06-14-2021
JFN/TOKYOFM 全国36局ネットのOn The Planetでレポートした内容に加筆再構成したものです。
7月4日独立記念日に向けて経済再開が進むアメリカ、先週末はアメリカのエンタメ業界、特に映画業界にとって記念すべき週末になるはずでした、さあその結果は?という話をこれからします。
その前に、今アメリカの成人で1度でもワクチン摂取した人64%。ニューヨークは少し早めで69%超え。
全米の感染者2週間の平均1万4千人死者360人と下降を続けている。
そんな中でニューヨークも屋外を中心に音楽などのエンタメが再開、中でも大きかったのは恒例のトライベッカフィルムフェスティバルが2年ぶりにスタートしたこと。
ロバートデニーロが20年前に911からのニューヨークの復興のために立ち上げたフェスティバル、今回はパンデミックからの復興を意味する象徴的なもので、ニューヨーカーとしては感慨深いものが。
参加作品の1つアメリカのロック・レジェンドKISSのドキュメンタリーを記念して、先週金曜日にはKISSの野外コンサートも。
その映画祭のキックオフ作品としても大きく注目されたのが「In The Heights」
クリエイターはブロードウェイの歴史を塗り替えた「ハミルトン」のリン・マニュエル・ミランダで、2008年彼の最初のヒットミュージカルの映画化。監督はクレイジーリッチのJon M. Chu
私も見ましたがこれが素晴らしい作品で、ミュージカル映画といえばちょっと前の「La La Land」、「グレーテストショーマン」などが思い浮かぶと思いますが、「In The Heights」はミュージカル映画のハードルをまた上げた、アカデミー賞ノミネート確実と高評価。
「In The Heights」のハイツはニューヨーク、マンハッタンにあるワシントンハイツというエリアで、歴史的にカリブ系やラテン系の移民の街。
ドミニカン、プエルトリカン、キューバン、メキシカン、ペルビアン・・・サルサ、メレンゲなどラテンダンスの要素いっぱいでカラフルな人たちがストリートで踊りまくる。
実はワシントンハイツって私の近所でもあるんですが、まさにそのものの雰囲気で描かれていて、地元のブロックパーティに紛れ込んだみたい。
もちろんカラフルな人間模様、
移民の国と言われるアメリカであっても、普段はあまりスポットが当たらない移民のストーリーでもある。厳しい暮らしの中で自分たちの文化や家族コミュニティを大切に生きる移民たち。
そこに現代の大きな社会問題。不法移民の子供をどう守るかということや、激しい地上げ、マンハッタン中心部から通勤30分圏内ですから今どんどん値段が上がっている。それで何十年もいた場所から引っ越さなければならない人々などが描かれる。
まさに2021年の今のアメリカの素顔を描く、映像もファンタジーとリアルが交錯し逆境が多い中にも喜びや希望がいっぱいで元気が出る作品。
まさにコロナ開けアメリカ映画の本格的な復活!と大変大きなハイプになったのですが、先週末の映画館での週末の興行収入は2位で12億円と意外にも期待はずれ。
その理由として考えられるのが、ストリーミングと同時公開だったこと。
ニューヨークなど移民が多い大都市圏の映画館はまだ100%キャパでないこと。
スーパースターも出てないし若者がコロナ開けみんなでわいわい見にいくには地味。(3週目で1位に返り咲いたクワイエット・プレイス・パート2のようなホラー映画やピュアなアクション映画の方が良いみたい。)
でも作品としては本当に素晴らしい、コロナ開けのアメリカの素顔が見たかったらぜひおすすめ。日本では7月30日公開