020418
日本では明石市長のパワハラ的な暴言で大炎上、辞任に追い込まれたというニュースがありました。
ところが今アメリカ、ヴァージニア州でも州知事の暴かれた過去が大問題になり、辞任コールが巻き起こっている、その理由はパワハラではなく「人種差別」
その話に行く前に、ちょっとこんな話を聞いてください。
25年くらい前、その頃ニューヨークでよく遊んでいたAfrican Americanの男性が、 初めて東京に行きました。
彼は20代のクラブキッズだったので、現地の友達と一緒に東京のクラブに行った。ところがその友達が、顔を黒く塗って黒人DJみたいなスタイルで登場。それを見た彼は激怒。しかし 日本人の友達(顔黒塗りの男性)は「ジョークなんだから怒ることないじゃないか」と逆ギレ。
でもこれをもしアメリカでやったら、満場一致のブーイングなだけでなく、人種差別的な行為として職や地位を失うかもしれません。なぜ顔の黒塗りBlackfaceは絶対ダメなのか、
それは、かつて人種差別が激しかった19世紀から20世紀初めに流行ったMinstrelというショーで、白人が顔を黒く塗ってマヌケでドジばかりやる黒人を演じて笑いをとるというものがあった。
だから今ではBlackfaceは黒人を卑下し差別する人種差別の象徴、絶対NGな行為。
ところがヴァージニア州知事のRalph Northamさん、どうやらこれをやってしまったらしい。
問題になったのは、突然浮上した大学の卒業アルバムに収められたある写真。Blackfaceの男性の隣には、なんと白いとんがり頭の覆面の男性が。これは多くの黒人をリンチで虐殺した歴史を持つKKKのトレードマークの衣装。80年代のアメリカの大学の卒業アルバムにこんな写真が!というのも驚きだが、このどちらかがバージニア州知事ではないかという嫌疑がかかっている。
しかし州知事は「この写真は自分ではない」と否定。(確かにBlackfaceと白い覆面では誰だかわからない・・・)
ところが州知事はその申し開きのつもりで、わざわざ火に油を注ぐような告白をしてしまった。
「これは自分ではないが、かつて大学時代にダンスコンテストで、マイケル・ジャクソンのモノマネをした。顔を黒く塗って、ムーンウォークして優勝した。当時は何が悪いのかわからなかったが今は反省している。 」
つまり、自分はマイケル・ジャクソンの大ファンだったから、正しい事とは思わないがまだ可愛いもんでしょう?許される範囲じゃないですか?と言っているわけ。
ところが世間からは、こんな告白をする事自体、未だに全くわかっていない証拠と、激しい辞任コールが巻き起こっている。しかしそれでもやめる意思はないそう。
もしこれを聞いて、そこまで厳しくしなくてもいいじゃないかと思った人もいるかもしれないけれど、それはアメリカの黒人が経験した受難の歴史を知らないから。
その歴史というのがなかなか難しいのですが、例えば日本人で言えば、外国人が原爆を美化するような写真のTシャツを着ているのを見れば嫌な気持ちになるのと似ている。
同じように私たちも知らないうちに、相手を嫌な気持ちにさせているかも。
そして知らないというのも言い訳にはならない。なぜなら知らない=無関心、つまり相手に対してレスペクトがないことにもなるから。
人種的にますます多様化する一方なのはアメリカだけでなく、日本も同じ。さらに世界がつながって地球環境などもっと大きな問題を解決しようという時に、とにかく何をおいても重要で、そして難しいのが人種や民族間のハーモニー。せめて身近なお隣さんがどんな差別や痛みの歴史を背負っているか興味を持つのはとても有益だと思う。
事実この州知事の件でも、ただ辞めさせて臭いものにフタするのではなく、今も残る差別や偏見を皆で語り合うきっかけになる事が重要という声も強い。
というのも南部のヴァージニア州では差別や偏見との戦いは現実問題。2017年白人至上主義者のグループとそれに反対するグループが同時にデモを行い、白人至上主義者が運転する車に女性が轢き殺される事件があった場所。これに対するトランプ大統領のコメント「白人至上主義者にもいい人はいる」に多くのアメリカ人が唖然としたのも記憶に新しいところ。大統領自身がこの状態なので、この州知事(ちなみに彼は民主党)のような権力を持つ立場の人は、より厳しく糾弾されざるをえないという現実も。
ちなみにアメリカの2月はBlack History Month。人種差別や偏見が歴史にはなっていない事を象徴する皮肉な出来事ともいえます。