(JFN/TOKYOFM 全国36局ネットのOn The Planetでレポートした内容に加筆再構成しています。)
日本でも大谷選手の活躍などが話題になっているメジャー開幕。
ところがアメリカで最大の話題は、MLBがジョージア州アトランタでのオールスター戦をキャンセルしたこと。
オールスターといえば毎年7月に行われ、全米からファンが集まるまさにお祭りで地元への経済効果は100億円とも。
それを予定していたジョージアではもう開催しないと発表。
理由はコロナではありません。政治、選挙をめぐる戦いです。
ジョージア州では最近、非常に厳しい選挙法が可決、成立。MLBはそれに抗議するためにキャンセルを決めた。
一体どんな選挙法なのか?というと・・・
普通私たちは有権者に対し、もっと投票に行きましょうと呼びかける。民主主義だから投票率が高い選挙ほど良い選挙。
ところがジョージア州の新しい選挙法では、投票時間の短縮、期日前投票に安全に投票するための投票箱の数の削減、
さらに、選挙で並んでいる人への水や食べ物の差し入れ禁止。(実はジョージア州では前回の大統領選で場所によっては6時間とか10時間並んで投票したことが大きな問題となった)どう見ても投票しにくくする法律。
なぜこんな法律を作るのか?
建前は選挙の不正を防ぐため。
本音はこれ以上共和党が負けるわけにはいかないから。
ジョージア州は去年の大統領選のまさに激戦地。伝統的な保守共和党州だったはずが、衝撃的にひっくり返って、トランプ氏が負け上院も民主党に持っていかれた。
今や完全なトランプ党となった共和党支持者の過半数はそれが不正のせいだと信じていて、1月には議会襲撃も起こり死人も出ている。
しかし不正は全くなかったことはトランプ政権の司法当局も既に認めた。ところがジョージア州議会の与党共和党は今になってそれを蒸し返し共和党が多数派なのに任せて可決。
で、今回の選挙法で投票しにくくなるのは圧倒的に黒人やヒスパニック、アジア系などのしかも所得が低いマイノリティ。そして若者。
彼らが圧倒的に民主党に投票したことはわかっているので、あからさまな投票妨害と強く批判されているにもかかわらず、テキサスなど他の共和党州でも同様の選挙法が審議されている。
MLBはこれに抗議してオールスターゲームのキャンセルを決めたが、実はコカ・コーラ、デルタ航空などの地元の大企業も公式に苦情を表明。
今有権者の政治意識が上がってきているので、こうした行動を取らなければ逆に消費者からボイコットされてしまう時代でもある。
これに対しジョージア州知事は「キャンセルカルチャー」には屈しないと強気の姿勢を崩さない。
政治と大企業といえば献金とか癒着が問題になるが、今回のこの対決の構図がどう展開するのかが注視されている。
ところで既に可決させてしまった法律に対して、今更なぜ騒いでいるのかというと、テキサスなど同様に共和党議会が強い州では同様の法律を成立させようとしているから。
2022年の中間選挙、24年大統領選を睨んでの激しい戦いが既にはじまっている。