(JFN系全国ネット ON THE PLANETで月〜木で放送しているNYレポートを再構成しています、月曜日の担当はマシュー・まさる・バロンさんです。)
先週はトランプ大統領がまた過激な発言で、北朝鮮情勢が緊迫していますが、これに加え、アメリカ国内はトランプ氏の別の発言で大炎上しています。
金曜日、ヴァージニアで 白人ナショナリスト、ネオナチやKKKなどによる大規模な抗議行動がありました。KKKの象徴の松明を片手にしたグループ、ナチの鉤十字マークの旗や、差別の象徴アメリカ独立戦争の南軍旗、まるでスワットチームのように武装したグループがぞろぞろ。もちろん銃は本物(バージニアでは合法です。)
これに反対する市民のグループも街に出て抗議、ところが反対派のグループにネオナチ男性が運転する車が突っ込み、32歳の女性が死亡、30人以上が怪我をする大惨事に。(警備に当たった警察ヘリの墜落で警官も二人亡くなった)
ところがトランプ大統領はこれに対し土曜日の会見で、
「どんなグループによるどんな憎しみも偏見は暴力も許されない」と言ったから世論は大炎上。
これのどこが問題なのか?
「どんなグループ」という、あいまいで喧嘩両成敗的な発言の問題点、白人ナショナリスト、至上主義の行動をハッキリと否定しなかったことです。
アメリカの歴史というのは、あらゆる人が差別されない社会を目指して進んできた。つまり、奴隷制〜白人優位や有色人種に対する人種差別や暴力を否定することが根幹にある。だから歴代の大統領はこのような場合は、必ず白人ナショナリストを否定してきた。
もっと言うと、この暴力は実はテロと宣言していたはずです。ISの車による突入テロとどこが違うのかということです。
ちなみに元KKKリーダー(David Duke)は大統領選の初期にトランプ支持を表明していましたが、今回「自分たちはアメリカを白人の手に取り戻してくれるというからトランプに投票したんだ」とキッパリ。また他の白人ナショナリストの団体も、「トランプ氏は自分たちを否定しなかった、素晴らしい!」
しかし彼ら以外のアメリカ人が党派も宗派も人種も超えてトランプ氏を総攻撃。
これに折れてトランプ大統領はようやく今日、再び会見を開きました。その発言がこれです。
“Racism is evil,” Mr. Trump said. “And those who cause violence in its name are criminals and thugs, including the K.K.K., neo-Nazis, white supremacists and other hate groups that are repugnant to everything we hold dear as Americans.”
「人種差別主義は邪悪なものです。人種差別の名の下に暴力を行うものは犯罪者・悪者です。その中には、私たちアメリカ人が大切にしているあらゆるものと相容れない不快な存在であるKKK、ネオナチ、白人至上主義者や他の扇動集団が含まれます。」
彼は暴力と人種主義に対しては強く否定していますが、KKK、ネオナチ、白人至上主義者の存在自体はそこまで強く否定していない。repugnant(相容れない不快なもの)という言葉を使っていますが、あまり強くない言葉です。
普段は北朝鮮や自分を批判する相手に対し、強烈なレトリックで攻撃するのに、ずいぶん穏健な言い方じゃないかという批判も少なくありません。
白人ナショナリストによる活動はトランプ当選後にますます盛んになっていました。なぜこんなことが起きているかは私の過去記事「トランプ支持者が恐れる2043年問題とは」を読んでみてください。
こうしたグループがこれに力を得てますます?・・・と私も含め有色人種はゾっとしない感じ。さらに多くの白人も、100年以上かけてたくさんの血を流してやっとここまで育ててきたアメリカのモラルを守らなければと怒りと焦りを感じています。
さてここで北朝鮮に話を移すと、
外交と経済制裁で何とかしようという穏健派の閣僚、マクマスター補佐官、テイラーソン国務長官らの必死の消火作業で、一触即発的な雰囲気は一応鎮静しています。
ところが今浮上しているのは政権内トップの分裂。トランプ大統領の「炎と怒り」発言のバックにいるとみられるバノン主席補佐官とミラー補佐官。(ちなみに二人ともALT-RIGHT 白人ナショナリストと言われています。)
トランプ氏の好戦的な発言が、解決のオプションを減らしてしまっているという現状と共に、この分裂が次の動きを見えにくくしています。
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