111218(111318 updated)
先週火曜日のアメリカ中間選挙の結果については既に何度かお伝えしていますが、今日はこの結果がアメリカだけでなく、日本を含め世界に何をもたらすのかを考えてみました。
下院435全議席、上院100議席のうち35議席が改選。
下院はアンチトランプ民主党が大幅に票を伸ばして与野党逆転、上院はかろうじて共和党がキープしたが、その他州知事・州議会議員なども含め、全体的にはアンチトランプで戦ってきたリベラル民主党が勝利したとされています。
さらに1週間たって民主の獲得議席数は増え続けている。不在者投票などを加えた結果を加えたから。そしてフロリダの知事、上院選、ジョージア知事選では共和党候補が優勢な中、僅差による票の数え直しも行われている。リベラル民主党のブルーウェーブがアメリカに押し寄せたと言っていいでしょう。
つまり、どんなにコンサバに見積もっても、国民の大半はトランピズムにNGを出したと言って間違いはないと思います。
でもここで素朴な疑問を持つ人もいるかも。これまでもトランプ大統領の支持率は過半数を割っていたのでは?一体何が違うの?
最大の違いは、それが「投票」で証明された事、さらにそれがトランプ大統領周りのパワーバランスを変えた事です。
支持率が低くてもトランプ大統領がある意味一方的にやりたい放題できていたのは、トランプ大統領が当選する以前からすでに、議会は上院も下院も保守共和党(トランプの政党)が多数派だったから。
でも今回、下院は民主党が大躍進して多数派を奪回。結果、大統領と上院は保守の共和党、下院はリベラル民主党というねじれ状態となり、まだ共和党が強いけれど、パワーバランスがある程度回復したことになります。
では具体的には世界にどう影響するのか?
例えば日本人としては特に気になるトランプ大統領の強硬な外交姿勢:イランとの核合意とパリ条約からの脱退、北朝鮮との関係、また、これまでのヨーロッパや日本などの友好国に対して強硬姿勢に出て、逆にロシアのプーチン大統領に近づこうとしていることで、今ギリギリで保っている世界平和のバランスを崩してしまうのではないかという危機感が高まって来ていました。
これは下院が民主党多数になってもすぐには劇的には変わらない。しかし少なくとも今後は民主党のチェックが入るようになるから、今までのような制御不能状態ではなくなると期待されています。
でもこうした政策以上に大きいのは、トランプ大統領のやり方ではダメという危機感を持っている アメリカ人が「多数派」だったと言うことが、「投票で」わかったこと。
これは当のアンチ・トランプ派アメリカ人にとっても、それを見守って来たアメリカ人以外にとっても大きかった。何しろ選挙前には、今回も「隠れトランプ」が出てきて、またトランプ派が全面的に勝ってしまうのでは?と言う恐れもあったから、これで「アメリカは何とかチェック機能を回復しそう」という意味で大きかったと思います。
実はそれを象徴するような出来事が昨日起きています。
昨日は第一次世界大戦が終わって100年、世界平和にとって大きな記念日だった。パリでトランプ大統領も参加した式典が行われたが、この席でフランスのマクロン大統領が発言。現在各地で台頭するナショナリズムを「愛国心への裏切り」と強く否定しました。
トランプ大統領は自らを「ナショナリスト」と自認している。つまり彼に対してクギをさしたのは間違いないでしょう。
ちなみに、Nationalism(ナショナリズム)とPatriotism(パトリオティズム)は日本語にすると両方とも「愛国心」ですが、使われている意味において大きく違います。
Patriotismは郷土愛とか同胞愛というような、いわゆる直訳して元々の愛国心に繋がるニュアンス、
対するNationalismは、同じ愛国心でも、自国の利益再優先(America First)、 自国の方が他国より優れているというようなエゴが含まれて来て、それが欲や他国への羨望、孤立から怒りに繋がっていく。ナチスドイツの白人至上主義者の台頭もナショナリズムと直結していました。それが過去の大戦の原因になってきたとされているのです。
今世界平和への危機感が強まっているのは、各地で台頭するナショナリズム的な動きのせいで、第二次世界大戦前とよく似ているという論調も少なくありません。
そういう意味でも今回の選挙でアメリカ人が少なくとも、ナショナリストを自負するトランプ大統領にNGを出したというのは、世界に大きな希望を与えたと言ってもいいと思います。