112519
-
トランプ大統領の弾劾公聴会で12人の証人によるトランプ氏に不利な証言が続出。
-
ところが世論はほとんど動いていない。
-
トランプ支持、不支持はもう何があっても変わらないという認識が広がっている。
-
あまりに衝撃的な事ばかり起きてきた3年間に感覚がマヒしてしまったとも言える。
過去2週間トランプ大統領の弾劾公聴会が下院情報委員会で行われ、証人からの衝撃的な発言が連日のトップニュースになっていました。
・・・と聞いて、またやってるの、まだやってるの?と感じたかもしれません。
実は同じ気持ちのアメリカ人大変多いです。
ご存知のように弾劾の理由は、トランプ政権からの匿名の内部告発。
「トランプ大統領が、ウクライナ政府に対し400億円もの軍事支援を凍結。その凍結を解く見返りとしてウクライナに対して、政敵への捜査を条件にしたもので、これは大統領自身が政治的なメリットを得るために行った汚職である。」
というものでした。
この2週間の間にこれを裏付ける証言が12人の証人から次々に飛び出し、これを主導したとされるトランプ氏の個人弁護士ジュリアーニ元NY市長に加え、ポンペヨ国務長官、ペンス副大統領の関与までが明るみに出てきました。
12人の証人のほとんどは、何代もの大統領に仕えてきたウクライナやロシア外交のトップ・プロフェッショナル。彼らの証言にはどれも整合性があり、トランプ氏にとっては非常に不利なもので、弾劾に十分な証拠が揃ったように見えます。ところが事はそう簡単にはいきません。
これに対しトランプ大統領と共和党議員らは、証人の信ぴょう性などを疑う発言をちらつかせながら、弾劾は下院多数派の民主党がトランプ氏を追い落とそうとする行為で、トランプ氏がやった事は 弾劾には十分でないと抵抗しています。
さらに、来年の選挙で再選を目指す共和党議員らが、トランプ氏に刃向かう事はリスクが大きすぎると感じている現状もあります。
ところが驚いたことに、トランプ氏自身は軍事援助を凍結したことを堂々と認める発言をしています。
凍結の理由は、2016年大統領選へ介入したのが、ロシアではなくウクライナだったことを、ウクライナ政府に捜査させるためだったと主張し、当然の事をしたまでと言い切っています。しかし弾劾証言では、ウクライナの選挙への関与は根拠のない虚構であり、むしろロシア政府によるプロパガンダであると証言されているのです。
しかしもっと驚ろかされたのは、これだけ衝撃的な事実が次々に出ているのに、今のところ弾劾を支持する人の数がほとんど増えていない事です。
トランプ氏と共和党支持者のほとんどは弾劾に反対、民主党支持者は逆でほとんどが賛成、
全体的には40%代で弾劾を支持する人が支持しない人をわずかに上回る程度。
ところが同じ世論調査で、過半数のアメリカ人は「トランプ大統領は間違った事をした」と認識している、でも弾劾されるべきではないと考える人が結構な数いることになります。
つまり、弾劾賛成派にとっては、前回のロシア疑惑も今回のウクライナ疑惑でももう最初からトランプ氏は有罪だろうと考えている。逆に反対派から見れば、トランプ氏に対しまたよく性懲りも無く・・という事になり、
どうやら両者ともちょっとやそっとの事ではその信念は変わらない。
ロシア疑惑含め、あまりに衝撃的な事ばかり起きてきた3年間に感覚がマヒしてしまったとも、その逆に、全てにうんざりしてしまったとも言えるかもしれません。
この世論がどれほど大切かという事は以前もお伝えしました。弾劾は司法の裁判とは違い政治的なものですから、世論の影響を大きく受けます。
今後どこかのタイミングで、下院で弾劾訴追の投票が行われるわけですが、下院は民主党が多数派なので、弾劾訴追される形で上院に渡されるでしょう。しかし上院は共和党がわずかに多数派ですから、最終的には上院の弾劾裁判で無罪になる可能性の方がずっと高い。
そのバランスを崩すには、トランプ氏の弾劾に国民の多数が賛成するなど世論が沸騰しなければなりません。そして今回の状況を見る限り、よほど世界を揺るがすような大事件でも起きなければ、そのバランスは崩れそうにありません
ではもし無罪になったらその勢いで二期目に当選するのか、それとも憤った民主党支持者が結束してトランプ氏を倒すのか、それもいまだに全く見えていないというのが現状です。
その大統領選まで、既に1年を切っています。