アメリカ中間選挙で堂々と行われる驚くべき組織的投票妨害 Incredible Voter Suppression Cases

110518

トランプかアンチトランプか?

大統領選挙でもないのに、トランプ大統領自身が全米を遊説してまわる異例の事態。
「自分を支持するなら共和党に投票してください」と訴え。
それに対し、これまでほとんど政治にかかわらなかったオバマ前大統領も、
遊説に参加、まるで「トランプ対オバマの大統領選」のような様相。

この中間選挙でもしトランプ大統領の共和党が勝てば、 これまで以上にやりたい放題。
逆に民主党が勝てばそのパワーはかなり弱まる、逆にロシア疑惑などの追求の手も強まるということで、この選挙結果次第でアメリカは180度変わることになるから。

どちらが勝つのか?中間選挙直前の状況、注目されるミレニアル世代の動向などはこちらのポストを読んでいただきたいのですが、このポストでお伝えしたいのはこれ。

ヒートアップする選挙の裏で、これまでなかったほどクローズアップされているのが「組織的投票妨害」。

実はアメリカという国は全体に民主党支持者の方が増えてきている。その多くは女性、有色人種、若者だ。実は彼らは歴史的に投票弱者と言っていいと思う。

例えば選挙は必ず平日(火曜日)若いお母さんは子供を見てくれる人がいなければ投票に行けない。若者は大学に入って別の街に行くとそこで有権者登録をやり直さなければならない(アメリカは日本のように有権者にハガキは来ない、自分で選挙人登録しなければならないのも、投票率が下がる理由になっていると考えられる)。有色人種に至っては、歴史的に彼らの投票を妨害する行為はてんこ盛り(映画「バトラ=」を見たことある方?)

それ以外にも時給で働いていたら仕事を休めないから投票できない、車がなくて投票に行けないという人だって山のようにいる国なのである。そもそも白人男性が支配するアメリカに対し、60年代の公民権運動をきっかけに有色人種も女性ももっと多くの人を政治に取り込もうという動きにはなっているものの、投票弱者にとっては、難しい、大変、めんどくさい選挙という状況は続いている。

ところが今回はこうした女性、有色人種、若者が万難を拜して投票する勢い。投票率が上がって民主党有利になる傾向が見えている。

それに対し各地でびっくりするような組織的な投票妨害が、英語でVoter Suppression 直訳すると投票抑制・弾圧)合法的に行われているのを知ってほしい。

まずジョージア州の知事選、民主党の黒人女性ステーシー・エイブラム。もともと保守が強い南部で共和党の白人男性候補ブライアン・ケンプとデッドヒートを繰り広げている。

ところがこのブライアン・ケンプはジョージア州の州務長官。自分が立候補している選挙を仕切っているのが自分自身というのはおかしいだろうという批判を浴び、立候補するなら州務長官はやめるべきとカーター元大統領らが強く主張している。

そしてこのジョージア州で起こっているのが2つの投票妨害。
まずは新たに提出された選挙人登録申し込み、約5万人以上の分を、「多すぎて処理仕切れない」という理由で処理していなかった。実はこの州には「完全一致法」というのがあり、既に登録された名前や住所と、申し込みの名前や住所などが、コンマ一つ、行間ひとつ違っていたら受け付けないという法律がある。(これは一度違憲とされて廃止されたが、最近再び復活していた)ちなみに選挙人登録に申し込んだ多くは有色人種や初めて投票する若者だったことは想像に難くない。

また、今年アメリカに帰化した3000人に対しては、帰化した証拠となる書類を提出しているにも関わらず、それでも「怪しい」という根拠のない理由でやはり止めていた。さすがにこれは連邦地裁から違憲判決が出たが、他は「もうギリギリすぎて変えると混乱を招く」という理由でそのままになっている。

もっと驚いたのは、ノースダコタ州。
ここでは現職の民主党候補と民主党候補の上院議員がやはりデッドヒート。
ところが選挙直前になって、共和党優勢の州政府が新しい法律を施行した。
投票に際して見せなければならない身分証明書の住所には、ちゃんと所番地が書かれていなければならない。
ん?それって当たり前なのでは?実はノースダコタには大きなネイティブアメリカンの居住地があるが、そこには所番地が存在しない。つまりこの新しい法律はネイティブアメリカンをターゲットにした投票妨害に他ならない。

ちなみに現職の民主党候補ハイディ・ハイトキャンプは2012年ネイティブ・アメリカンの強い支持を受け、3000票の僅差で当選している。

この居住区では新たな住所を記載した新しい身分証明書5000人分を24時間体制で作っているが、全員の分が間に合うかわからないという。(そうなると結果がどうなるか計算できますよね?)

それ以外の州にも、人口密度が少ない地域の投票所を廃止し、車を持っていない黒人が投票に行けなくなったというのもよく聞く。

またさらに近年は、Voter Purge(和訳すると有権者粛清という怖い名前)と呼ばれ、一度選挙人登録しても、例えば2回連続投票しないと無効になる、しかもそれを本人は知らされないというような法律もお目見えしている。(つまり投票に行ったら資格がなかったということが起きる)

このように、特に保守共和党が強い州ではわざと不便に、投票しにくいようにする法律がまだまだあることが推測される。

こうした法律を作る根拠としてよ言われるのは、なりすまし投票などの投票違反が挙げられるが、これも1回の投票につき数十件と推測されるため、やはり投票妨害と考えるしかないのが現状。

しかしこうした投票妨害に屈していては、何も変えることはできない。投票できる人が投票し変えていかなければという動きも強まっている。

日本は黙っていてもハガキがきて、投票妨害もないだろうけれど、一票の格差も不公平もたくさん存在している。自由に投票できるというのは大変な特権であることを、ちょっとでも感じてくれたら嬉しいと思ってこれを書きました。

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