日系アメリカ人収容所が舞台のドラマがヒットする理由 Why Is “The Terror Infamy” One Of The Most Talked About Dramas In This Season?

(090319 JFN On The Planetで話しきれなかった内容を盛り込んでまとめています。)

日系人の歴史と日本の幽霊をモチーフにしたテレビドラマ、「The Terror “ Infamy”(屈辱)」

8月にスタートしたAMCのホラードラマ、「The Terror」のシーズン2が”Infamy”

最大の話題は、このホラーストーリーが日本の怪談をモチーフにしているだけでなく、その舞台がアメリカの忘れられた歴史、第二次世界大戦中の日系アメリカ人強制収容所だということ。

そして、忘れられた歴史が浮上してきた背景には、たった今、世界で起こっている深刻な問題がある、というお話です。

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アメリカ人もほとんどが知らない、日系アメリカ人強制収容所

1941年12月8日日本によるハワイ真珠湾の攻撃で日米間の戦争が始まりました。

Infamy=屈辱という言葉、
ルーズベルト大統領の日本への宣戦布告の中で、
「この日がアメリカにとって永遠に屈辱的な日になる」という言い方をしています。

それからおよそ2ヶ月後の1942年2月19日、ルーズベルト大統領が出した大統領令により、12万人の日系アメリカ人が拘束され、権利を剥奪され財産も没収されて、強制収容所に収容されました。

そのほとんどは日系2世から4世のアメリカ国籍を持つアメリカ人
敵性国日本の血を引く者は、たとえアメリカ人であっても危険とされたのです。
それまで母国を攻撃されたことは一度もなかったアメリカ人にとって
真珠湾攻撃は大変なショックだとはいえ、
同じ「アメリカ人」を、全米10箇所の収容所・・・馬小屋や暖房もないバラックに強制収容し、4年近くにわたり劣悪な環境での生活を強要したことは、
人種差別として強い批判を浴びました。

しかし同時にこの事実は、アメリカの負の遺産として、
これまでほとんどのアメリカ人が知ることはありませんでした。
同時に日系アメリカ人も沈黙を守ってきました。

誰にも関心を持たれず、ドラマや映画で取り上げられることもほとんどなく、
取り上げられたとしても、事実が大幅に捻じ曲げられたものだったと言います。

日系人強制収容所が正確に描かれた初めてのメジャーなドラマ

あのリドリー・スコット(エイリアン・ブレードランナー・グラディエーター他)をエグゼクティブ・プロデューサーに、「The Terror、Infamy」は、キャストとスタッフのほとんどにアジア系アメリカ人を起用。
歴史に詳しい日系人をコンサルタントに詳細まで忠実に再現しただけでなく、
主役のDerek Mioの祖父は強制収容された経験者だったり、
また、出演だけでなくこのドラマの実現に尽力した、スター俳優George Takeiジョージ・タケイ(初代スタートレックのスールー役で有名)は、強制収容所で生まれた経験を持っていることなどが、さらなるリアリティを生み出しています。

ではこれまで誰にも関心を払われなかった日系アメリカ人強制収容所が、
なぜ急に注目を集めるようになったのでしょうか?

2019年に注目された理由は今日の移民問題

トランプ政権の厳しい移民法により、
メキシコ国境では中米からの多くの不法移民や亡命希望者が、
劣悪な環境で拘束され、子供達は親から引き離されている状況が広く報道される中、
多くの有識者がこの状況を日系アメリカ人の強制収容所に例えて強く批判するようになりました。
例えば元ファーストレディーのローラ・ブッシュ夫人もその1人。

一方日系社会は2017年2月29日の大統領令から75年を記念して、
改めてこの問題を社会に提起。
今年、元強制収容所に不法移民の子供達を収容する計画が持ち上がると、
反対運動を起こし、この計画は中止されました。

しかし移民問題に未だ解決のめどは立たないばかりか、
ヨーロッパをはじめ世界の国で、移民や少数民族に対する差別や虐待が止まず、
肌の色や宗教の違いで相手を判断し、憎んだり、差別、攻撃する風潮が強まる中で、
日系アメリカ人に対して行われたこの事実をもう一度知り、
同じことをもう1度繰り返さないための教訓にしなければという動きも高まっている。
そういう中でヒットしているのが、この「The Terror, Infamy」なのです。それにしても幽霊よりも恐ろしいのは人間の行いだというメッセージも込められている気がします。

もう一つ興味深いのは、こうしたアメリカ負の遺産を自分たちで検証して行こうという態度です。

アメリカの負の遺産に目を向ける若い世代

特に今の若い10代であるZ世代は、前の世代のようにアメリカ人であることに強い誇りは持っていないと言われています。最近行われた調査では「アメリカ人であることに強いプライドを持っている」というZ世代は3人に1人で、アメリカ人全体の63%に比べ半分に減り、アメリカ人が世界にポジティブな影響を与えていると考えている人の数も減っています。この背景にはZ世代が移民2〜3世などで高度に多様化し、アメリカ以外の様々な国の文化や価値観の影響を受けていること、インターネットによりこれまでアクセスできなかった情報にアクセスできるようになったこと、その結果、アメリカの経済や国としてのパワーが衰えていると感じていることもあるようです。今の若い世代は以前のアメリカ人よりずっと自省的と言ってもいいかもしれません。

色々な意味でアメリカが変貌している、その象徴がこのドラマと言ってもいいでしょう。

こうした動きからは、日本にいる日本人が学べることも少なくないかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

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