06-15-20
(JFN/TOKYOFM 全国36局ネットのOn The Planetでレポートした内容に加筆再構成しています。)
3週間前に起こった白人警官による黒人男性ジョージ・フロイドの殺害。これを発端に始まったブラック・ライブス・マターの抗議運動が各地で続く中、その急伸ぶりが多くのアメリカ人を驚かせています。
LGBTQ運動と合体
ニューヨーク・ブルックリンでは昨日日曜日、黒人のトランスジェンダーの権利を守るためのデモに1万人以上が集まり、その過半数は白人だったと報道されています。
今月はLGBTQの文化を祝いその権利を守る、プライド・マンスという事で、毎年行われている集会と、人種差別デモが合体したものです。
実はトランスジェンダーの権利を巡る問題も沸騰しています。(特に有色人種のトランスジェンダーは歴史上最も厳しい差別を受けてきました。興味があればNetflixの「Pose」というドラマを見てください)トランプ政権は度々、オバマ時代のLGBTQの権利を剥奪する決定をしてきました。ところが今朝最高裁判所が「LGBTQの職場での権利も、有色人種やあらゆる性別の人と同様に公民権で保証される」と評決しました。しかもトランプ指名の保守判事ゴーサッチ氏も賛成票を入れたことが大きな話題になり、今後の運動の追い風となりそうです。
新たな黒人殺害事件
一方南部のジョージア州アトランタでは12日警官による黒人男性の新たな暴力事件が発生 しました。レイシャード・ブルックスさんは、ウェンディーズのドライブスルーで車を止めて眠っていたところ、警察に通報されました。出動した警官がブルックスさんを酔っ払い運転で逮捕しようとしたところもみ合いとなり、ブルックスさんは警官が持っていたスタンガンを奪って逃走しようとしたため、警官が後ろから発砲。ブルックスさんは亡くなりました。
殺傷力のないスタンガンしか持たない男性をしかも背中から撃ったということで、警官には殺人の疑いがかかっており、アトランタ警察署長は責任を取って辞任しました。また怒った住民の一人がこのウェンディーズに放火する事件も起こりました。
こうした新たな事件に加え、これまでに知られていなかった白人警官による黒人への暴力事件も次々に明るみに出ています。
同時に先週もお伝えした通り、警察の改革の動きが各地で始まっていますが、ニューヨーク州ではクオモ州知事が、過剰な実力行使や偏見を是正する措置を来年4月までに実施しない自治体の警察には、州の予算を停止すると発表しました。
ブラックライブスマター運動参加者の多くは白人・Z世代
こうした中で、今回の抗議運動の全貌もはっきりと浮かび上がってきています。
まずこれはブラック・ライブス・マター、黒人の命が大切だという運動ですが、黒人だけの問題ではなくなってきている。冒頭に紹介したデモでも白人が過半数とお伝えしましたが、全米どこでも同様です。白人の若者たちを中心に、黒人を取り巻くあまりにもひどい制度的人種差別をようやく認識するようになり、それが自分たちが原因、自分事と考えるようになった。
そのティッピングポイントになったのはもちろんジョージ・フロイドの事件。
加えてコロナの自宅待機で精神的にも経済的にも厳しい状況におかれた彼らが、強いエンパシー(共感)を持ったこと。
そして、セレブリティなども含めてこれまで気づかなかった白人の特権について自覚するようになってきていることも見逃せない。だから彼らは白人のally(アライ=協力者)としてサポートしているのです。
もう一つ大きいには、ブラック・ライブス・マター運動自体が非常に優れたものだということです。この運動は2013年に起こった黒人少年の殺害事件を発端に、警察の改革を主眼に始まったもの。全米に30以上の支部を持ち、他の人権団体などとゆるやかに繋がりながら粘り強く黒人の人権擁護運動を続けてきました。
特にリーダーというものを置かず、目標と方法論のみを共有しそれぞれの支部が独自に活動しているが、ソーシャルメディアを通じて数千人、数万人を動員することが可能。デモでは水やマスクなども提供されとても統制が取れています。
そしてもし彼らに反対する人々が攻撃しようとしても、リーダーもいないし住所もない。もちろん当局が取り締まることができないというのも、ネットを中心に動いている活動の強みです。
この辺り詳し知りたい方は、プレジデントオンラインに書いた私の記事をぜひ読んでください。
こうした警察の改革を主眼においた全米の抗議行動は、LGBTQ運動なども合体し、多くのセレブリティや大企業も巻き込んで、ものすごいスピードで前に進んでいます。一度には書ききれないほどの動きです。また続報をお伝えします。
アメリカのコロナ感染再び増加
さて、アメリカのもう1つの大きなニュース、このところしばらくレポートできなかったのでここに追記して起きます。
アメリカではコロナウイルス感染の新たな拡大が大きな問題となっています。
一時は上昇カーブが平坦になっていたアメリカの半分近い州で感染カーブが再び上昇に転じています。これはデモの影響というよりも、いち早くロックダウン解除した州を中心に起こっています。フロリダ州では土日の二日連続で、これまでで最高の1日2000人の感染者が出ました。場所によっては入院患者が激増し、新たな医療崩壊の懸念も出てきていると伝えられています。このため新たなロックダウンを検討する州も出います。
またトランプ大統領は今週末、感染が拡大しているケンタッキー州でマスクなし、ソーシャルディスタンシングなしで2万人近くを集める大集会を予定しています。参加者に対しては「コロナに感染しても訴えることはできない」という断り書きがあり、その結果が懸念されています。
一方ニューヨーク市では順調に感染カーブがさがっていますが、建設業など一部を除いてまだロックダウン、自宅待機が続いています。オフィスなどがオープンできるのはロックダウン解除のフェーズ2が始まる来週月曜日になる見込みです。
しかし週末にはテイクアウトのバーの前にマスクなしでたむろする人々が溢れ、2万5千件もの苦情が寄せられたとのことで、クオモ州知事は、これが続くなら厳しい措置を検討すると警告しています。