041019
先週に引き続き、新しい世代のアメリカのリーダー、ライジングスターを紹介します。
アメリカ大統領選は来年ですが、打倒トランプ!の民主党からは既に18人もの人が立候補しています。
そんな中で、突然トップグループに躍り出てメディアを騒がせているのがこの人。
来年1月に予備選のトップを切るアイオワ州の世論調査で、有望株3位にランクインにもランクイン(1位:バイデン元大統領、出馬確定せず 2位:バーニー・サンダース、2016年ヒラリーと戦った候補)
名前はピート・ブーティジェッジ。
37歳のミレニアル世代、もし当選すれば史上最年少の大統領に。
そしてLGBT(ゲイ)。新婚のハズバンドもいる。
でもそれだけではここまで有名にはなりません。
世間を驚かせたのは、この3ヶ月で集めた政治資金が7億円、しかも大口の寄付ではなく、76000人もの人からの草の根募金。つい最近まで誰も知らなかったミレニアル世代としてはかなり優秀。
ではいったい彼の何がアメリカの有権者にアピールしているのか。
まず彼の経歴から見てみましょう。
学歴はハーバード、オックスフォード卒業でしかもローズ奨学生ときらびやか。在学中からワシントンで政治家の選対事務所で働くなど政治の道を目指す。・・・ここまではよくある経歴。でも他の人と違うのはここから。
2011年故郷のインディアナ州サウスベンドに戻り、一方市長選に出馬して29歳で初当選。現在は2期目を勤めている。
海軍の予備役に登録し、市長就任中の2014年にアフガニスタンで7ヶ月間兵役についた経験も。
そして市長時代の実績が素晴らしい。
彼の地元インディア州サウスベンドというのは人口およそ10万人で典型的なラストベルトの街。1960年代に製造業が廃れた後は荒廃し、人口が減り続ける一方だった。
日本にも地方の人口減少の問題があると思いますが、アメリカは特にグローバル化に直撃された少なくありません。思い出して欲しいのは、トランプ大統領はこういう町の労働者に対して、
炭鉱や製造業を取り戻すという公約で、ブルーカラーの支持を得て当選したこと。
そんな故郷の町の市長になったブーティジェッジは、廃墟のようになった町をインフラに投資することで再生させ、2017年にはわずかだが人口増加させる事に成功。
つまり彼は不可能と言われた街おこしをやってのけた。
具体的には、もう何十年も廃墟だったスチュードベイカー(かつての全米ナンバーワンの車メーカー)の巨大な工場の建物を再生、ちょうど地下を通っていたアメリカを横断する光ファイバーの幹線を利用して新たなハイテク・ハブのインフラを作り、アメリカのみならず世界に向けて企業誘致をスタート。さらに同じ街にある名門ノートルダム大学とコラボしたり、留学生や移民にアプローチし、起業家への中小規模の市ならではの手厚いサポート。大都市に比べてずっと安いコストで実験的なビジネスができるという強みも生かし、新たな街づくりへの足がかりを作り出した。
だからゲイであるとカミングアウトした後の2期目の選挙でも大勝。
そして、もうお分かりかもしれませんが、彼の目標は、トランプに持って行かれたラストベルトの年配白人層をもう一度取り戻すこと。でもトランプ大統領のように過去に戻って石炭や製造業を再生するのではなく、急激に変貌する経済の中で生き残る方策がある、そしてどんな街にもその可能性はある、という事を証明すること。
それを、彼が自分の故郷の町でやったというのは、大きな説得力がある。
そして、彼はトランプ大統領を倒すためには、民主党の伝統的なポリシーに戻るべきと主張している。
かつて民主党は有色人種や貧困アメリカの味方だったのが、いつの間にかネオリベラリズムに代表される富裕層や大企業優遇の党になり、共和党との区別も見えなくなって来ていた。
それを本来の民主党に戻り、庶民の暮らしを守るための医療や教育を政策の前面に掲げるべきというのが彼の考え方。
しかし、彼のゲイというステータスがどう働くかが不安材料ではある。
アメリカは同性婚は合法だが、まだまだ反対の人もいる。ところが最近の調査では、「ゲイが大統領になってOK」が7割いたという結果も。
人間的には37歳とは思えないくらい落ち着いていて、どこか若い頃のオバマ大統領を思い出させる。