092120
9:30pm updated
(アメリカメディアの報道を元に、JFN/TOKYOFM 全国36局ネットのOn The Planetでレポートした内容に加筆再構成しています。)
大統領選まであと42日。各地では期日前投票、郵便投票も始まると同時に混迷が深まっています。
フロリダを除く激戦州を含め、バイデン氏ほぼ優勢と伝えられつつも、激戦州では小さな変化で結果がひっくり返る可能性があり、そこに郵便事情をめぐる投票妨害疑惑、ロシアなどの介入疑惑。そしてコロナ感染も再び上昇傾向、今日明日で死者も20万人超える見込み。
ここにさらなる混乱が加わって多くのアメリカ人は呆然としていると言っていいかも。
先週金曜日、アメリカで最も尊敬され愛された最高裁判事、亡くなるまで現役で闘病中も仕事を続けたルース・ベイダー・ギンズバーグが、がんのために87歳でなくなりました
女性で2人目の最高裁判事。リベラルなフェミニストとして女性やマイノリティの権利を守る評決に貢献、柔らかい語り口でポイントをつく独特のキャラで、80歳を超えてからRBGとニックネームで呼ばれ若い世代から絶大な支持を受けるように。リベラル化する若者のアイコン、つまりアンチトランプのアイコンにもなったわけです。
その彼女の死は今、42日後に迫った大統領選はもちろん、アメリカの運命を変えようとしていると言っても大げさではありません。
というのはある意味最高裁判事は大統領よりも重要な人事だからです。
政府や議会が決めた法律などが憲法に則っているかを決める最後の砦が最高裁。最高裁判事は大統領が指名し、上院の投票で決定しますが、終身雇用だから1度決まったら何十年もの間国が進む方向に影響します。
その判事の後任を、トランプ大統領はすぐに指名し決定すると言い、それが今反対派との間で大論争になっています。
なぜそんなに早く指名したいのか?
実はトランプ氏が保守層からの根強い支持を受けている大きな理由の一つは、この判事の指名です。
これまで2人の保守判事を指名、現在9人の最高裁判事のうち5人、過半数を保守寄りに変えました(中道派がいなくなった)
そのため数少ないリベラルを代表するギンズバーグ判事の役割がさらに重要になったことは間違いありません。そして彼女はこれまで以上に鋭い反対意見を述べるようになり、ノトーリアスRBGと呼ばれるリベラルのアイコンになったのです。がんの治療をしながらも仕事を続けたのは、今引退はできないと言う責任感とリベラルのアメリカを守りたいと言う強い思いがあったからだと言われています。
話を戻すと、今回トランプ氏はリベラルのギンズバーグ判事亡き後、さらに保守判事を指名しようとしていますが、そうなると、ますます最高裁が右寄り、保守になります。
その結果、特にキリスト教保守の悲願である妊娠中絶の全面的な非合法化、より厳しい移民法などが実現する可能性が飛躍的に高まり、逆にリベラルの悲願である国民皆保険や、環境対策、銃規制などは実現から遠のく。つまり向こう数十年にわたるアメリカの方向性に影響することになります。
これほど重要な決定ですから、アメリカの過半数は性急な指名に反対しているという調査結果も出ています。国民の総意が反映されるべき最高裁判事の決定は、大統領選の後、勝った新しい大統領が行うべきという考え方です。
実は4年前のオバマ最後の年に、保守のスカリア判事が亡くなった後、オバマ氏が中道派のガーランド氏を指名しようとしたところ、共和党が同じ理由で大反対、大統領選の後に新しい大統領が指名すべきと押し切って、ガーランド氏は指名されず、トランプ就任後に保守派のゴーセッチ氏が指名されたという経緯があります。
同じ考え方でいけば今回も新大統領を待たなければいけないはずですが、今の保守派からしたらそんな事を言っている場合ではない、(選挙で負けるかもしれないし)トランプ氏がいる間、上院が共和党過半数の間にさっさと決めたいというのが本音。
そしてトランプ氏としては選挙の前に女性の保守判事を指名することで、保守支持層を固め弱い女性からの支持も得たいという思惑があります。
しかし、世間がRBGの死を悼んでいる真っ最中、お葬式もこれから。そしてコロナで多くの人が亡くなっている今、あまりに政治的な動きに走る共和党に対し反感が高まる可能性もあり、大統領選まで後42日、何がどちらに転がるか予断を許さない状況です。