020420
毎週末ビッグイベントに沸くアメリカ、
グラミーに続き、先週末はスーパーボウル・サンデー。1億人以上が見るという国民的イベント。そしてゲームに興味がない人でもみたいのがハーフタイムショー。過去40年間出演したのは
過去出演したのは、マイケル・ジャクソンからローリングストーンズからビヨンセからレディ・ガガまでオールスター全員!そんな歴代ショーの中で、実は今回のは特に新たな歴史を刻むものだった。
そして、これがもしかする東京オリンピックとちょっとだけ関係してくるかもしれない、と敢えて言ってしまいます。
今年のパフォーマーはJLoことジェニファー・ロペスとShakira
ものすごいパフォーマンス、二人の歌もダンスも、ステージを埋めつくすダンサーも、セットも照明も、花火も、もう見ていてクラクラしてくるほど刺激的。
中でもJLoのコスチューム、ベルサーチだったそうなんですが、
あれ、お尻ちょっと見えてます?
その瞬間一緒に見ていたアメリカ人ソファから立ち上がり「ちょっと!スーパーボウルはファミリーイベントじゃないの!?」
確かに衣装もダンスもちょっとセクシーすぎるという批判もあったが、50歳JLoのスーパースターパワーに脱帽という意見も。
でも実はこの絢爛豪華でセクシーなショーにみんなが頭クラクラしている中に、色々なメッセージが隠されていたんじゃないか、という憶測がショーが終わった後に広がっています。
その前に伏線として知っていてほしいのは、今回のスーパーボウルはマイアミが会場。
アメリカの最南部マイアミはカリブ海の島々や中南米からの移民が集まる国際都市。だからこそ今回のパフォーマーは、プエルトリコにルーツを持つJLoとコロンビア人のShakiraが選ばれた。(ラティーナの出演は初めて)
だからパフォーマンスもラテンならではハデハデできたのが、
突然モノトーンに場面転換・・・Jloの娘のエメちゃんと子供達が出てきて一緒に歌い始めると、画面に鳥かごのようなオブジェがたくさん、その中には子供達が・・・
檻に閉じ込められた子供達、実はこれはトランプ政権がメキシコ国境で行なっている厳しい移民政策(親から引き離されて収容される子供達)への抗議メッセージでは?
またJLoは「Born In The USA」を歌っている最中にプエルトリコの旗を降ったけれど、これはやはり ハリケーンで壊滅的な被害を受けたプエルトリコに対し、同じアメリカ国内なのにもかかわらず十分な支援をしていないことに対する無言の抗議と受け取られています。
ハーフタイムショー自体にこうした政治的に受け取られるメッセージが持ち込まれたことは初めて。
その背景には、これまでも何度も話しているように、エンタメだからといって、アメリカだけでなく世界中で起こっている移民や人種問題を無視できなくなったという背景があります。
たとえスポーツイベントであっても、こうした社会問題をちゃんと認識していますよ、というメッセージを出すことが、特に社会意識が高い若い世代に支持されるためには必要不可欠になって来ているということです。
今回はそれを実験的にやったのかもしれません。というのは去年夏NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のパートナーになったのがあのヒップホップ・スターのJay-Zだからです。Jay-ZはRoc Nationという音楽のマネージメント会社を持ち、JLo、シャキーラ、そしてグラミーの司会をしたアリシア・キーズもクライアント。
所属アーティストの7割は子供時代を貧困の中で過ごした。そんな彼らと共に音楽のパワーを社会を良くするために生かすというのがこの会社の最も重要なミッションです。
一方のNFLは選手のほとんどがマイノリティなのにオーナーやコーチのほとんどが白人という、ダイバーシティに関する批判を受け続けている。それにさらに影を落としているのは、2016年サンフランシスコ49ersのクォーターバック、コリン・キャパニック選手の問題。黒人への警官の暴力に抗議してゲーム前の国歌斉唱時に地面に膝をついたことが、国家やスポーツへの尊敬を欠くとされ、事実上NFLでプレイできなくなってしまった。このことで世論が沸騰し、リアーナがスーパーボウルでのパフォーマンスを断るなどのバックラッシュがあったのも記憶に新しい。
こうした悪いイメージを変えるために、NFLは黒人のエンタメだけでなくビジネスを代表するJay-Zとタッグを組むことで、メッセージを出そうとしていると考えられています。
ちなみにシャキーラの舌をベロベロさせるパフォーマンス、ネット上ではいっぱいmemeが出ましたけど、これはアラブ系の人が喜びを表す時に舌をこうするそうなんです。シャキーラのおじいちゃんとおばあちゃんはレバノン人なので、それに敬意を表した。そしてアラブ人でもイスラム教徒でもみんなが一緒に楽しめる時間にしたかったということのよう。でもその裏を返すと、トランプ政権のイスラム系の国の人への入国制限を批判しているという読み取り方もできる。
エンタメなのに政治の話になってやだなと思う人も多いかもしれませんが、今はそういう時代だということをわかって欲しい。
折しもスーパーボウル翌日から大統領選の予備選が始まり、大統領の弾劾裁判も終盤を迎えている。2020年というのはそういう年なのです。だからこそ声を出せる人が出さなければという、アーティストの使命感も高まる一方、彼らが体を張ってやってることも忘れないで欲しいと思います。
ちなみに一つお伝えしておきたいのは、この夏日本でも世界最大のスポーツイベントがありますが、ここで国際オリンピック委員会は、政治的に中立であるために、選手個人の政治的なメッセージは禁止するとしています。