JFN/TOKYOFM 全国36局ネットのOn The Planetでレポートした内容に加筆再構成しています。)
04-20-21
アカデミー賞は今度の日曜日(日本時間月曜朝)
今年は特に、ピープルオブカラー(マイノリティ)と女性、さらに社会正義をテーマにした作品が注目されている。
作品賞ノミネートの中には、すでにご紹介したMinari, Nomadland, そして史実を基にしたJudas and the Black Messiah, そしてThe Trial of Chicago 7にもその要素が。
俳優も今年はかなりマイノリティのノミネートが目立つ。
特に男優は主演も助演も5人のうち3人が白人以外
#metoo ムーブメントから 去年の#BLM そしてアジア系へのヘイトクライム問題まで、ジェンダーや人種問題が沸騰する中、#BLMが燃え上がるきっかけとなったジョージ・フロイド殺害裁判の判決が出され、裁判の間にも3人の黒人の若い男女が警官に撃たれて亡くなる事件が起きている。
というタイミングで発表されるアカデミー賞。一体どうなるのか?
で今日紹介したい有力候補は、Promising Young Woman プロミシング・ヤング・ウーマン
リベンジ・スリラー、つまり復讐劇だが、これが蓋を開けるとものすごくショッキングな作品で、ショック度では去年アカデミー賞取ったパラサイトにも迫るかも。
主役のキャシーはミレニアル世代の女性。医大を中退し両親と同居。カフェで働いている。
彼女は毎晩のようにクラブに通い、泥酔したふりをして男に介抱される。そして下心のある男に襲われそうになると素面に戻り、男が引くと「素面の女には興味がないのね」と言い捨てて去っていく。なぜそんなことをするかというと彼女にはトラウマがあって、医学生だった時、子供の頃からの親友が同級生に集団レイプされ、それが元で死んでしまう(おそらく自殺)
しかし大学も警察も全く捜査せず、泥酔した親友が悪いということにされ、もみ消されてしまう。
何もなかったように幸せに暮らす同級生に怒りを抑えきれず、キャシーが復讐を始めるのだが、最初は心理的に追い詰めていたのが、だんだんエスカレートして最後は衝撃的などんでん返しが待っている。
こうした大学での女子に対する性的な暴行やハラスメントはアメリカでは社会問題で、ほとんどの場合、男性学生(特に白人エリート)の言い分が通り、女性は泣き寝入りすることが多い。何年か前の最高裁判事の指名の公聴会を覚えている人も多いだろう。
重い内容だが主役のキャシーを演じるキャリー・マリガンがとても魅力的で、復讐劇さえなければロマコメのようにも見えるくらいラブリーなシーンも。
一方でキャシーの復讐ぶりがクレイジーすぎるのではないかという批判もあるが、それに対しキャリー・マリガンは「男は復讐映画ではヒーローなのに、女だとクレイジーと言われる」と、そこにも潜むミソジニーをバッサリ切るコメントをしている。
キャリー・マリガンは主演女優賞の最有力候補。
エメラルド・フェネルも女性として史上二人目の監督賞を取れるのか注目。
ちなみにノマドランドのクロエ・ザオ監督も含め今年は監督賞に女性が二人ノミネート。
プロミシング・ヤング・ウーマンは7月16日に日本公開が決定したばかり。