012120
アメリカ俳優組合Screen Actors Guild Awardsの授賞式が日曜日に行われ、全米にテレビ中継されました。そこで韓国映画「Parasite」が歴史を塗り替えました。
俳優組合の賞は、全米の俳優組合のメンバーが投票して、最も優秀な俳優とアンサンブルに与えられる賞で、アカデミー賞とも投票メンバーが大きく被っていることから、アカデミーへの影響が大と言われる重要な賞です。
その最高賞ベスト・アンサンブル賞に「Parasite」が選ばれました。
外国映画として初めての快挙!
何しろ「Irishman」や「Once Upon A Time In Hollywood」などのハリウッドスター・アンサンブルを押さえての受賞だから相当な衝撃。
「Parasite」はすでにアカデミー賞にも ノミネートされ、「1917」との一騎打ちになるのではないかという声さえあるほど。
なぜこんなにアメリカ人のハートをつかんでしまったのか?
アメリカ人は字幕を読むのに日本人以上に慣れてない、ところが一緒に見ていたアメリカ人に「字幕を読んでいるのを忘れた」と言わせるまでとにかく最初から最後まで衝撃的な展開の連続。
そしてアメリカと韓国、場所は違えど人間として共鳴する部分。それは「Parasite」をやはりオスカーノミネート「Joker」と比較してみるとわかる。
この二つの映画はよく似ている。貧困や格差、階級差といった社会のひずみの犠牲になった人々、それが犯罪や犯罪者を生み出していくプロセスを描いている 。
「Joker」の方は凶暴な犯罪者になっていくホアキン・フェニックスのJokerがものすごくて、彼が主演男優賞を総なめにしているのはよくわかる。
でもトータルに映画として見た場合、「Joker」の舞台が1970年代でちょっと昔だったり、登場するのが白人ばかりだったりして、今ますます多様化している”ダイバース”なアメリカのリアリティとずれるところもある。
ところが「Parasite」の主役は現代の普通の人たち、何というか自分も油断すると破綻してしまいそうな身近なところにリアリティがある。
また舞台が韓国というのも今のアジアブームというトレンドにあっている。
何より、世界中あらゆる場所にある 貧困や格差のリアリティを、時にはダークなユーモアやバイオレンスも含めて、五感に迫ってくる手法で見せるのがすごい。
今アメリカでも広がる一方の格差が大きな問題になっているが、実は今のミレニアル世代(2〜30代)の所得は、親世代が同じ年齢だった時の所得よりも2割も下がっているという数字が。
つまりアメリカの若者は、戦後最も貧しい世代に転落してしまっている。
さらに激しいインフレで、アメリカ全体の8割がPaycheck to paycheck つまり1ヶ月失業しただけで、家賃が払えなくてホームレスに転落する危険があるとも言われているほど。
またアメリカの平均寿命は3年連続で下がっていて、これも貧困や格差が原因と指摘する声が大きい。そんな中で、アメリカンドリームは終わったのではないか?という声すらあるほど。・こうした時代の気分に「Parasite」はとてもあっている気がする。
とにかく今回の俳優組合での受賞で、アカデミー賞のレースはますます面白くなってきた!