073019
先週、 全米チャート連続1位記録タイに、Lil Nas Xの「Old Town Road」が並んだという話をしました。そして今週は予想通り! 17週連続ナンバーワン記録の単独トップに躍り出ました。
どれだけはやっているか・・・ラジオでもテレビでもビーチでもお店でも、クラブでもダンスリミックスが。近所の子供が歌いながら歩いているほど。
なぜこんなに流行っているのか・・・色々理由がありますが、どれもたった今のアメリカ、そして世界のミレニアル世代、Z世代の姿をハッキリと表している。つまり「Old Town Road」を知れば世界が見えてくる。(ちなみにヨーロッパ、オーストラリアなどでも軒並みナンバーワン)
その最大の理由はもちろんまずネット。
前回もお伝えした通り、この曲はまずネットブレイクした。当時10代だった全く無名のLil Nax Xが、TikTok・・・ アメリカでも10代に爆発的人気のSNSに自分で色々な面白Memeを投稿して話題になったところからスタート。それをみんなが真似していろんなミームを作ってあっという間に拡散。
でもすでにこの曲は成り立ちからネットで始まっている、というのも話しましたね。
オランダにいるやはり10代の無名のビートメーカー(ビートを作る人)Young Kioが、ネットに投稿したビートをLil Nas Xが気に入って、全く会わずにコラボした。
そのビートメーカーが投稿したのはBeatstarsというやはりオランダのサイトで、音楽づくりの新しい試みとしても注目。誰でも投稿できて、そのビートは誰でも使えるが、最低限のフィー($30)を払う、売れたらその分の著作権料がビートメーカーに支払われる仕組みに。
でもいくらネットを使っても、曲が良くなければ売れない。
この曲はヒップホップのビートにカントリーを乗せるという、誰も聞いたことのない全く新しいサウンドで、しかもオリジナルは2分に満たない(1:53)なんじゃこれ!?
実はアメリカのポップソングはどんどん短くなっている。理由はミレニアル世代やZ世代は音楽はストリーミングで聞くから。Spotifyではトラックの再生回数でアーティストにお金を支払うので、短い方がたくさん聞かれて儲かる。もう一つ、やはりネットの影響で若者のattention span(集中力が持続する時間)はどんどん短くなっている。(Tiktokも15秒)
そして最後に、論争がメジャーになるきっかけに。
この曲は当初カントリーチャートにも入っていたのが「カントリーではない」と外されたため、「そんな事はない」と大論争に。そこでカントリーのスーパースターBilly Ray Cyrusが手をあげて2人でリミックス。それが今17週連続ナンバーワンになっている。
実はこれも今のアメリカの世相を大きく反映している。
今アメリカでは人種間の分断が大きな問題になっている。(この番組でもよく取り上げている、トランプ大統領の様々な発言も大きい)にも関わらず(むしろ、だからこそ)カントリーといえば白人、黒人のヒップホップ、この二つが一緒になった曲がアメリカの2019年夏を盛り上げているのはとても象徴的。
しかもLil Nas Xはカミングアウトしたばかり!マッチョなイメージが重要なヒップホップでゲイって非常に稀。
やろうと思えば人種を(国境も)超えて、これだけクリエイティブなことを(お金も)生むことができる、人種間で争うより皆でうまくやっていきたいという、アメリカの若者の潜在意識からの叫びにも聞こえる。
そういう意味でもOld Town Roadは歴史上大変重要な曲だと思う。