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03-23-20 12 PM EDT
ますます厳しくなったシャットダウン2週目、アメリカ失業率は30%に?
アメリカ感染者3万5千人超え、1日で1万人近く増え、中国、イタリアを続いて世界3位に。
ニューヨーク州は2万人、そのうち1万2千人(死者99人)が人口密集する市内に集中。ニューヨークが世界のコロナウイルス危機の中心地になったことは間違いない。
これは先週から検査の数が劇的に増えたからで、ニューヨークは一人当たりの検査数で全米トップなのはもちろん、中国や韓国も超えたと伝えられている。
しかし感染者が増えるに伴い外出禁止の度合いもだんだん厳しくなっていて、昨日の夜から必要不可欠なビジネス以外の事業所は全面閉鎖命令が出て、仕事に行くこともできなくなり、本当に全面外出禁止。必要不可欠なビジネスというのは、スーパーマーケット、テイクアウトまたはデリバリーできるレストラン、病院、警察、ゴミの収集など。現在アメリカ11州、全人口の3分の1が同じような外出禁止になっている。
市民に対しては屋外での個人のエクササイズは許されている。それで先週半ばくらいまでは、近所の公園を友達と一緒に歩いたりしていたけれど、今はそれも控えている。地下鉄は走っているが、基本乗らないようにと呼びかけられている。
マンハッタンの中心部からはビジネスマンも観光客も消えてゴーストタウンのよう。家の近所には人がいるが、スーパーマーケットのレジ前にはsocial distancing( 人と人との距離を1・8メートル離す)を実行するために床に線が引かれている。
ビジネスが止まって多くの人が失業している。飲食店はもちろん、時給で働く人やフリーランスはすぐに収入がなくなり、多くの人が来月の家賃を払えない状況。これが続けば失業率は30%になるという予測があるほどだ。
ニューヨーカー40%〜80%が感染?病院ではマスクが足りない
クオモ州知事は昨日「この状況がいつ終わるかわからないが、4か月から9か月ほど継続することを想定している。40%から80%の方々が感染するということを認識してほしい。しかし、必ず収束するので、過剰反応はしないでほしい」と呼びかけ。
4ヶ月か9ヶ月か、40%か80%かは大きな違い。それはsocial distancingをどれだけ実行できるか、そこで時間稼ぎをする間に、医療が間に合うかどうかにかかっている。
その医療現場では既にマスクやスクラブ、人工呼吸器などが足りない。既に使い捨てマスクを再利用するところも出ている。黒い特大ゴミ袋に穴を開けて着用しているところもあると聞いた。アップルやテスラなどがマスクの寄付を決めるなど救済の動きもあるが、それらがいつ届くかはわかっていない。
それに対しトランプ大統領は非常事態宣言を出し、自分が戦時下の大統領と呼び国防生産法を発動した。これによりより企業に必要な物資の製造を命ずることができる。しかし発動されたものの命令は避け、あくまで企業の自主的な態度に任せるとしている。
しかしクオモ州知事はそれでは不足と再三トランプ大統領に対し、企業への命令を懇願し続けた。でもただ連邦政府だのみにしていただけではない。その一方で独自に数十万個のマスクや手袋をかき集める事に成功したのだ。
また同時に確実に足りなくなる病院施設を増設するために、クオモ知事は市内にある巨大なジャビッツ・コンベンションセンターを病院に改造することを決定。これには連邦政府に夜資金から医療体制までの全面協力を取り付けた。また州内の病院に対しては収容能力を1.5倍にするよう命じた。プラス、アメリカ軍が所有する2つの病院船のうち1つが数週間のうちにニューヨーク港に到着するはずだ。まだ100%とは言えないが、医療崩壊は免れる希望が生まれてきた。
光るクオモ州知事のリーダーシップ
まだまだ感染者が激増すると予測される中まさに時間との戦いだが、この対策をリードしているのはトランプ大統領も連邦政府でもなく、間違いなくこのクオモ州知事だ。
前述した通りニューヨークは今、「お手本」とされた韓国の検査体制を超える検査数にたどり着いて、他の州に大きく水を開けている。これはクオモ州知事が連邦政府に対し、州内の民間ラボでの検査を許可するよう再三働きかけた結果だ。そしてクオモ氏はビジネスのシャットダウンはじめあらゆる決定に関して「自分が全て責任をとる」とはっきり表明している。
一方トランプ氏は3月11日にヨーロッパからの渡航禁止令を出し、続いて13日に非常事態宣言を出す直前まで「民主党とリベラルメディアが大げさに言っているだけで大したことはない、ウイルスはいずれなくなるだろう」と楽観的な姿勢を崩さなかった。そのために連邦レベルでの対策が遅れに遅れたことは否めないだろう。そしてこの状況に関しても「自分には責任はない」と言い続けている。
連邦政府の対策
ともあれこれまでに政府としては検査の拡充と、疾病有給休暇の許可の2つの対策を実現させている。
そして現在アメリカ政府は2兆ドル(220兆円)の大型景気刺激策(リーマンショック後を超える市場最大の規模)を上院で審議中だが、これがもめにもめている。
実は上院与党の共和党が提案した法案には 一人あたり1200ドル(13万円)の給付金が含まれている。これはトランプ氏が会見で宣言したもので、ニューヨークはもちろん全米で苦しい状況に追い込まれている市民にとっては、今すぐにでも欲しいありがたいお金だ。ところがこれはどう考えても「小さな政府」の共和党のプラットフォームに反するどころか、民主党の大統領候補に出馬していたアンドリュー・ヤングがプッシュしていた「ベーシック・インカム」に他ならないから、共和党議員としては複雑な心境である。
一方で共和党はその代わりと言ってはなんだが、この法案に大企業への巨額の貸付金を入れている。それも議会のオーバーサイトなしで、商務省が自由な裁量で選んだ企業に貸付できるという内容で、民主党はそれに対し「ホテル産業など大統領が救済したい業界に国民の税金が偏って使われる恐れがある」と反発、ニューヨーク時間正午まだ上院で審議が続いていて、その一方で株価は下がり続けている。
コロナウイルスは既に政治的な問題だということを痛感させられる。
今後はどうなる?
一方クオモ州知事は今日の会見で、経済と感染拡大阻止のバランスを取ることを考えなければならないと述べている。既にシャットダウンした経済をどう元に戻すかの指針も示している。例えば健康な若者から仕事に戻る、高齢者やリスクのある人を避難させて守るといった方法論も提示された。
また興味深いのは、これは昨日の会見だが、抗体あるかどうかを検査し、抗体ができた人(既に感染し、症状があってもなくても回復した人)から仕事に戻ってはどうかというアイデアだ。なるほどそれほど多くの人が感染するなら、理にかなった話ではある。タイムラインは見えずとも、このように常に先を見せていくのもリーダーとしては重要だと思う。
そして何より素晴らしいと思ったのは、州民には緊急時だからこそNYカーらしく人間味ある態度でいようと呼びかけたことだ。モノやカネだけでない、人の心をしっかりと支えるのもリーダーの役割だということを、久しぶりに思い出させてくれた。