083120
(アメリカメディアの報道を元に、JFN/TOKYOFM 全国36局ネットのOn The Planetでレポートした内容に加筆再構成しています。)
大統領選まであと63日。
ここにきてアメリカでは再び人種差別反対運動が熱くなり暴力事件も起きていますが、
同時にそれを政治利用しようというトランプ氏の姿勢が明確になっています。
先週木曜日のオンプラでもお伝えしたように、1週間前の日曜日にウィスコンシン州カネーシャという街で起こった、黒人に対する白人警官による暴力事件、非武装の黒人ジェイコブ・ブレイクの背中を至近距離で7発撃って、ジェイコブさんは下半身マヒに。
なぜこんなことが起きたのか、1週間経ってもその経緯は警察から正式に発表されていません。
これに対し全米で抗議運動が起こっていますが、カネーシャでは略奪から店を守ろうと隣の州シカゴから、ライフルを持ってやってきた17歳の少年が、二人を撃ち殺す事件が起きました。
一方オレゴン州ポートランドでは、これまでブラックライブスマター運動と、それに反対する警察擁護派、白人至上主義者のグループなどが衝突してきましたが、昨日日曜日、トランプの旗を立てた車数百台がデモを行い、それに抗議するBLMのグループにつっこみ、ペッパースプレーを浴びせたりしました。そしてトランプ派の一人が撃たれて亡くなりましたが、詳しい経緯、犯人はまだわかっていません。
まさに暴力が暴力を呼ぶ状況になっていますが、折しも先週は共和党大会で最大のメッセージとして出されたのは、「アメリカでは抗議行動による暴力が多発している。バイデン候補は警察への予算削減を主張しており、彼が当選したらアメリカは非常に治安が悪くなるだろう」
ここでファクトチェックしておかなければならないのは、まずバイデン氏は、警察への予算削減を主張していません、逆に反対していますから、完全な言いがかり、嘘です。
むしろトランプ氏は各州への国からの予算をカットしようとしていますから、コロナ対策で疲弊した地方自治体は警察予算もカットしなければならないかもしれない状況です。
またこうした抗議行動や衝突の原因である人種問題には一切触れず、犠牲になった黒人への同情的な発言も一切ありません。あくまで「民主党知事の州で起こっている暴動」という言い方をしています。
しかしそもそも、暴力事件が多数発生している現在のアメリカの大統領は、バイデン氏ではなくトランプ氏です。大統領だったらその責任を取るべきなのです。
ポートランド市長は「ヘイトを作り出したのはトランプ大統領あなただ」と抗議しましたが、トランプ氏が大統領になるまでは、ここまでの人種の衝突や暴力、ヘイトクライムも起こらなかった、これは事実です。
そしてトランプ氏は、ポートランドで車にトランプ旗を立ててBLMと衝突したグループを「愛国者」と賞賛しています。
トランプ氏は強い警察と法治国家の存続で選挙を戦う姿勢を示しながら、暴力を利用して有権者を脅しながら、自ら暴力を煽っている、一方でコロナ対策の失敗から目をそらすのも目的と、反対派からは強く批判されています。
トランプ氏は今週ケノーシャを視察すると発表していますが、ウィスコンシン州知事も市長も、火に油を注ぐだけだからやめてほしいと抗議しています。
ちなみにトランプ氏の支持率は共和党大会の後も変わらず上がっていません。
トランプ氏を支持されている方、様々なご意見あると思いますが、あと63日、まさになりふり構わないトランプ氏が何を言い、彼の言葉に怯え、人種差別的な態度に共鳴するアメリカ人がそれにどう答えるのか?
これから何が起こるのか?この暴力がどこまでひどくなるのか?
それでなくてもコロナに伴う経済の疲弊で、アメリカの治安は悪くなりつつあります。現在アメリカのコロナ患者累計は間も無く600万人、死者も18万人を超え、3000万人が失業していている状況で、現職の大統領がその責任を取らないなんて考えられません。
ちなみに国家安全保障省のウルフ長官は、今後諜報機関がキャッチした外国政府による選挙への介入に関する情報を、議会に対し直接ブリーフィングしないと宣言しました。議会による外部リークを防ぐためと説明していますが、議会と国民に対する情報隠蔽と大きな批判を受けています。おそらく2016年と同様ロシアの力を借りてでも当選したいトランプ氏、選挙介入を防ぐどころか何もせず、情報隠蔽しようとしていると思われても仕方ないと思います。