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アメリカ中間選挙まで残りわずか、トランプ共和党が議会の過半数を維持するのか、それとも民主党が多数派を取り戻すのか? そして今どちらが優勢なのか? その結果によって何が変わるのか?
注目すべきなのは、トランプ派とアンチトランプの戦いはヒートアップする一方で、それが選挙自体への関心を史上最高レベルまでに押し上げていることです。そして拮抗する双方の力関係が、日々起こる様々な事件や報道によって、まるで大波のように揺れては戻しているのが今の状況です。
ではまず現状から。
ウォール・ストリートジャーナルとNBCの世論調査では(大統領の支持率を含む)大統領選ではない選挙としては、史上稀にみる関心が集まっていると報告。
それを象徴するのが選挙人登録の数で、ここでお断りしておくとアメリカでは日本のように投票の前にハガキが届く事はない。有権者であっても、事前に選挙人として自分で登録しなければ投票はできない仕組みになっています。
先日テイラー・スイフトのインスタメッセージの直後に若者など10万人が登録したというニュースもあったが、それ以外にも各地で女性や若者、有色人種を中心に登録者が激増。
また期日前投票にも記録的な数の人が押し寄せている。
これだけ熱い中間選挙は50年ぶり、いや史上最高という報道もあるほど。
その焦点にいるのはもちろんトランプ大統領。通常新大統領が選出された二年後の中間選挙は、その大統領への事実上の信任投票となり、大統領が所属する政党が負ける傾向があリまる。
しかし今回はそうはさせないというトランプ派と、アンチトランプとの戦いの度合いがエスカレートしているのです。
今はどうなっているかというと、上院・下院共にトランプ派共和党が多数という状況だから、トランプ大統領はどんなに批判が出てもやりたい放題できている。それをアンチトランプ民主党(特に女性や有色人種)がひっくり返すことができるのか?
現状の予測では、まず上院は改選議席のほとんどが共和党とトランプが強い州なので、民主党が勝てる確率は低いとされています。
一方435議席すべてが改選される下院では、民主党が多数派を取り戻す確率は高い(最高で85%)と予測されている。Time誌によれば、民主党は今共和党が持っている議席のうち23議席取れば多数派に返り咲ける。そのうち、確実と言われているのは8〜12議席。つまり、残りtossup(五分五分)と言われる12〜16議席をめぐる決戦になります。
でも共和党はまだ下院キープにも望みをかけている、その理由は、トランプ支持者など共和党支持者の勢いがここに来て相当強くなって来ていていたから。
もともと経済がいいことが与党共和党の追い風ではあったが、さらに大きかったのはカヴァノー氏の最高裁判事指名の戦いで勝って勢いがついたこと。
今週明けに発表されたトランプ大統領の支持率急上昇、これまでで最高の47%に(不支持49%)なりました。
そしてさらにこのタイミングで突然クローズアップされているのが、中米ホンジュラスからメキシコを経由でアメリカに流入しようとしている数千人の移民です。
これまでもトランプ氏は「自分が大統領でなければ、アメリカは不法移民によって踏み荒らされ、犯罪の巣になってしまうぞ」と言い続けてきましたが、今回は、安全管理のために軍隊を出す、さらに「国家の非常事態」とまで言っている。でもこれっておかしい、これまでもメキシコ国境には大量の移民が押し寄せているのだから、今さらなぜ突然非常事態なのか?と批判する声も多い。
つまりこれは、特に有色人種の移民がアメリカにとって危険なものというイメージを増幅し、 人種偏見を持つ白人支持層の危機感を煽っているというわけ。
さらに「その中には中東からの移民が混じっているかもしれない」という発言もあった。中東移民=テロリストという潜在的な恐れを利用して、「トランプの共和党に投票しないと恐ろしいことが起こる」というメッセージを発信する、いわゆるfear tacticsと指摘されている。
でも考えてみてほしい、本来アメリカは移民の国なのである。彼らが国の土台を作ったという事だけでなく、今も多くの移民が流入を続けているおかげで少子化もせず経済が拡大を続けて行けるんです。
だから多くの人は、たとえ不法であっても移民は国にメリットをもたらすという考え方を持ち、苦労してやって来た移民に対しても同情的。ところがトランプ大統領はその伝統を覆し、アメリカという国の価値観さえも根幹からひっくり返そうとしているという事で、危機感を感じている人は少なくありません。
実はこの移民への対応以外にも、トランプ氏は似たような作戦を他でもやっている。例えば突然リークされた「トランプ政権はトランスジェンダーを否定する」という計画。一体なぜ今?と混乱した方も多いかもしれないが、これもおそらく意図的なもので、やはりLGBTQの権利に反対する保守支持層にアピールし、彼らの票を集めようという作戦とも考えられています。
ところが一方で、トランプ派に取って命取りになりかねない大事件も今週発生しました。
爆発物送付テロ。月曜日から木曜日にかけて、オバマ、クリントン始め、民主党の重鎮からビリオネアのサポーター、ロバート・デニーロ、ケーブルニュース局のCNNまで、トランプ大統領を批判してきたハイプロファイルの人物など10数人にパイプ爆弾入りの封筒が郵送され、それが次々に発見されて、ニューヨークも含め各地で避難騒ぎが起きています。
アンチトランプばかりを狙っているから、犯人はトランプ・サポーター?と予測されていたが、その容疑者Cesar Sayoc(56歳)が木曜日の午後フロリダで拘束されました。
そして(予想通り?)彼のバンのボディにはトランプ大統領の写真入りステッカーがベタベタに貼られていて、彼がトランプ集会に頻繁に顔を出してMAGA(Make America Great Again) ハットをかぶったビジュアルも今メディアに氾濫中。
真っ二つに別れ全く相容れない状態となっているトランプ派とアンチトランプ派の戦いがついにここまでエスカレートしたのか?と多くのアメリカ人は戦々恐々としているだけでなく、トランピズムがこうした暴力を煽るものとして、嫌悪感を覚える人も増えたかもしれません。
一方トランプ大統領は、メディアが大げさに報道しすぎと批判し、トランピーの間では「実は騒ぎわを起こすために民主党側が仕組んだ事」という陰謀説まで出回っています。
それに対し「アンチトランプ派だけでなく、全米の郵便局員や住人をも危険に晒す爆弾テロ(一応けが人はないので未遂としても)に対して、トランプ大統領の対応は甘すぎる」という批判も。日本での報道が少ないのもそのせいと考えて良いかもしれません。
それにしてもこうなると、中間選挙まで11日間の間に、もう何が起こってもおかしくない感じがしてきます。
民主党が下院を取り戻せば、今のようなトランプ氏の勢いは止まる。
逆にトランプ支持者の勢いで共和党が勝てば、2020年第二期トランプ政権誕生はほぼ確実と言う人さえいる・・・
そうなれば、移民の国として、LBGTQを守る自由の国として、世界からも一目置かれてきたアメリカはもう存在しなくなるかもしれない。それほど今回の中間選挙にかかっているものは重いんです。