(JFNのラジオ番組Day By Dayにレポートした内容を再構成、加筆もしています。)
ニューヨーカー、トランプ関連のニュースが気になって寝られない、朝起きるとテレビをつけるのが怖い・・・という人が続出しています。子供たちにもストレスが来ているという話も聞きます、
特に8割がアンチトランプ、そして3割が外国生まれの移民の街ニューヨークにとって、そして私たち 日本人にもショックだったのは、中東の7カ国に対し90日間の入国制限をするという大統領令
全米の空港での入国禁止は
何の前触れもなく始まりました。難民、そして正規のビザを持った人も収監され、強制送還も。家族がバラバラになり、5歳児にまで手錠がかけられる中、
人権保護団体とボランティアの弁護士チームが駆けつけ、空港前や市内では抗議デモが起こりました。
さらに、 グリーンカード永住権を持っている人も対象になったことで、私の中で真っ赤なアラームが点灯しました。私も永住権持っていますが、永住権ってそんなに簡単に取れません。
様々な審査を経てやっと永住権をとったのに保障される権利はないのか、外国に暮らすってこう言う事なんだな、と改めて本当にゾッとしました。
私は25年間ニューヨークに住んでいますが、911の直後でさえ
こんなことはありませんでした。
でもこの禁止令、 おかしなことがいっぱい。
まずこれは「イスラム教徒に向けてやっているわけではない。テロリストに向けてやっているのである。
アメリカでは宗教によって人を差別するのは憲法違反なので、そういうミエミエの事を言ってくる。
じゃあなぜこの「7カ国なのか」?
テロから国民を守ると言っているが、
911以降アメリカ国内で起こったテロの犯人は誰一人としてこの7カ国から出ていない。
911の犯人のほとんどはサウジアラビア国籍だった。
それ以降のテロ犯人は、一人を除いてテロリストは全員アメリカ国籍だった。外国人ですらないHome Grown (国産)テロリスト。
さらに、今度はこの7カ国にはトランプ・オーガニゼーションとビジネスで利害関係がある国がなぜか含まれていないと指摘されると、
スパイサー報道官は「そもそもこの7カ国を選んだのはオバマ政権だった」と反撃。
しかしそれは、当時実際にテロの危険があるという事前情報に対応した7カ国で、
今回こうした情報がない今、選んだ基準にはならない。
するとスパイサー報道官今度は「テロの危険情報があってからでは遅いから先取りしてやっている」
さらに「これは禁止令ではない、禁止というのは誰も入れないことだから、入れている人もいるので禁止ではないのである。」意味がよくわかりませんけど・・・それにトランプ大統領は自分で堂々と「禁止令」と言っているのですが。
ああいえばこういう、まさにこれぞオルタナ・ファクトの極み?
これに対しおととい、法務長官代理が「この禁止令は違憲の疑いがある」と反旗を翻した途端に更迭されました。しかし反対の動きは止まることはなく、全世界のアメリカ外交官も、アップルやナイキ、スターバックス、ゴールドマン・サックス、コーク・インダストリーズなどの巨大企業、
そしてイギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア、カナダなど国際社会も反対を表明。
しかし大統領命令なので撤回するには裁判に持ち込むしかありません。
現在既に13の訴訟が全米の連邦地裁で起こされています。
ところが昨日ロイターが発表した世論調査では、国民の半数近い49%が賛成しています。つまりこれまでと同じように、アメリカの世論は真っ二つ。
でも賛成でも、これでアメリカが安全になると思っている人は3割に過ぎません。つまり他の理由、難民や移民に自分たちの税金を使われたくない、職を奪われたくない、それが本音だと思います。
でももともと移民の国アメリカ、ついこの前までは移民や難民を受け入れることを誇りにしていたんです。
今でも国の半分は変わっていません。では一体なぜこんなに二極化してしまったのかは次の機会に書きたいと思います。
ところで移民や難民の流入をさまたげようというのはもうヨーロッパ全体の潮流でもありますが、
アジア人の私たちにも降りかかってくる恐れがあります。
というのも、この大統領令の黒幕は、事実上トランプ政権を牛耳っている、スティーブ・バノン主席戦略官。
白人至上主義者で、ロシア革命の英雄レーニンの信奉者。
リベラルからも保守派からも危険人物と目され、映画監督のマイケル・ムーアは「トランプ大統領と二人でクーデターを起こそうとしている。」とまで言って警告しています。
過去の発言では「シリコンバレーのハイテク企業のCEOに、アジア系が多すぎる」と人種偏見をあらわにしたり、
さらに「近い将来アメリカと中国が戦争するかも」なんていう発言もあった。
戦争とか革命とか、この人の暗黒の世界観がトランプ政権のイメージを作っているのは間違いありません。
ところがこのバノン氏をトランプ大統領が国家安全保障会議に常に出席できるメンバーとして指名、
今大問題になっています。政治と安全保障は切り離すのが常識だからですが、彼は会議の正式メンバーではなく、「毎回出席できるだけの人」というわけのわからないレトリックで大統領令を出したために、現在の法律ではこれを取り締まることはできない。まさに法の抜け穴を利用しています。
そんな人が国家安全保障会議に首を突っ込んでくるなんて、
このままだと日本も大きく関わる安全保障がどうなるのか、恐ろしいとしか言いようがありません。
これを書いているニューヨーク時間の水曜夜現在、フロリダの下院議員がバノンを安全保障会議からはずすための法案を提出しました。「政治的な職務を追っている人は、安全保障会議のメンバーにもなれず、会議に常に参加することはできない」という内容です。
明日はまたこの法案をめぐる戦いや、未だ続く「問題の多い閣僚たち」の任命審査を、1日中CNNやフェースブック、ツイッターで追いかける1日になりそうです。やれやれ。
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