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11月になりました。ということは来年のアメリカ大統領選まで1年を切りました。(2020年11月3日)
2期目の当選を目指すトランプ大統領の対抗馬、民主党候補を決める予備選挙が始まる1月まであと3ヶ月。(2020年2月3日)
そんな中、トランプ大統領の弾劾裁判への準備が正式に始まり、このまま行くと現職大統領の弾劾裁判が選挙運動と同時に行われることに。
対する民主党は、林立していた候補者がようやくトップ四人に絞られつつあるものの、未だに決め手に欠けるということで、新たな候補者を求める声も・・・・まだまだ混乱は続きそう。
そんな中、こうした混乱に拍車をかけている現象の話を今日はしたいと思います。
キャンセル・カルチャー
日本でもセレブの行動や言動がネットで徹底的に叩かれる傾向あると思いますが、超人気youtuberの行動が批判され一気に数百万人がフォローをやめたり、トランプ大統領に寄付した企業や店などがボイコットにあったり、あらゆる人や団体に対し、ある理由で世論が沸騰し「キャンセル」されてしまうこと。
日本でもよく言われる、他人への許容のなさも一つの原因と思いますが、ネット、ソーシャルメディアそのものが、そういう意見を簡単に増幅させてしまう仕組みになっている事が大きい。
これが政治家を潰すための武器に使われた最新の例が、カリフォルニア選出のケイティ・ヒル下院議員の辞任。
ケイティは民主党の若手女性議員のホープの1人として、去年共和党の現職を破って初当選。バイセクシャルである事を公表して当選したことでも全米で大きな話題に。
ところが先週突然辞任を発表。その理由はセックス・スキャンダル。
10月下旬、極右のネットニュースブログRed Stateに突然、「彼女は自分の選対事務所の女性スタッフとセックスしていた」そして、その女性スタッフと一緒にケイティの全裸の写真が掲載され大騒ぎに。
議員候補が部下であるスタッフと関係を持つのはよろしくないということで、ケイティは責任を取って辞任することになったが、本当の理由はこの全裸写真だったとされている。
報道ではケイティの別居中の夫がはらいせにリークしたと言われるいわゆる「リベンジ・ポルノ」で、それが極右のメディアに流れたと見られるが、
実はリークされたヌード写真はもっとたくさんあると言われている。CNNによれば、共和党の諜報部員は700種類もの写真を持っていて、それを順番にリークして攻撃する事を計画していたという。
もちろん部下と性的関係を持った事はよくなかったかもしれないが、でも700枚ものヌード写真を公開しようとする方がずっと倫理に反しているだけでなく、女性に対する虐待ではないのか?
ちなみにリベンジ・ポルノはカリフォルニア州含め多くの州で違法だが、この場合は実際に誰を罰するのか?
ケイティは辞任に際して「自分は女性蔑視の犠牲になった」と語ったが、若くセクシーでバイセクシャル女性議員だからこそキャンセルカルチャーを利用されて潰されたと考えて当然かもしれない。
右寄りの中道ニュースサイトThe Hillは、#metoo時代になり、議会での上司と部下の性的関係は禁止された。ところが表には出ないが下院だけで250件のセクハラ示談が行われている。それ以外に男性議員と女性スタッフの同意の上での性的関係も珍しくない事を指摘している。
そんな中でやはりケイティへの攻撃は、ダブルスタンダード、女性蔑視に見える。つまり女性に対しては男性よりより高い倫理や行動を求められ、それを破ると男性以上に大きな罰が与えられる、という事。
ここで危険なのは、こうしたバックグラウンドを知らずに、スキャンダルに即座に反応してそれを拡散してしまう事。それがキャンセルカルチャーを増幅させ、真実が見えなくなって、フェイクが横行する原因にもなってしまう。
でも、このソーシャルメディアの時代にそれを防ぐのもとても難しい。そして一度世界に広がってしまった裸の写真と同様、ネガティブなインパクトを取り戻すのもまず不可能。
どんな内容でも結果的に先に言ったもの勝ちの世の中になってしまっているのが本当に恐ろしい。