021919
アメリカは年明けからのAwardsシーズン、前回はグラミーをプレビューしました。
とにかく男ばかり、年配の白人主導のグラミーを変えるために、若い世代、それも女性や有色人種など多様な投票メンバーを増やしたりしている。でもこれまでは掛け声ばかりで、蓋を開けると主要な賞は安全パイな感じでがっかり、それが今年こそ変わるのか?という話をしました。
結果は・・・変わりました。
主要4部門のうちの2つSong of the year, Record of the year を取ったのがChildish Gambinoの「This Is America」アメリカの今をリアルにキャッチーにラップしたこの曲、(日本ではミュージックビデオのディレクターが日系人だったことでニュースに?)
実はラップがこの2部門で受賞するのはグラミーの歴史始まって以来の快挙。もう遅すぎるくらいだけれど、とにかく歴史を塗り替えた。
そしてAlbum of the yearはKacey Musgrave, Best New ArtistはDua Ripaと女性。これまでグラミーを批判していたクリティックたちも驚いたくらい の結果に。
こうなると今週末のアカデミー賞がどうなるのかが期待されるけれど、もともと、あらゆる性別や人種が共存する世界を反映させて行こうというdiversity, inclusiveな動きは、実はオスカーの方が2〜3歩先を行っている。
数年前から「オスカーが白すぎる」とか「#metoo」ムーブメントが起きて、その結果今年のBest Picture のラインアップも キャッチーでポップなヒット作品から文芸ものまで実に多彩。
まず2つの音楽映画、日本でも大ヒットのクイーンの伝記映画Bohemian Rhapsody、Lady GagaとBradley CooperのA Star Is Born
でもアカデミーなのでやはり文芸もの、社会性が高い作品が有利ということで、歴代最多10部門ノミネートの最有力候補は、アルフォンソ・キュアロン監督の「Roma」が最も受賞の声が高い。1970年代初頭のメキシコシティを舞台に、中流階級の家族と住み込みメイドの暮らしを描く、ポエティックな白黒の映像美も高い評価。
でもスペイン語(これまで英語以外でBest Pictureを取った作品は皆無)しかもアメリカでの公開はNetflixで、劇場で見た人ははほとんどいないという異例中の異例ノミネート。
もしRomaでないとすると有力なのは、スパイク・リー監督のBlackkklansman、白人至上主義者の団体KKKに覆面捜査のために侵入した黒人警官が主役、今再び問題になる人種差別のアメリカを描いてこちらも高い評価。
そうでなければ、やはり人種が重要な役割を果たしているViggo MortensenとMahershara AliのGreen Bookにも期待が。
さらに、やはり初の黒人オンリーキャストによるスーパーヒーロー映画のBlack Pantherがどうなるかも注目。実はスーパーヒーローものがBest Pictureにノミネートされるのも初めて。
色々と初めてづくし、とにかく未来に向かってつき進むオスカーだけに混乱も。
まず司会者、予定していたケビン・ハートが、LGBTQに差別的な過去のSNS発言が発覚して降板。代わりが見つからず今年は思い切って司会者を廃止。
またテレビ中継は毎年必ず放送予定時間をオーバー(これまでの記録は4時間23分)そのため今年は賞のいくつかをCM中にあげてしまおうというアイデアが。これが大反対を受け、結局これまで通りに。
その上ギリギリになってクイーンのパフォーマンスが決定。今年も相当な長丁場に?
まさに混乱するアメリカの縮図のようなオスカー、
でも自分たちの今を忠実に描きだそう、より良い世界に向けてメッセージを出して行こうという姿勢は、トランプ政権誕生以来混迷するアメリカをリアルに描くと同時に、アートの力で何とかして良くして行こうという意気込みに溢れています。そんなオスカーがこれからますます重要な存在になっていくことは間違いなさそう。