ヴァージニアの衝突から1年:白人至上主義者に見るアメリカの人種差別とトランプ大統領 1 Year After Charlottesville, Racism, White Supremacist, and Trump

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去年2017年8月11日から12日にかけてヴァージニア州で起こった、白人至上主義者の抗議行動で、一人が亡くなった事件から1年が経ちました。松明を片手にしたグループ数百人が「ユダヤ人には俺たちに取って代わらせない」と叫びながら行進。これに反対する市民のグループも街に出て抗議、ところが反対派のグループに白人至上主義者の男性が運転する車が突っ込み、32歳の女性が死亡、35人が怪我をする大惨事になったのです。

アメリカに台頭する白人至上主義者の実態が明るみに出て震撼とさせただけでなく、トランプ大統領が白人至上主義者を否定せず、喧嘩両成敗的な言い方をしたために、こうした人種差別主義にお墨付きを与えた、人種によってアメリカをますます分断させる結果になった、と強く批判されました。(ちなみに、人種差別そのものは違法です。)

そしてあれから丸1年になるのを前に、ヴァージニア州には非常事態宣言が出されました。同じ街シャーロッツビル(Charlottesville)で再び同じグループが抗議行動を予定していましたが、許可が降りず、ワシントンDCでの行動に切り替え。ホワイトハウスの目の前での、白人至上主義者と反対派の衝突を避けるために、厳重な警備体制が敷かれました。

結論から言うと、今回は大きな事件にはなりませんでした。その理由は、白人至上主義者グループの人数が集まらなかったから。数百人の予測が2〜30人しか来なかったために反対派に圧倒されてしまったのです。実は去年の事件で多くの人の顔がメディアに出てしまったために、職を失ったり家族に反対されたりという事が起きたからとのこと。

しかしだからと言ってこの動きが沈静化するとは思えなません。

このグループUnited the Rightのリーダーはこうコメント。「あのような暴力事件を起こすつもりはなかった。我々は、他の人種と同じように、白人の公民権を主張する団体であり、しかるべき団体として認められたい。」

思わず「なるほど」と思ってしまいそうなのですが、ここで注意が必要です。

まず白人の公民権の主張って何か?っていうこと。もともと1960年代の公民権運動は、白人至上主義の下で抑圧されたり、意味もなく殺されたりしていた黒人が、選挙権をはじめ平等な権利を手に入れるために戦った運動。もともと権利を持っている支配層の白人が、この上何の権利を主張するのか?

前にもお伝えしたかもしれませんが、アメリカの人口、2050年くらいまでに白人が5割を割って少数派になります。そうすると有色人種が彼らの弾圧を始める、権利を剥奪する、だから戦わねばと白人至上主義者のグループは本当にそう信じているのです。

特にこうしたグループに参加して過激派になるのは、自分たちの(白人)コミュニティから弾き出され、行き所をなくし傷ついた若者。こうした若者を取り込んで、白人の未来のために戦う「正義の味方」を育てている。

驚いたことに彼ら は、去年の事件でなくなった女性の死因も事故とは関係なく、心臓発作だったのに、メディアが嘘を伝えていると信じているといいます。同じ白人だけの小さな社会で生きている彼らには、こういう陰謀説が真実に聞こえてしまうのです。

事件の1周年を前に、トランプ大統領は「あらゆる人種差別と暴力を否定する」とツイートしましたが、今回も「白人至上主義者」をピンポイントで否定しなかったために、かえって人種間の分断を煽る結果になっています。

そして今回、白人至上主義者たちが「Make America Great Again」というプラカードを抱えていたことから、彼らがトランプ大統領にとって重要な票田であることがはっきりと見えました。

「Make America Great Again」というのは、白人が圧倒的な権利を持っていた1960年代より前のアメリカに戻ろうということ。トランプ大統領のトレードマークになっている強硬な移民政策も、テロリストやドラッグの流入を理由にしていますが、実際にはこれ以上の有色人種の流入を防ぐため。また国勢調査の方法も変えようとしています。一方でプエルトリコでのハリケーン・マリア救済が劇的に遅れたのも制度的人種差別と考えられています。

トランプ氏は最初から人種カードを切っていた事ももう誰にも否定できないでしょう。

しかし白人が全員人種差別主義であるわけではありません。むしろ多くの白人特に若者は人種の融和をのぞみ、多様化はいいことであると信じています。シャーロッツビルで殺された白人女性もその一人でした。
実際オバマ政権の頃は、彼が黒人大統領として愛されていたこともありましたが「人種の多様化はより国を豊かにする、アメリカの生きるべき道」だったのです。ところがやはり少数派になることに居心地の悪さを感じた人もいたわけで、その気持ちをくすぐって「多様化は危険」と彼らの「恐れ」を掻き立てたのがトランプ大統領でした。白人の中の不満分子の声を利用したのです。

ところがなぜか政治家やメディアは彼を真っ向から「人種差別主義者」と否定しない、一方でそれに対する批判も強まる一方です。

その影には「フェイクニュース」と叩かれたメディアが、それに対して言い返すことができない。「そんな馬鹿げた言いがかりにまともに答えていたら、自分たちの地位も下げることになってしまうから、とにかくやることやって真実を追求するのみ」というハイロードを取ってきたというのもあります。でもそれ以上に、はっきり言いすぎたために、トランプ大統領とその支持層からの攻撃を恐れているからだと考えられています。

こういうふうに「腰が引けている」のはメディアだけではありません。

中間選挙まで3ヶ月を切った今、特に打倒トランプを掲げる民主党側は臨戦態勢に入らなければならないのに、中道派と左派の足並みは揃いません。その理由もハッキリとトランプ大統領を批判できないからです。中間選挙に関する話はまた次回に譲ります。

 

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