022122 TOKYOFM 全国36局ネットのOn The Planetでレポートした内容に加筆再構成したものです。
ニューヨークはコロナが落ち着いてブロードウェイにも人が戻っています。
そんな中マイケル・ジャクソンの話題のミュージカル「MJ」を見た!
といってもマイケルは2009年になくなってしまっているので、マイケルの半生をテーマにしたいわゆるジュークボックスミュージカル。
マイケルと言う存在は個人的にもあまりにも大きく、 それを一体どうミュージカル仕立てにするんだろう。そもそもマイケルの役できる人なんているんだろうかと、半分期待半分不安で見に行きましたがこれが楽しかった!
会場のニール・サイモンシアター(キャパ1400)が水曜のマチネなのに完全ソールドアウト。大体40代以上の白人黒人入り混じってやはり私のような女性多し。
面白いのは開演前なのにステージは丸見え。

リハーサルスタジオのような場所にダンサーやバンドが楽器を抱えて入ってくる。
と思うと突然ショーが始まる。
普段着のマイケルが入ってきてリハーサルが始まる設定なのだが、あの帽子をちゃんと被ってる。いきなり鳴り出したイントロが「Beat It」で客席は騒然。
踊りながら歌う姿はマイケルが乗り移ったようにそっくり!
このリハーサルは1992年のデンジャラスツアーのリハという設定で、
バックアップシンガーが連れてきた小さな息子を見てマイケルが過去を思い出し、物語が展開していく仕掛け。
しかもマイケルは1人ではない。
ジャクソン5時代に厳しいお父さんに絶対に休むことを許されないマイケル、
10代に成長し、音楽業界との軋轢に悩むマイケル。そして1992年のマイケル3人のマイケルを別の俳優が演じているがどの人の歌も演技も素晴らしすぎる。
他のダンサーもシンガーも精鋭が集まり ブロードウェイの層の厚さを実感。

ジャクソンファイブからオフ・ザ・ウォールからスリラーからMan In the Mirrorまで、観客も常に一緒に歌っている。 衣装も全部覚えているから、ジャケットに袖を通すだけでおおーと歓声が。
マイケルの半生とともに私の半生も走馬灯のように駆け巡る。
演出で言えば特に前半で「え」と半ば拍子抜けさせておいて、後半で非常に重要な役割を持って再登場する「スリラー」の使い方が秀逸だと思った。
でも途中でふと気づくこと。 物語はスタート地点1992年から過去に遡るので、それ以降の事は一切語られない。つまり マイケルが未成年を性的虐待した疑いで世紀のスキャンダルになった事などは全く触れられていない。(財団が全面協力しているため、ネガティブな情報は入れず万人向けに作られたと考えられている。)彼はその疑いが晴れることなくドラッグ過剰摂取でなくなってしまったから、ファンにとっても彼をこれほど愛したアメリカにとってもマイケルと言うのは実はとても複雑な思いを引き起こす存在。
メディア批評でも、これはミュージカルと言うエンタメではあるが、誰もが知っている事実が出てこないということが作品の弱さにつながらざるをえない。かといって物語なしの完全なコンサート形式にしてしまったら、マイケル を超える役者は存在しないのでエンタメとして成立しないと書かれていた。彼の矛盾に満ちた一生がそのまま作品としての自己矛盾にもに影されてしまっていると言ってもいいかもしれない。
ところが実はこの作品はそれでも十分楽しめてしまう。それはマイケルが作り出した音楽とアートがどれほど素晴らしいものだったという証明ではないかと思う。
パンデミックが終わり日本からも見に来れるようになるまでロングランしてほしい。
