(JFNのラジオ番組Day By Dayにレポートした内容を再構成しています。メインパーソナリティは桑原りささんです。)
ニューヨークはどんどん秋が深まりセントラルパークも徐々に紅葉しています、
セントラルパークの南の表玄関といえば、目の前はすぐ5番街、プラザホテル、ティファニー、その隣にはトランプタワーと、まさにニューヨークの中心地。
ここに先週から突然、巨大な鳥かごが、出現しました。黄色の鉄でできていて、高さは6メートル以上、直径も5メートルくらいはありそう。形は鳥かごみたいだけど、実際には檻。中に入るのは、鳥ではなく私たち人間。
これアートです。アメリカではパブリック・アートと呼ばれるもの。
世界的に知られるアーティストAi Weiwei(アイ・ウェイウェイ)の作品で、しかも今回の展示は大変大規模なもので、大きな話題になっています。パブリックアートだから、展示スペースはニューヨークの街全部。この檻を含め大小合わせてトータルで300点が街のあちらこちらに展示されている。そしてとても今年らしいアートでもある。
まずこの檻も含めて、300点の作品を 作ったAi Weiweiは中国を代表する現代美術家で、人権運動家でもある。コンセプチュアル・アートと呼ばれるメッセージ性の高いアート作品。人権に関わるドキュメンタリー映画も制作。それが理由で中国では一時拘束され、自宅軟禁されていたこともある。そんな彼の作品なので、強いメッセージが込められている。
作品のタイトルは「Fences Make Good Neighbors」フェンスが良い隣人を作るという意味。
詩人ロバート・フロストのポエム「Mending Wall」の一節。人と人とを隔てる壁やフェンスは何のためにあるのか?本当に必要なのか?という疑問を投げかけた詩。100年以上前に出版された作品です。
壁といえば、歴史的にはベルリンの壁、そして最近では、トランプ大統領が推進するメキシコ国境の壁、
ヨーロッパでも難民をめぐって、たくさんのフェンスが作られている。
Ai Weiweiはこのフェンスをコンセプトに、大きな檻を作ったり、普通のアパートの屋上にフェンスを載せてみたり、バス停をフェンスで囲ったりまた上を見ると、街頭のポールについている旗がアート。
実際の難民の顔写真を加工したアートになって、これが何百人分と街にはためいている。
このアートに触れることで、今世界的なクライシスになっている難民問題について考えて欲しいという
メッセージが込められている。そして、セントラルパークに作ったのも、すぐ近所のトランプタワーに
メッセージを送りたかったからだそう。
Ai Weiwei自身も今はベルリンで暮らす移民です。
また80年代の10年間、最初は学生としてニューヨークに住んでいた。
その後は街で観光客の似顔絵を描いたり、色々な仕事をして生計を立てていたそうです。
外国で暮らすのって本当に大変。中でも移民の多くは自分の国の経済や政治体制が悪すぎて暮らせないから
移民する、難民に至っては、自分の国を追われて出てくるわけです。一般人には、到底想像がつかないその体験を少しでもイメージしてみてほしい・・・
世界に発信する移民の街ニューヨークにふさわしいアート。2月11日まで見ることができます。
https://www.publicartfund.org/ai_weiwei_good_fences_make_good_neighbors
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