050819
ニューヨークのタクシーといえば、名物イエローキャブ。24時間眠らない街で地下鉄と同じライフラインの一つ。ところがその図式がここ数年であっという間に変わりつつある。その理由はUber。
Uberといえばカーシェアの代名詞。
一般のドライバーが自分の車を利用し、アプリで配車するシステムは、今や世界800都市、ユーザーは1億人以上に広がっている。
日本では本来のカーシェア的なウーバーのサービスは始まっていませんが、ウーバージャパンがタクシー配車サービスを行ったり、東京ではウーバーeatsも浸透。
そしてなぜ今日Uberの話をするかというと、実はこのUberが明後日金曜日に株式上場する。そしてUberの株上場のおかげで未来の交通手段だけでなく、地球上にいる私たち全員の働き方も大きく変わってしまう可能性を孕んでいるから。
このUber使ってみると本当によくできていて便利。行き先ははっきり。明朗会計。特に助かるのは、周辺部でバスルートもなく、流しているタクシーもないエリア。旅先の土地勘のない場所など。
おかげでUberはあっというまにユニコーン化。
今回上場すればUberの評価額時価は11兆円となりこれはフォード の2倍。ライドシェアの会社が100年以上の歴史を持つアメリカを代表する車製造会社を上回る時代に。
ところがその一方で困っている人たちがいる。運転手さんたち。
実はこれはUberのドライバーに限らない。特にマンハッタンなどの中心部で、Uberドライバーが突然増えたため、元々いるイエローキャブ、そしてハイヤーサービスと客の取り合いになり、どちらのドライバーも収入が減ってしまっている。何十年も運転してきたドライバーの収入も激減し、自殺するケースまで出ている。
一方ドライバーの収入が減っている理由はそれだけではない。
Uberは株上場直前の報告書類の中で、「業績を上げるためにはドライバーの賃金を減らさざるを得ない」とはっきり公言している。
さらにUberは「ギグ・エコノミー」つまりドライバーはフリーランスだから健康保険なども適用されないという、ドライバーにとっては不利な仕組みになっている。
これにはドライバーさんたちの怒りが爆発。この現状を世界に訴えようと今日水曜日、ニューヨーク、サンフランシスコなどの大都市のドライバーが連携してストライキを決行した。
ちなみにUberは去年の第一四半期には1000億円以上の損失を出している。つまり赤字。その理由は、損をしてでも世界にユーザーのシェアを増やす事に専心しているから。
どういう意味かというと、アマゾンが人々のモノを買う方法を変えてしまったように、世界の人の車に関するライフスタイルを変えてしまう事。
つまり「車は持たなくていい、シェアするものだ。」というのが常識になった時、Uberはアマゾンになる。
実は今すでにもうその兆候は出ている。ミレニアル世代以下の多くは車を買わない、運転免許を取る人もどんどん減ってきている。
そしてUberが赤字のもう一つの理由は、自動運転車の開発に多額のお金をつぎ込んでいるから。日本のSoftbankなどもかなり投資している。つまり今は人間のドライバーだが、Uberのビジネスモデルは最初から自動運転車を視野に入れているということ。
Uberがアマゾン化した未来は、車はシェアするもの、ドライバーは非正規雇用、その彼らもやがてAIに取って代わられるという時代。
これは私たちの働き方にも大いに影響してくるはず。
しかしそのために払う犠牲をどうするのか、これから皆で考えなければならない大変重要な課題なのは間違いありません。
自殺者まで出る事態を重く見たニューヨーク市は全米に先駆け、Uberドライバーの数の制限に乗り出し、さらにドライバーの一定額の収入の保証も義務付けたがこれはかなりの例外というのが現状です。