110418 (updated 110518)
なんと気がつけば中間選挙が明後日の11月6日(火)に! ここで注目すべきポイントをキャッチアップしておきましょう。
<大統領選挙でなく、中間選挙!>
先日日本から来た人と話していたら、「今回のは大統領選挙ではないよね?」と念をおされた。
もちろん違う。今回のは4年ごとにある大統領選挙の間に行われる総選挙で、大統領以外、下院435議席全てと任期満了した上院100議席の約3分の1、州知事選挙、州議会議員選挙などが一挙に行われる。
でも「大統領選挙?」と思われるほど、大統領選挙並みにヒートアップしているのは間違いない。というのは、新大統領選出の後に行われる中間選挙は、その大統領への信任投票の意味合いが強いのだが、今回は特にその色が濃くなっている、といより、共和党が勝てばトランプ勝利で後2年間これまで以上にやりたい放題。逆に民主党が勝てばそのパワーはかなり弱まる、ロシア疑惑やセクハラ疑惑などの追求の手も強まるということで、この選挙結果次第ではアメリカは180度変わってしまうから。
<選挙の鍵を握ると言われるミレニアル世代はトランプ大統領を支持していない>
そして今回その大きな鍵を握っているのは、女性、有色人種、そしてそれ以上にミレニアル世代の若者である。
実はミレニアルズは、選挙のたびにアメリカの選挙のカギを握っていると言われ続けている。
なぜかというととにかく数が多い。アメリカは移民のおかげで少子化してないから。今22〜37歳(場合によって20歳以上)人口の4分の1から3分の1とも言われ、これまでのアメリカの消費の中心だったベビーブーマー(親世代)を抜いて、アメリカ最大の世代グループになっている。
その最大の特色はとにかく人種が多様(白人率は56%、その下のZ世代はもっと下がる)少なくとも文化と消費はこのミレニアル世代が中心に移行しつつあり、10年前のアメリカとは既に全く違う国になっている。(シェア文化、同性婚や、マリファナ合法化など・・・ )
政治的にもこれまでの世代と大きく違い、民主でも共和でもないインディペンデントが37%で最大、続いてリベラル民主33%、保守共和27%。全体的にはリベラルの民主寄りで、もっと左に寄った社会民主主義に近いプログレッシブも多い。ミレニアル世代より下のZ世代も同じ傾向でリベラルより。
トランプ大統領の支持率も20%で、国全体の支持率の半分しかない。
つまり別の言い方をすると、今のトランプ政権のアメリカはミレニアル世代をまったく代表していないことになる。
その理由は、ミレニアル世代が最も関心がある問題、銃規制、健康保険、(アメリカは保険に入れない人が数千万人いる)環境問題、社会問題になっているスチューデントローンなど、これまでは自由な経済活動を優先で企業がやって来てうまく行っていないことを、政府にちゃんとやってもらいたいと考える若者が増えているから。そして多人種である彼らは当然人種間の分断ではなく融和を求めている。
つまり民間主導、銃規制反対、オバマケアの廃止、環境規制の緩和などを掲げ、人種間の分断を助長する言動を繰り返すトランプ&共和党とは考え方が真逆なのだ。
というわけで彼らの6割が支持するのは、トランプ&共和党ではない。リベラル、もっと社会主義に近い社会民主主義またはプログレッシブと呼ばれる候補者。
つまり彼らが大挙して投票していれば、リベラルが多数派になっていておかしくない。
ところが、大統領になっているのはトランプ、議会は上下院とも保守共和党が多数派、その影響で最高裁もカヴァノー判事の指名が決定し、全てが右へ右へと寄って来ている。
その理由はシンプル。若い世代は社会問題に関心が高くソーシャルメディアなどへの書き込みも活発にするのに、投票に行かなかったから。
実はオバマ大統領はミレニアル世代のプッシュがあったから大統領になった。しかしその後の中間選挙には行かなかったから民主は大敗した。そして2016年のトランプ選挙の時は、アンチヒラリーの力が強く力がまとまらなかった。
<ミレニアル世代、今度こそ!の根拠は?>
しかし今回こそ!という掛け声と期待は高い。その根拠は今度の選挙のために記録的な数の若者が選挙人登録をしていることにある。テイラー・スイフトなどセレブが投票を呼びかけている影響も小さくはないはず。
さらに発表されたばかりのハーバード大学に夜最新の世論調査では、18歳〜29歳のうち、40%が投票に行くと答えていて、これは実は衝撃的な数字。1986年以来ほとんどの中間選挙で若者の投票率は2割を切っていた、つまり彼らが本当に投票すれば通常の2倍の投票率になる。いずれにせよ若者世代としては歴史的な投票率になる事が予想されている。
つまり圧倒的にリベラル寄り、アンチトランプの彼らが投票に行けば、全米の選挙でリベラル民主党が大勝、ブルーウェーブ(彼らのシンボルカラーからこういう言い方をする)の大波が現実になることに。
<ミレニアル世代が続々立候補>
実はこうした背景には、ミレニアル世代が自分たちの問題をテーマに立候補するケースがものすごく増えていることがある。特に地方議会の議員への立候補。アメリカは合衆国で州の力が強いから侮れないし、資金が少なくて済むから若い政治家は地方議会からスタートする人が多い。
また、多くはないけれど下院議員にもミレニアルズ候補がいる。
その中でニューヨークから立候補、史上最年少で当選確実なのが、29歳のアレクサンドラ・オカシオ・コルテスさん、プエルトリコ系の有色人種、政治経験ゼロで1年前にはバーのバーテンだった。彼女の公約は国民皆保険と、失業者ゼロをめざす就業の保障。
もうひとり紹介すると、カリフォルニアから立候補のケイティ・ヒルさん31歳、
これまで10年間ホームレスのために働いてきて、バイセクシャルで、レスキューした動物たちのためのファームを経営。格差の解消、健康保険の拡充などをスローガンに保守の牙城をひっくり返す勢い。
これからアメリカはこういう候補がもっと増えて行き、10年後には政治も随分変わっているはず。でもそのためには、今回リベラルの若者がトランプ大統領の共和党を倒さなければ、ミレニアルズの時代は来ないことは間違いない。彼らが動けばアメリカも動くことに。
<勝つのはトランプ派共和党か、アンチのリベラル民主どちら?>
ミレニアル世代に限らず、投票率が上がればリベラル民主が有利になる。(投票率が上がる=女性、若者、有色人種など、多数がリベラル&普段あまり投票しない人が投票するから)
そしてこれまでの期日前投票の記録的な数(5日現在3400万人:ABCテレビ発表)を見ると、通常の中間選挙を大きく上回る投票率が期待される。
3日土曜日の時点で発表された世論調査ではおしなべて、下院での民主党の勝利を予測しているが、上院に関しては拮抗しすぎていて何とも言えないという結果だった。
選挙直前に行われた白人至上主義者による要人の連続爆殺未遂や、11人の犠牲者を出したピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教会)銃撃事件などヘイトクライムに対する、トランプ大統領と共和党の対応のまずさが、ユダヤ系アメリカ人や高学歴の女性有権者に対する最後のブローになったという説も。
しかし世論調査はあくまで調査、投票ブースに入ったアメリカ人が一体どちらを選択するのかは、その時にならないとわからないことは、前回のトランプ選挙の時に痛いほどわかったことでもあるから。