先週の番組で話した内容ですが記録としてここに残して起きます。
04-21-20
この音は、ニューヨークで毎晩7時になると聞こえてきます。
籠っているニューヨーカーがアパートの窓を開けて、拍手したり叫んだり鍋を叩いたり、これはニューヨークの病院で働く看護師や医師など医療関係者への拍手喝采で、3月27日から毎晩続いています。なぜなら、ニューヨーカーは医療関係者が命の危険を冒して働いている事を知っているからです。
ニューヨークの医療崩壊をあらゆるメディアが取り上げ始めたのが1ヶ月くらい前、
病棟が足りず廊下にまで置かれたベッド、走り回る医師や看護師、彼らを感染から守るPPEと呼ばれるマスクやガウン、シールドが足りず、感染の危険があるのに使い回さなければならない 。仕方なくゴミ袋を着た看護師の写真も報道されました。
実は私には仲のいい看護師の友人がいるので、もっと前からこの状況は知っていて、
彼女は職場から、まるで戦場のようで水を飲む暇もないという内容のテキストを送って来ていました。これは相当のことだと本当に心配しました。
彼女との数週間にわたるテキストの交換と電話での会話を元に、医療崩壊とは本当はどういうものなのか、日本の人に知ってもらいたい。日本がそうならないようにと祈るような気持ちで記事を書いて、プレジデントオンラインというウェブメディアに先週水曜日に出ました。
ところがここ数日日本から1ヶ月前のNYと全く同じ話を聞くようになって来ました。
そして17日付けNHKのニュース記事で、看護師協会が厚生労働省に対し看護師への危険手当を求めたということを知りました。医師より看護師の方が危険だから、ということですがこれはまさにその通りです。
医師が患者に接近するのは診察や緊急時なのに対し、看護師は常に患者と接している。私の友人はコロナICU(集中治療室)の看護師ですが、点滴を一人で5個も10個もつけている、人工呼吸器もつけている患者の部屋には頻繁に出入りしてチェックしたり体位を変えるなどしなければならない。
N95という感染症に必須のマスクは本来ならマスクはその度に変えるべきなのに、全く足りなくなってしまったのは、感染症専門病棟でもない病院に突然突然多くの重症者が殺到したから。一時はN95はずっとつけたままその上から普通のマスクを重ねて取り替えていたそうです。とにかく何もかもが患者の激増に追いつかない。ちょうどその頃彼女の同僚の看護師さんが、院内感染でニューヨークで最初の犠牲になりました。
マスクを含むPPE(Personal Protection Equipment)はこの病院では数日で解消されたそうですが、まだまだ全米の病院では不足が起きていると聞いています。そしていくらPPEをつけていても感染のリスクが全くなくなる訳ではありません。
でもコロナの危険はコロナだけではない事を皆さん知っていますか?
ニューヨークの病院のICUは一時はほぼ全てコロナICUになっていました。ER(緊急救命室)も受け入れるのはほとんどがコロナ患者。
そうするとどうなるか?
他の病人が院内感染を恐れて病院にいけなくなる。病院側でも高齢者で既往症を持つ人、がん患者なども。感染リスクが高すぎて受け入れられなくなってしまっている。そのために命を落とした人も既にいます。
皆さんの親やおばあちゃんおじいちゃんが命の危険があるのに病院に行けなくなるかもしれない?
医療崩壊というのはそういうことなんです。
これで医療者が感染して倒れてしまったらどうするのか?
東京都医師会の尾﨑治夫会長は会見で17日(2020年4月)、「自粛要請(都の休業要請)から2週間後の25日まで私たちは頑張っていきます。でもその後、感染者の流れが減っていかないと、これ以上東京はもちません。自粛をお願いします。人と人との接触をやめていただきたい」と強く訴えたというニュースも見ました。その後どうなっているのか本当に気になっています。
みなさんも自分だけ大丈夫と思っている間に、誰かに感染させているかもしれない。そうすると医療関係者はもちろん、高齢者や他の病気の人やその家族、つまり私たち自身に返って来るという事を覚えておいて欲しいです。
そして守らなければならないのは看護師や医師などの医療者だけではありません。皆さんが自宅待機して生活するために必要な食料などの物資、それを作ってくれている工場や農場で働く人、運んでくれているトラックの運転手さん、スーパーやコンビニの店員さん、彼らを運ぶ鉄道で働く皆さん、タクシーの運転手さん、ゴミを収集してくれる皆さん・・・感染のリスクを追って働いています。そういう方々に感謝の気持ちを表すのはもちろん、マスクや手袋、そして職場の安全な環境などを整えるようにしていただきたいと心から願っています。