09-22-20
(JFN/TOKYOFM 全国36局ネットのOn The Planetでレポートした内容に加筆再構成しています。)
アメリカの4大ビッグ・アウォードショーの一つ、ベストのテレビ番組を選ぶエミー賞が開催された。もちろん全編リモート。でもこれがなかなか面白かった!
会場は例年通りロサンゼルスのステープルセンターという2万人収容の会場。でも無観客でステージには司会でコメディアンのジミー・キンメルと、数人の超大物プレゼンターが登場するだけ。(「フレンズ」のジェニファー・アニストンや「ハリエット」のシンシア・エリヴォなど)
ノミネートされた俳優らは全員自宅やうちわだけのパーティ会場で待機し、そこにトータルで100台以上のカメラが派遣されている。そして受賞の瞬間、ドアの前で待機していたタキシードっぽくデザインされた全身防護服のスタッフがドアをノックして、トロフィーを渡すという方式。
2万人の喝采はないけれど、ファミリーで盛り上がる和気あいあいの授賞式だ。
さらに、ノミネートを読み上げるのは全米のエッセンシャルワーカーの代表として、本物の看護師さんやトラックドライバーさんたち。今年ならではの演出に好感が持てた。
そして受賞者も2020年らしい俳優や作品、特にここ数年アウォードショーはオスカーもグラミーも白人の受賞が目立ち、ダイバーシティがない事が批判され続けて来たが、今回はそのダイバーシティがかなり達成されていた。
まずコメディドラマで9部門をかっさらったのが「Schitt’s Creek」
カナダ制作のこの作品は、大富豪の四人家族が騙されて無一文になるところからスタートするお話。ゲイのキャラクターが際立っている。LGBTQコミュニティがこの受賞に大喝采だった。
一方アフリカンアメリカン俳優6人の受賞も史上最多だった。
特に黒人が主役のSFドラマ、「Watchmenウォッチメン」に大注目が集まった。
ベスト期間限定ドラマ賞(シーズン2が作られるかもという情報もあるが、今のところ1シーズンで完結している)主演女優賞のレジーナ・キングまで11 部門で受賞。
これはDCコミックスの原作を元に作られたオリジナルストーリーで、実はこれ去年秋に放送されたものだが、むしろ今見た方がリアリティがあるかもしれない。
全くのフィクションではあるけれど、冒頭シーンは以前お話しした、1921年のブラック・ウォールストリートの白人による黒人の町の虐殺シーンからスタートしている。
そして白人至上主義者の陰謀や、 警察の汚職など、まさに今ブラックライブスマター運動で全米が揺れている問題が扱われている。
さらに、これはよくあるスーパーヒーローものというより、トラウマを抱えた人々がマスクを被って悪と戦うダークなストーリーで、何とも言えず今の時代の気分を映し出している。また彼らの他にも警官などが素性を隠すためにマスクをしていたり、とにかくマスクがやたら出てくるのだ。コロナで突然マスクだらけになった1年後のアメリカが予言されていたかのようでちょっとぞくっとくる。
他にも24歳のゼンデイヤが「ユーフォリア」で最優秀女優を受賞 し話題を撒いた。
またアフリカンアメリカンの受賞者がBLMのTシャツをきていたりメッセージを発信したのも印象的、まさに2020年ならではのエミー賞だった。
*Watchmen (ドラマ)はアマゾンプライムビデオで日本でも見る事ができます。