071718
今私が「これぞ今のアメリカ」と言いたいヒットドラマが「POSE」。FXというケーブルネットワークで6月にスタート、大ヒットになっています。
とにかく全てのコンセプトがRight Now!
まず舞台は80年代ですが、今80’sはファッションを中心に熱いトレンド。ハイファッションでは肩パッドの入ったワイドなシルエット、カジュアルではファニーパック(ベルトポーチ)スニーカーカルチャーも80’s。
それだけでなく、今のニューヨークの音楽の多くが80’sに生まれたり育っている。ヒップホップ、今はEDMと言われているダンスミュージック、ニューウェーブ etc.
そしてこのドラマでも80‘のヒット曲満載。
でもそれだけならここまで話題にはならない。
まずプリンシパルの女優さんほぼ全員トランスジェンダー、しかもほとんど有色人種。そんなLGBTQのアクターが100人以上出演。
そして脚本、監督を務めるJanet Mockも自らトランスジェンダー。しかも有色人種のトランスジェンダーがメジャーなテレビドラマのディレクターを務めるのは初めて。
そしてもう一つの史上初は、ニューヨークの80年代のアンダーグラウンド・カルチャーBall Cultureがドラマの舞台になったこと。
Voguingってわかりますか? マドンナのVogueならわかるかな?
Ball Cultureというのはクリエイティブな衣装でドレスアップしたQueerたちが、Voguingでポーズを競うもの。
このBall Cultureもともと19世紀のハーレムで、African AmericanのLGBTQの間で始まった。20世紀に入るとヒスパニックなども加わって有色人種のクラブカルチャーに。グラマラスできらびやかなBall Cultureにインスパイアされて、マドンナのVogueも生まれたんです。
でも華やかなだけではなかった。80年代はエイズが蔓延してゲイへのバッシングが非常に激しかった時代。
さらにゲイでしかも有色人種という二重の偏見 (実は残念ながら今もその傾向は変わってないのだが)特にかつて10代の若い有色人種のLGBTQは、親に追い出されたりして行き場を失い、セックス産業で働いたり、ホームレスになる者も多かった。
Ball CultureにはHouseと呼ばれた様々なチームがあるが、チームリーダー=Motherはそんな行き場のない若者を引き取って、まるで一つの家族のように一緒に暮らしていました。
物語はそんなHouse のメンバーがHIV Positiveの診断を下されるところから始まリます。
失意から立ち上がった彼女は自分の夢を追求するために独立し、自分のHouseを作って自らMotherになる。そこから新たな出会いが生まれていく。彼女について独立した女性に惚れ込んでしまうヘテロセクシャルの男がいたり。親に追い出されたバレエダンサー志望の少年の、初恋のエピソードがあったり。
ゴージャスなクラブカルチャーから、人間同士の繊細な心の通じ合い、ビタースイートなドラマ・・・演じる女優さんたちも素晴らしく魅力的で、思わず引き込まれてしまう・・・
いつもお話ししているけれど、LGBTQは人間は自分らしく自由に生きていいんだ!というメッセージを私たちのために発信し続けてくれている重要な存在。このドラマを見ると、80年代という厳しい時代を戦ってきた彼らがいたからこそ、今のニューヨークが、そしてアメリカがあるというのが良くわかるし、それ以上に魅力たっぷりのドラマなので、日本でも早く見られるようになってほしいと思います。
FXネットワークで毎週日曜夜9時〜