022619 オスカーrecap
良かったですねえクイーンで始まったセレモニー!
司会者がいないのでむしろスピーディに進んで、意外におm時間オーバーも20分以下だった!
そしてもう一つ意外だったのは、Best Pictureには「Green Book」が!
しかもこれが選ばれた瞬間から大論争が始まった・・・一体なぜ?という話をします。
このところずっと話していますが、ここ数年オスカーもグラミーもポリティカルにならざるを得ない宿命が。
女性やLGBTQ、有色人種をもっと取り込もうという動きの事です。( ホワイトハウスにいるあの人への反動も大きいのですが)
#metooはもちろん、#oscarstoowhite(オスカーは白すぎる)のハッシュタグも掲げ、
特にオスカーは投票権を持つ6000人の9割以上が白人、8割近くが高齢の男性、50歳以下は2割に満たないという状況を変えようと努力して来た。
それが今年ハッキリと目に見える結果として出始めたというのがメディアの評価。
前半から続々と女性、有色人種が受賞。
例えば出演者のほとんどが黒人、女性が制作の指揮をとったBlack Pantherから、衣装とプロダクションデザインで二人の黒人女性(Ruth E Carter, Hannah Beachler)が受賞。演技以外の賞を黒人女性が取るのはオスカー91年の歴史で3人目しかも30年ぶり。
そして助演女優賞でRegina King、 Mahershala Aliは2年前のMoonlightに続き2つ目の助演男優賞。主演男優賞はRami Malekと、主演助演4人のうち3人が有色人種。
さらにあのSpike Lee監督、黒人の生き様を描く数少ない監督として、すでに4年前に名誉アカデミー賞を受賞した大御所だが、今回 脚本賞で初めて普通の「競合する」オスカーを受賞。ようやくアカデミーが彼を認めた、と評価された。
ところが最後、最優秀作品賞が発表されると、批評家やメディアがざわつき始めた。「Green Book」の受賞はある意味意外で、人によってはショッキングだったから。
誤解しないで欲しいのは、映画としてはとてもいい作品で、特に主役のViggo MortensenとMahershala Aliは素晴らしい。
じゃあ何がざわつきの正体は何かというと、もうこれは時代の宿命と言うしかない。
「Green Book」は60年代の南部の厳しい人種差別の中で、黒人の天才ピアニストと白人の運転手が友情を深めて行くという話で、レトロで心温まるストーリーの反面、批判されたのは、まずそんなに簡単に人種問題は解決しないよ、という事。そして、白人の視点で描かれていること。
これでは古くからあるハリウッド映画と変わらない。それが2019年の最優秀映画でいいのかと・・・と手厳しい。
作り手は人種の深い溝を埋める友情があるという希望を表現したかったのはわかる。でもそんなに簡単じゃないという意見もわかる。なぜなら、差別された者の気持ちは、差別された事がある者にしかわからない。差別した側と差別された側、加害者と被害者の思いは、永遠に一致することはないのだ。
だからこそ、両方の視点と立場から描き出す作品が必要で、そういう意味でも、もっと出演者も裏方も有色人種を取り込んで行こうとしている。
だったらSpike Lee監督のBlackkklansmanの方が、黒人の視点で、しかもたった今の白人至上主義者の台頭の問題にリアルにつながっているから、2019年の今、これが取るべきだったんじゃないか?という声も出たくらい。でも取らなかったのは、おそらくリアルなだけに見るのがつらい映画だったから。つまりアメリカはまだ心の準備ができていなかった・・・と厳しい批判の声も。
ただこういう批判も「Green Book」がオスカーを取らなければここまで語られることはなかっただろうし、アメリカ人種社会の厳しい現実があぶり出される結果になってしまったが、次に繋がる一歩にはなったと信じたい。