれていない、ということは、人権侵害を否定していない、つまりは認めたと思われても仕方ない。
つまりアメリカから見れば「ここまで歩み寄ったのに、北朝鮮からは何の具体的な約束も取り付けていない」だから、
アメリカの大幅譲歩によるキムジョンウンの勝利、と強く批判されている。
そして、この「人権」は、おそらくこれから世界で大きな問題になって行く。かつて第二次大戦後各国が一致して、人権、そして自由こそが最も重要な価値観と決めた。75年近く守ってきたそれが崩れ始めている?
特に、世界で台頭するロシアのプーチン大統領や中国のシー・ジンピン大統領など独裁者に対し、トランプ大統領は絶賛している。そもそも韓国での共同軍事演習は、北朝鮮というよりむしろ中国への脅威になっていたから中国は喜んでいるはず・・・中国にもメリットをあげてしまっていると警告するジャーナリストもいる。
こういうことが起きるのも、トランプ大統領が「個人外交」をやっているから。そこに強い危機感が生まれている。
話はずれるが、今回のこのサミットについて、どうやら北朝鮮では全く報道されていないらしい、まさに独裁者の国。
アメリカメディアの一部は既にトランプ大統領に対しても、独裁的という言い方を始めている。だからこうした独裁者に魅力を感じ、仲がよくなるのだと。今回も「キムジョンウンはトランプの唯一の友達」と揶揄するコメンテーターもいた。
少なくとも武力行使は回避できてよかった。
でもこの平和への道が、どんな代償を伴うのか、新たな混乱の時代への幕開けなのか、今はまだ誰にもわからない。