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アメリカではポッドキャストが大ブーム。ニュースウェブサイトVultureによれば、この春の時点で、66万件のポッドキャストの2800万エピソードを6200万人が聞いている。
アメリカ人のほぼ半数がポッドキャストのリスナーで、人気番組の一つ「Serial」のダウンロード回数はのべ3億4千万回。そしてこの春スポッティファイが、ポッドキャスト制作会社を250億円で買収。
いったいいつの間に!? というのが聞いている当のアメリカ人の本音。そのくらいここ10年間でじわじわきて、気づいて見たら10年前の3倍に。
そして気づいてみたら、セレブからファッションブランドから一般人まで、あらゆる人やあらゆるビジネスがポッドキャストをやっている。
誰が仕掛けたわけでもない。ではいったい何が起きたのか?
ポッドキャストという言葉が世に出たのは今から15年前くらい。Itunesで音楽ダウンロードができるようになった頃、そのオマケみたいな感覚だった。当時は作っても儲かるわけでもなし、一体誰が聞くの? というメディアだった。
ところがここ10年で3倍になったのは、これもストリーミングと関係がある。特にミレニアル世代の若者を中心に、音楽やラジオはスマホで聞くようになった。もっと違うもの新しいものという時に、Youtubeもいいんだけど、通勤時などは音だけで聞くほうが都合がいい。
同じ頃soundcloudなどオーディオコンテンツをシェアできるサービスも浸透して、みんながポッドキャストにトライし始めた。
どうしても映像中心になるyoutubeと違って、音だけだともっと自由に気ままに、場合によってはディープな話ができるし、映像と違って時間もお金もかからない。
ラジオやテレビのプロたちも参入してきて、本格的なドラマやドキュメンタリーを作り始めた。
もともとたくさんの人に聞かせて儲けようと思って作っていないから、本当に作りたいもの、喋りたい事しか喋っていないし本音満載、偏った趣味や、役に立つ医療の情報など、ウルトラニッチなコンテンツばかり。
それが、ダイバース(多様)な今のミレニアル世代、Z世代にはまった。
それにしてもCG満載の映画を見てビジュアルでコミュニケートする若い世代に、なぜ音だけの、ある意味地味なコンテンツがウケているのか?それは逆で、地味でシンプルだからこそ。
疲れて帰宅する通勤時、寝る前、人の声が耳元でおしゃべりしてくれる、囁いてくれる嘘のない誠実なメディアというラジオのスピリットを受け継いている。
そして興味深いのは、facebookやインスタなどソーシャルメディアを見た後に残る、時間を潰してしまったという罪悪感やプレッシャー、取り残された感など、ちょっと嫌な感じがまったく残らないところがいいのだという。
ちなみに今話題なのは、ポッドキャストの中でも最も人気の犯罪実話モノで、「Break In The Case」というポッドキャスト。
NYPD(ニューヨーク市警)がプロデュース。ナレーターも現職の警部(女性)過去に起こった難事件を、当時の警官や目撃者が証言しストーリーが展開していく。効果音や音楽も渋い感じですごくかっこいい。NYPDが狙っている通り警察の活動への理解を深め、イメージアップにもなっている。