04/05/21 updated: 「Judas and the Black Messiah ユダとブラック・メシア」はゴールデン・グローブ賞でダニエル・カルーヤが助演男優賞、アメリカ俳優組合賞で助演男優賞受賞。アカデミー賞では作品賞、ダニエル・カルーヤとラキース・スタンフィールドが助演男優賞にノミネートされている。
02/16/21
(JFN/TOKYOFM 全国36局ネットのOn The Planetでレポートした内容に加筆再構成しています。)
さてエンタメTuesday! アメリカの2月はBlack History Month。
BLMの波もあり、テレビやストリーミングでも関連の映画やドキュメンタリーが特集されていますが、その中で今夜は先週末公開されたばかりの映画をご紹介。
とはいえ、パンデミック時代なので映画館と同時にストリーミングでも公開「Judas and the Black Messiah ユダとブラック・メシア」アメリカ人にもほとんど知られていないブラック・パンサーの歴史を描いた映画。
ブラック・パンサーというと、2018年公開のマーベルのスーパヒーロー映画を思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、歴史上のブラックパンサーは1960年代後半の公民権運動の時代に、主に警察暴力に対して立ち向かった黒人大学生のグループ。カリフォルニアで始まりニューヨーク、シカゴなどにも支部があった。
ユニフォームのミリタリースタイルのレザージャケットやベレー帽がスタイリッシュで、文化的アイコンでもあった。
何度かお話ししたけれど、当時の警察によるマイノリティへのハラスメントや暴力は、今と比べられないくらい酷く、ブラックパンサーは当時のキング牧師の無暴力とは対照的に、暴力も辞さないという態度で、50年以上経った今も論争が絶えない。
でもほとんど知られてないのは、彼らがピュアに黒人の生活をよくしたいという願いを持っていて、特に貧しい地域で子供達のための無料の食堂や学校を運営して頑張っていた。
そして当時はケネディ大統領からキング牧師などが次々に暗殺された時代。
この映画では、ブラックパンサーのシカゴ支部の21歳のカリスマ的リーダー、フレッド・ハンプトンが、その影響力を懸念されてFBIのターゲットになり結局暗殺されてしまうという実話を、かなり史実に忠実に映画化している。
これもすごい話だが、FBIという連邦捜査局を作り上げ40年間に渡って牛耳ったフーバー長官は、権力に対して危険分子と思われる人々の長いブラックリストを作っていて、そこにはやはり暗殺されたキング牧師やジョン・レノンなども含まれていた。
そして、FBIは17歳の窃盗犯を囮として入り込ませ、彼の協力でフレッド・ハンプトンを暗殺。(後の民事訴訟で、国は遺族に2億円を支払っている)
気鋭の黒人監督のシャカ・キングは、ある意味抑えた演出でリアルな史実を描き出し、フレッド・ハンプトン役のダニエル・カルーヤはゴールデン・グローブ賞ノミネート。
でも私は囮(ユダ)にさせられてしまう気の弱い17歳の犯罪者ビル・オニールを演じたラキース・スタンフィールドもとても良かったと思う。
今のアメリカを知るには黒人の歴史を知る事が必須ですからぜひおすすめ。