061918
ブルックリンといえば、ニューヨークの中でも一番いけてると言われる街。気がつくと、レストランでもクラブでも、遊びに行くのはブルックリンばかりに・・・
そしてある日、ブルックリンのウィリアムズバーグからグリーンポイントの方に歩いていると・・・この辺は昔からある住宅地と、倉庫街のちょうど境目みたいな場所で、グラフィティが書かれた倉庫の向かいに古い教会があったりする。
1年前くらいにその教会の真ん前に、不思議なものを見つけた。フェンスに囲まれた雑草が生えた小さな三角形の空き地に、ペンキが剥げたベンチやパイプチェアなんかが置いてあって、若い子がアイスコーヒーやビールを飲みながらわいわいしたり、まったりと本を読んだりしている・・・その端っこに輸送用のコンテナがポーンとある。
見ると中ではDJがレコードを回していて、スピーカーから音楽が流れている。実はここインターネットラジオステーションだったんです。
その名もThe Lot Radio (空き地ラジオ)
一体誰がやっているんだろう?とずーっと思ってたら、ある日オーナーとバッタリ、というわけで話を聞いてみました。
The Lot Radioのオーナーの名前は、フランソワ・ヴァクセレイアさん。ベルギーのブリュッセル出身で年は30代後半くらいのなかなか爽やかなイケメン(死語?)。
大学を出て最初はアフリカ・モザンビークで写真やビデオの仕事をしていたのが、自分の居場所はどうもここじゃないと感じて、改めてニューヨーク留学。そしたらニューヨークの水があっていたみたいで、ビデオのプロデューサーとして成功。でも、やっぱりもっと好きな音楽に関する仕事がしたいな・・・と感じていた時に、ふらりと通りかかったこの小さな3角形の空き地に惚れ込んでしまった。
そこで直感的に思いついたのが「そうだここでラジオ局をやろう!」
普通の人は空き地を見て、ラジオ局をやろうとはあまり思わないですよね。でもフランソワさんはそれから2年近い年月をかけて、オーナーを説得してこの空き地を借り、ニューヨークの厳しい条例をなんとかクリア、グーグルで輸送用コンテナを探し出して改造。元々音楽大好き、クラブ通いしていてDJの知り合いもたくさんいたフランソワさんは彼らに声をかけたら、あっという間に何十人もが「やりたい!」と手をあげ、約2年前にめでたくインターネット・ラジオ局をオープン。
トータル100人ものDJやミュージックセレクターが、朝8時から深夜12時まで、ダンスミュージックから聞いたことのないようなエスニック音楽まで、ありとあらゆる音楽をプレイ。時にはニューヨークのトップDJや、ヨーロッパからツアーに来ている人気DJも立ち寄ってプレイ。リスナーはアメリカ、ヨーロッパからアジア、中南米まで世界中の音楽ファン。
でもこのラジオ局、スポンサーもいなければコマーシャルも入らない。
一体どうやって経営しているのかというと、コンテナの右半分を占める小さなキオスクで売るコーヒーとクラフトビール、ワイン、スイーツなどの売り上げで賄ってる。
フランソワさんは「ラジオって自分の持ってるセンスや知識を自由にたくさんの人と共有できるとっても素敵なメディア。それをピュアに追求するためにスポンサーもつけたくなかった。」
DJもノーギャラ、それでもなぜ人気なのかはDJブースに入ってみるとちょっとだけわかる。窓からは空き地の向こうがスコーンと抜けていて、遠くにマンハッタンの高層ビルのスカイラインが見える、この最高の眺めは世界中でここだけ。
ニューヨークタイムスにも紹介されるくらい有名になったけれど、フランソワさんは自分のポリシーは変えるつもりは全くないらしい。
The Lot Radio