映画「ウェストサイド・ストーリー」60年前のリメイクなのにアメリカの今がわかる理由 West Side Story shows Today’s American Society

JFN/TOKYOFM 全国36局ネットのOn The Planetでレポートした内容に加筆再構成したものです。

アメリカでゴールデングローブ賞受賞、アカデミー賞ノミネートも確実と言われている映画「ウェストサイドストーリー」日本では2月11日公開

オリジナルは1961年公開のミュージカル映画の普及の名作を、あのスピルバーグ監督がリメイク。それだけですごいがこの映画、70年も前のニューヨークを舞台にしているのにたった今のアメリカがいろんな意味でよくわかる。

特にオリジナルと比べるとその違いでさらによくわかる。今日はそれをちょっと解説。

映画の舞台は1950年代のニューヨーク。

第二次世界大戦後の経済ブームの中で、取り残されたスラム地区(ウェストサイド)は新しい街に改造するために取り壊されていく。そこに住む10代の若者たちは2つのギャング(といっても不良って感じ)グループを作って対抗している。

かたや白人(といってもイギリス人などよりずっと遅れてやってきたヨーロッパからの移民の子供たち)かたやプエルトリコ人(カリブの島から20世紀以降入ってきたヒスパニック移民)。その中の白人男性とプエルトリコ女性のラブストーリーで、モチーフになっているのはシェイクスピアのロミオ&ジュリエット、つまり悲劇。

オリジナルが発表されたのは公民権法以前、つまり合法的に人種差別が行われていた時代にマイノリティのプエルトリコ移民をフィーチャー、人種間の軋轢を描いて革新的と注目された。

スピルバーグ版ではオリジナルのバーンスタイン=ソンドハイムの音楽、「Tonight 」「Maria」など必ずどこかで聞いたメロディーと歌詞はそのまま、振り付けやストーリーもほぼ忠実に再現。一度見たら忘れられないダンスも見られる。

オリジナルがセット撮影が多かったのに比べ、スピルバーグ監督はニューヨーク中でロケ。建物は築100年当たり前ニューヨーク、店の看板を変えただけで当時に変身。そこでオリジナル以上にダイナミックでカラフルなダンスシーンが繰り広げられ圧巻。

ここで注目して欲しいのは、オリジナルと大きく違うキャスティング、

今は白人の役には白人、マイノリティのヒスパニックにはヒスパニックの俳優というのは当然。しかしオリジナルでは主役のプエルトリコ女性マリアの役は白人女性の超人気俳優(ナタリー・ウッドはしかも歌は口パクだった)。それ以外のプエルトリコ人も1人を除いて白人(1人日系人も)全員メイクで肌をブラウンに。プエルトリコ系と言っても混血の仕方で肌の色は白人と変わらない人からダークスキンまで色々、しかし全員同じ色にメークされてしまったという。それもそのはずプロダクションチームにはヒスパニックは1人もおらず白人の浅い知識だけで作ったから。

さすがに今回は全員ラティーノ(ヒスパニック系)の俳優を起用しているけれど、映画を見ていると当時の人種差別や偏見がよくわかる。しかしずっと見ているとこれが過去の問題ではない、現在につながっていることがわかってくる。

例えば、印象に残ったのは白人不良グループに対し警部補が「お前らは他の移民が成功した中で取り残された負け犬だ」みたいなオリジナルにはないセリフをいう場面。さらに、「もうすぐできる高層マンションに(ライバルの)プエルトリコ系はドアマン(警備員)として働き出し、お前らは中に入れてももらえなくなるんだ」

これはまさにたった今起こっている分断と同じ。多くのマイノリティは未だ警備員など最低賃金で富裕層に仕え、同時に取り残された白人はマイノリティに職を奪われているという怒りから生まれる差別と分断が、トランプ元大統領や白人至上主義グループの台頭につながっている。

そんなことを考えながら見るとさらに面白くなるのでぜひ。

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