広島・長崎の被害を隠蔽したアメリカ政府とその暴露本”Fallout” The Book Reveals the Gov’t Cover-up the Truth about the Atom Bombs

08-11-20

(アメリカメディアの報道を元に、JFN/TOKYOFM 全国36局ネットのOn The Planetでレポートした内容に加筆再構成しています。)

この季節になると、75年前の戦争のことを考える方が多いと思いますが、アメリカは今年このタイミングで出版された本が話題になっています。タイトルは「フォールアウト」(放射性降下物、「黒い雨」もその1つ)

レスリー・ブルームと言う女性のジャーナリストが書きました。

内容は、広島長崎に落とされた、いやアメリカが落とした原爆が、人に対してどれほど恐ろしい破壊力があったかが、アメリカ政府によって隠蔽されていた、それがどう暴かれたのかという事実を伝えるものです。

 

もちろん現在は知られている事実ですが、原爆投下からほぼ丸一年は、厳しい報道管制が敷かれて、広島長崎で起きたあまりにも悲惨な状況が一般のアメリカ人に伝わることがありはありませんでした。

それどころか、原爆投下直後アメリカ人は、日本との戦争を終わらせるために原爆は不可欠だった、素晴らしい発明だと知らされていた。悲惨な現実が隠蔽されたのは、その素晴らしい爆弾の現実を知られたくなかったという政府の思惑と、国民にとっては太平洋戦争で多くのアメリカ兵(が亡くなっていて、日本人は憎むべき敵。だからその後どうなったかに、一般人の関心がほとんど行かなかったと言うこともあったようです。

1946年、それを暴露したのが、雑誌「ニューヨーカー」の記者ジョン・ハーシー。

彼は当時戦争報道のスターで、そのコネクションをフルに利用して広島に潜入、被爆者の話を直接聞いて、ニューヨーカーは1冊まるごとその特集を組み、それまでアメリカ人が知らなかった原爆の真実を初めてアメリカに伝え、大きな衝撃を与えました。

この本では、この記者の報道をきっかけにアメリカ人の核兵器に対する意識が180度変わり、その後の各軍縮に大きな影響を与えたとしています。

未だに核兵器の脅威が消えない中、広島長崎でアメリカがやった事は、今だからこそ、多くの人の関心事になるべきというメッセージがこの本には込められています。

以前アメリカでは奴隷制についてほとんど教育しないと言う話をしましたが、原爆の悲惨さについてもアメリカの学校で教える事はまずありません。しかしアメリカには広島で被爆した語り部と呼ばれる人が何人か住んでいて、これまで数十年間、高校などを回って体験を英語で伝え続けていますが、とても十分とは言えないし、彼らの高齢化も危機感に繋がっています。

この本は人類にとって最大の悲劇は、歴史から学べないことであると語っています。

そして、政府はいつも不都合な歴史を隠そうとしていると言う目で見なければいけないと。

実は、戦争も民族浄化も大量虐殺も人種差別も全て、共通点があります。それは相手を「非人間化」する、同じ人間として見ようとしないと言うことです。逆にみんな同じ人間だと実感できれば 差別することができません。だから政府はあの手この手のプロパガンダで国民を洗脳していきます。でも支配者が何をしようと、どんな考え方を持っていようと、そこに暮らしている人間は皆同じだと言うことを忘れてはいけないと感じます。

最後に、1995年の世論調査ではアメリカ人の過半数の59%は原爆投下は正しかったと答えているのに対し、21年後の2016年には43%にまで下がっています。時代が変わったこともありますが、ジョン・ハーシーのレポートや語り部たちが続けて来たことは無駄ではなかったと信じたいです。

さてもう一つ、ここで私から個人的なお知らせ。今発売中の文芸誌「群像」9月号は、やはり戦争をテーマにしていて、著名人、知識人の作品が満載ですが、その中で私は人種偏見に関する短い随筆を書いています。ご興味あれば是非。http://gunzo.kodansha.co.jp

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